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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第5章 魔女の師

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5-40.ソフィの勇気

 ゾーラの方を見ると、彼女もゾンビと対峙していた。目の前の敵の口を闇で塞ぎ、足も蔓で止めているけれど無力化する術がないから、誰かの援護を待っているようだった。

 すぐに向かって、ゾンビの体を切り刻む。


「ありがとう。でもきりが無いわね。この屋敷から出る暇もないくらいにゾンビが来るなんて」

「いつかは止まるはずだよ」

「町中の人間がゾンビになってるとしたら、どうする?」

「それは……」


 新手のゾンビが来た。町の兵士の格好をして、剣を振り回していた。ゾーラがすかさず地面から蔓を伸ばして腕に巻き付いた。僕が駆け寄って腕を切り落とした上で、ほかも落として無力化する。倒れた胴体がウネウネと動き続けるのから目を逸した。


「今のは、兵士が噛みつかれてゾンビになったってこと?」

「でしょうね。対処に当たった兵士が混乱の中、負けた」

「武装した人がゾンビになるのは危険だな……」

「そうね。でも行かないと! 師匠のところに!」

「あ! 待って!」


 ゾンビが敷地内に入っていくのが一旦止まったと見るや、ゾーラはすぐに駆けていった。邪魔なゾンビを、闇の球体で殴り倒していた。

 あの様子なら、やられることはなさそうだ。けれどこの状況で孤立するのはまずい。すぐに追いかけたいのだけど。


「また来たか!」


 両手を広げて突進してくるゾンビ。考えなしの突撃に向けて棒を振れば、ゾンビの体が縦に切り裂かれた。が、剣が鋭すぎてゾンビの勢い自体は全く削がれていない。

 左右半分になった死体が勢いのまま僕に激突。


「うわっ!?」


 巻き込まれて倒れた上に、血を浴びてしまった。気持ち悪い。それに棒も手放してしまった。

 すぐに立ち上がろうとしたところ、腕を何かに掴まれた。


 上半身しかないゾンビだった。


「こいつっ!」


 すぐにそいつの顔を蹴って離そうとした。が、さらに後ろから足を掴まれて僕は再度転倒。そっちを見るとやはり上半身だけのゾンビで、上等な格好をしていた。


 スレンディルの当主だ。普段からいいものを食べてるのか体つきが立派で力も強い。それが両腕で掴みかかって来たのをなんとか押し留める。けれど背後から、さっき蹴飛ばしたゾンビが復活して肩を掴んできた。振り返ると奴は大口を開けて噛みつこうとしていて。


「ヨナ様!」


 こっちに駆けてくる者がいた。

 ソフィだった。


 彼女は噛みつこうとしているゾンビの上にまたがり、首を包丁でグサグサと刺した。女の子の腕力では深くは刺せなかったようだけれど、必死でやっていたのもあって、少なくともゾンビの顔を俯かせ、噛みつきを回避はできた。


 が、ゾンビはそれで死ぬことはない。背中にいる邪魔な子供を排除すべく、奴は地面を両腕で押して、半分しかなくて軽い体をひっくり返す。


「きゃっ!」


 投げ出されるソフィ。


 小さな体が地面に当たって、ゴンと嫌な音が響いた。


 ゾンビはさらにソフィに襲いかかろうとしていた。


 すぐに助けに行きたいけれど、スレンディル当主が相変わらず僕に襲いかかっている。周りの兵士たちは自分の戦いに必死だし、ティナとキアも、体格のいいゾンビと対峙していてこちらに構えない。

 アンリかゾーラがいれば、まだ余裕はあったろうに。


 文句を言ってる暇はない。ゾンビ化しても腕力の強いスレンディルに向けて腰の剣を抜き、腕に斬りつける。


 奴の右腕の肘あたりで、半分くらいまで剣が入った。立ち上がって体重をかけて、剣を押し込んで切断。先端のなくなった腕を振り回す不気味なゾンビの体を蹴り上げながら首をはねた。


「ソフィ! どこ!?」

「ヨナ、様……」


 弱々しい声が聞こえた。咄嗟に振り返って彼女の方へ行く。



――――



 町長である父は、町のために果敢に屋敷の外へ出た。旅人であるヨナたちも、ゾンビを相手に必死で戦っている。

 それをソフィは見るしかできない。自分の無力さが嫌で仕方がなかった。


 ヨナのことが好きだ。それはジェイザック像に似ているからというのもあるし、親からそう望まれているからでもある。けれどソフィ個人として、ヨナのことが好きになった。


 貴族たちとは明らかに違う人間。お金を持っていない庶民。けれど、どこか気品を感じさせる振る舞いをしていた。


 ソフィにとって、彼はジェイザックそのものだった。町の英雄。みんなの憧れ。

 彼についていけば、もっと広い世界が見られる。そう考えると心が踊った。貴族の暮らしなんか捨てて、彼について行きたかった。


 もちろんそれは夢物語。永遠にヨナと一緒にはいられない。


 でも夢は見たかった。彼に好きだって告白して、一緒に行きたい。そのために家と故郷を捨てるのに、なんの躊躇いも感じなかった。

 だって、伝説の中のシルフィーネだってそうだったもの。


 そのために鍛えることにした。戦士は戦いも躊躇わない。

 ヨナも家族たちも望まないとしても、やらないと。


 まさにヨナがゾンビに襲われてピンチになっているのを見て、ソフィは思わず飛び出した。考えるよりも早く体が動いていた。


 上半身しかないゾンビの首を何度も包丁で刺す。

 ヨナは立て直せたようだ。けど、代償は払わないといけなかった。


 ゾンビがソフィの体を跳ね飛ばした。地面に投げ出されたソフィは、頭をしたたかに打った。


 まずい。意識が朦朧とする。頭に熱さを感じるのは、もしかして血が流れているから?


 ゾンビはまだ、こっちを敵と認識していた。腕の力だけで這い寄って、体に爪を立てながら掴みかかる。


 痛い。助けて。誰か。戦うのってこんなに怖いの?


 なんでこうなったの? わかっている。全部、自分のせいだって。身の程知らずの夢を持って、考えなしに動いたからだ。


 ああ。ごめんなさい。ヨナ、様。

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