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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第5章 魔女の師

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5-41.ソフィの英雄

 ソフィに掴みかかるゾンビの後ろ襟を掴んで、持ち上げ投げ飛ばす。上半身だけで暴れる奴の体を、僕は剣でめった刺しにして、ズタズタにして動けなくした。

 それからソフィの方を見る。庭園を横切る煉瓦の道に、血が流れていた。


「ソフィ! しっかりして! もう敵はいない。助かるから!」


 抱き起こして呼びかける。出血が止まらない。


「ヨナ、様。ああ……良かった。あなたが、無事で」

「うん。無事だ。みんな無事だ。だから」

「好き、です、ヨナ様」

「………」

「あなたのこと、お慕い、申し上げています。ああ、良かった。言えた……」

「ソフィ? 駄目だ! 死ぬな! 君は」


 君は、なんだ? 僕はソフィの何なんだ。


 ソフィは僕のために命懸けで戦ったのに、僕はソフィの気持ちに応えることができない。

 こんな情けない僕に。


「いいんです。あなたはそれで」


 ソフィは最期に笑顔を見せた。



――――



 そう。あなたはそれでいいの。わたしはヨナと肩を並べられるほど強くはない。ヨナには他に、大切な人がいる。


 だから、わたしのことは気にしないで。忘れなければ、それで十分。


 ああ。幸せだなあ。


 こんな最期でも、わたしは幸せ。だって、あなたが名前を呼び続けてくれるから。



――――



「ソフィ!? ソフィ死ぬな! ソフィ!」


 最期に見せた笑顔から力が抜けて、無表情になっていく。開いたままの目からは生気を感じない。

 死んだ。ソフィは僕を助けるために死んだ。僕を慕ってくれているのに、なにも応えてやれなかった。


「ああ……なんで。なんでこんなことに」


 こんな時でも、周りの音はよく聞こえていた。戦闘は続いている。背後で足音が聞こえて、ゾンビが迫ってくるのがわかった。

 この事態を引き起こした何者かは、少女の死に静寂をもたらす暇さえ与えない。なんて無粋な。


 ソフィの遺体を置いて、剣を拾って振り向きざまに斬る。


 ゾンビは怯まず前に出たから、姿勢を低くしてこちらからも突進。みぞおちに肩を当てればバランスを崩したようだから、さらに押し込んで転倒させ、何度も踏みつけて動きを封じながら四肢を剣で斬りつける。

 足元に動きがあった。上半身しかないゾンビが僕の足首を掴んで顔を近づけている。そいつの口に踵が刺さるように蹴飛ばしてやれば、奴の顔は跳ね上がるように上を向いた。靴を抜けば折れた歯が何本も地面に散らばった。


「次は誰だ!? 片っ端から! ぶっ殺してやる! 二度目の死が安らかになると思うなよ!」


 視界に映るゾンビへ手当たり次第に斬りつける。剣が血にまみれて重くなるがお構いなしだ。ゾンビの頭に剣を叩きつけた。もう一度繰り返せば、僕の握力が負けて剣を取り落としてしまった。けれどゾンビも地面に倒れる。馬乗りになって腕を掴み。繰り返し地面に叩きつけた。

 噛みつこうとした敵の顔面を殴り返す。拾った剣の先を口の中にねじ込んで中をズタズタにしつつ噛めないようにして、両腕を捻じりあげて体重をかけて折った。


「次は……次は」


 動いているゾンビは見当たらなかった。ソフィが手入れしていた美しい庭園にはあちこちに死体が転がっている。花々は血で汚れ、無遠慮な死体に踏み荒らされて無残なことになっていた。

 ソフィの母親が、遺体にすがりついて泣いている。使用人たちが、ここは危険だからと声をかけて屋敷に戻そうとしている。ソフィの遺体も一緒に運ばれる。


 そこに声をかけることはできなかった。する暇もない。


「ヨナ様……」


 ティナが気遣わしげに声をかける。そうだよね。町ではまだ、あちこちでゾンビが暴れている。その対処をしなければ。


 僕は英雄だから。ソフィは、そんな僕を好きだったのだから。


「行こう。町を救う。それから、この事態を起こした犯人を見つけて、落とし前をつけさせる」


 ティナとキアを引き連れて、門から出る。他のゾンビはどこにいる?



――――



 アンリの放った矢がゾンビに刺さる。けれど胸や頭に刺さってもあんまり意味はない。手足に刺して動きを止めないと、ゾンビは永遠に暴れ続ける。

 弓の腕はかなり上がったと自信があるけれど、細い的に正確に当てるのはまだまだだな。


 でも、アンリーシャみたいな英雄になるために、頑張らないと。


「もふもふ! やっちゃえー!」


 だから馬に命令。ゾンビの一体を蹴飛ばして地面に叩きつけた。体中の骨が折れたかな。これなら動けなくなるはず。


 町はゾンビだらけ。屋敷から町の軍本部までさほど距離はないのに、何体もゾンビと遭遇して、もふもふに蹴られている。

 この調子じゃ、町全体に百体以上のゾンビがいるに違いない。


 厳重に警備が固められている本部の門の前にもゾンビが群がっていた。門は固く閉められていて、中にいる兵士は動けないでいるらしい。

 よし。


「もふもふ突撃ー! みんな蹴飛ばしちゃって!」


 ヒンと短く返事をしたもふもふが、前足でゾンビの一体を蹴る。馬の巨体と門の鉄柵で挟まれたゾンビの骨が折れる音がした。


 他のゾンビもこっちに気づいて攻撃目標を変更したようだ。


 一旦もふもふを退避させて、再度ゾンビに突進させて群れの中で暴れさせる。倒れたゾンビに上から矢を射掛ければ、細い手足に弓を当てるのも楽だ。

 サイラスとその私兵たちも、なんとかゾンビたちにダメージを与えている。

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