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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第5章 魔女の師

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5-39.大量のゾンビ

 僕も装備を整えて部屋から出る。屋敷の中は混乱している様子で、家族や使用人たちが総出で対策をしていた。

 窓や扉に板を張ってゾンビの侵入を防ぐとか、武器や防具になりそうなものをかき集めるとか。


 不確実な情報だけれど、ゾンビに噛まれた者もまた、ゾンビになるらしい。恐ろしい話だな。みんな恐怖に震えている様子で、町長であるサイラスは僕の姿を見て駆け寄ってきた。


「ヨナ様! お願いします! どうかゾンビたちを残らず殺してください!」

「わかりました。けれど町全体が危機に陥っていると聞きます。あの門を突破したら、サイラスさんは町の兵士をまとめて反撃に出てください」


 僕にだけ任せてなんとかなる状況じゃない。為政者が率先して動かないと。


「は、はい……動かせる手勢を率いて軍の本部まで行きます」


 明らかに腰が引けている。屋敷に引きこもりたくて仕方がないという様子。

 それでも嫌とは言わないあたり、覚悟は出来ているか。


「ヨナ様! わたしも戦います!」


 ソフィが近づいてきた。


 声も、包丁をぎゅっと握った手も震えていた。


「ま、町の危機です! わたしも何かしないと!」


 表情は真剣だ。でも、覚悟だけで活躍できる状況じゃない。


「ソフィ。君は屋敷の中にいて。手伝うにしても戦いは駄目だ。戸締まりをしっかりして、屋敷の中でも防御を整えて、家族がゾンビに襲われないようにする。それが君の役目だ」

「でもっ!」

「大丈夫、ゾンビは僕がなんとかするから。ここにいて」


 僕じゃ言葉を尽くしてもソフィを納得させられない。その時間もない。


 強引に話を切り上げて屋敷の正面玄関へ向かう。ティナとゾーラ、そしてサイラスと数人の男がついてきた。彼らも私兵か。


「我々は馬小屋に行きます。門を突破したら、軍本部まで駆け抜けます」

「わかりました。僕たちはどうすれば? 馬の速さにはついていけません」

「可能な限り、兵士たちとの合流に努めてください」

「あたしは師匠の所に向かうわよ」


 ゾーラの方針は一貫してる。


 正門では男たちが、槍でゾンビたちを攻撃していた。あまり積極的な攻撃とはいえない。

 アンリももふもふの上から矢を射ている。ゾンビの関節部分を狙っているけれど、鉄柵が邪魔なのもあって当てにくいようだ。


「ヨナ! 倉庫から持ってきた! 使え!」

「ありがとう!」


 何かの道具の金具部分を切り落として単なる木の棒にしたものを、キアが放って寄越す。それを拾って聖剣にして、ゾンビに対峙する。

 この門の隙間を狙ってゾンビの四肢を突いて切り落としていくとか、そんなちまちました攻撃をする暇はない。


「門を開けてください」

「え?」

「開けてください。殺到したゾンビを一掃します。その後は馬で蹴散らしてください」


 馬に乗ってやってきたサイラスに言う。彼もさすがに戸惑ったようだけれど、時間をかけられないのは理解していた。


 部下に指示して門の錠を外させる。すぐに退避した部下を追いかけるように、ゾンビたちが敷地内に殺到した。

 それを棒で横に薙ぐ。ほとんどのゾンビの上半身と下半身が生き別れになった。


「行って! アンリはサイラスたちについていって! みんなは討ち漏らしたのを片付けてから門を出て! 誰か門を閉じて中の安全を確保してください!」


 矢継ぎ早に指示を出す。サイラスが乗った馬が駆けていく。ゾンビが何体か馬に蹴られて倒れていく。アンリも含めて、彼らは無事に屋敷から出られた。


 けれどゾンビたちはまだ多い。上半身だけになってもなお動き続けるゾンビもいる。こちらの騒ぎに気づいて、新手のゾンビも何体か駆けつけてきた。


 五体満足なゾンビが襲ってきたが、そいつの足に闇の蔓が絡まって歩みが止まった。すかさず踏み込んでゾンビの肩から反対側の脇腹にかけて切り裂く。

 頭部と片方の肩から先が地面に落ちて無くなったゾンビは、頭を失った姿のまま片腕を振り回してきた。落ちた頭と片腕は動かない。


 こいつの紙は胴体に貼られているのかな。けれど噛みつかれただけでゾンビ化するって話も聞いた。どんな理屈はわからない。


 さすがに動かなくなった頭部で噛みつくことは無理だろうけれど、他のゾンビの中には生者に積極的に噛みつこうとするのもいた。みんなわかっているから、注意しているようだ。

 けれど敵の数が多い。


「おいヨナ! これどうするんだ! ちょっとヤバくないか!?」

「何でもヨナ様に頼ろうとしないでください! 自分でなんとかしてください!」

「わかった! キアそっち行くから押さえておいて!」

「さすがですヨナ様動きが早いです!」

「なあ! お前は一回痛い目見るべきだと思うんだよ!」

「見ません! わたしはヨナ様の近衛兵なので! うわー!? こいつ強い!? ヨナ様助けてください!」

「おい近衛兵!」


 身軽さが武器のキアが噛み付いてくるゾンビに襲われて、手を握って押し合いをして拮抗状態になっていて助けを求めた。ティナと言い合いしてる余裕はあっても、力比べには気を抜けない様子。

 すぐに向かってゾンビの首を落としてから、両手も切断してキアを救出。すると今度はティナがピンチになっていた。


 ゾンビが襲ってくるのを、その口に剣をねじ込んで押し止めていた。そっちも助けにいく。


 もちろんキアも一緒にだ。ゾンビの横っ腹を蹴飛ばして、とりあえずティナを解放した。


「あ、ありがとうございますキアさん!」

「ったく! 気をつけろ!」

「やっぱりキアさんは頼りになりますねー。ヨナ様ほどではないですけれど」

「喧嘩売ってんのか……」

「さあ! ふたりでヨナ様の活躍を手伝いますよ! あのゾンビを倒しましょう! わたしが引きつけますので、キアさんが手足を切ってください! 完全に切断する必要はなくて、動けなくすればいいだけですから!」

「ああもう! わかったよ! それが効率いいもんな!」


 さっきのゾンビの無力化は僕に任せながら、ふたりは別のゾンビの対処に向かう。こうして協力が出来ているのだから、仲はいいんだろうな。

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