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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第5章 魔女の師

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5-36.ヴァニアの野望

 倉庫の中身は、使い道のわからない道具と、一冊の本。開けるだけで呪われるなんてことはなくて、大人たちは過度に心配してただけだとわかった。ヴァニアは自分が正しいと確信を深めた。


 本は古い言語で書かれていて、それを解読するのに時間はかかった。けれど基礎的な教育は受けていた身。教書が欲しければ手に入れられる環境でもある。部分的にだけど読むことができるようになった。


 書かれていたのは、死者を動かし使役する魔術。術式を組み込んだ紙に魔力を込めて、死体を意のままに動かすことが出来る。


 これは素晴らしい。紙を作るのに手間はかからないし、死者を働かせることができれば町の生者たちが担う労働はかなり減らせる。お金を楽に稼げる。


 この禁術で人生を歩むことにしたヴァニアは、手下にした男と協力してゾンビを作ってみた。


 うまくはいかなかった。貼り付けた途端に死体は覚醒したけれど、言うことを聞いてくれなくて見境なしに暴れるだけ。これでは労働力として使えない。

 出来た改良はといえば、紙を貼り付けてから目覚めるまでに時間差を作って、貼った直後にこちらを襲わないようにする程度。実用化には程遠い。


 術式がまずかったのだろう。本には、用途によって紋様の中身は変えるべしと書かれていた。下手だとうまく動かせないらしい。実践あるべしとゾンビ作りを繰り返した。


 力仕事は手下の男に任せればいい。一家の家に忍び込んで全員を殺すのも簡単だ。アカナから眠れる薬を処方された人は、夜は簡単には起きない。ぐっすり寝てるところを首を絞めて殺せばいいだけ。

 夜中に家の外にいることもヴァニアには簡単だった。アカナの所にいると言えば家族は納得するのだから。


 ゾンビ事件を軍が問題視すると、兵士はアカナに紋様の解析をお願いした。アカナには異能について言わないようお願いしたのを、忠実に守ってくれた。だから兵士はヴァニアを疑ってもいない。

 店にある魔法関係の書物を誰かに見られても、ゾンビの件があってから調べるのに集めたと言い訳ができるようになった。隠したいヴァニアを庇うためだ。


 アカナ自身も、ヴァニアがゾンビ事件に関わっているなんて思ってもいないだろう。


 ゾンビが悪だと世間が認識しても、ヴァニアには問題なかった。ゾンビを完璧に制御できるようになってから、事件を受けて自分で研究を重ねて平和利用の方法を見つけたとか発表すればいいだけ。

 町はわたしを褒め称える。富と名声が手に入る。そんな予感がした。


 唯一の想定外は、ジェイザックのそっくりさんが現れたこと。ヨナという冒険者は、ゾンビ事件を解決する英雄とし見なされ町の人から持て囃された。

 ヴァニア自身も、格好いいと思った。聖剣の力は凄い。彼自身の容姿も気に入った。


 彼を婿として手に入れられれば、それはそれで名声を手に入れられると思った。ゾンビの研究も進まないし、こっちに切り替えるべきかとも考えた。だからお茶会で守ってもらって親密さを確かめようとしたけど、うまく行かなかった。

 せっかく、父の部屋に忍び込んで蝋封用の押印を使ったのに。


 けれどゾンビの件でヨナを町から出られないようにした上で、なんとか彼を手に入れたかった。だからさっきも、女の子の死体をゾンビにして町に解き放った。

 うまく行きそうにないゾンビの研究よりも、ヨナと結婚する方がまだ簡単そうだ。それに愉快でもある。


 ソフィから好きな男の子を奪うのって、最高にいい気分だろうな。


 あの子は嫌い。気が弱いだけなのに、優しい子なんて周りに思われていて。しかも使用人がやるような仕事をやってるなんて。庭いじり? そんなの金持ちの娘がする仕事ではない。土に汚れて虫を見る仕事なんて、嫌すぎる。


 わたしたちは、使用人が作った結果だけを楽しむ立場なのだから。あの子は何もわかっていない。

 だから絶対に、ヨナを手に入れて見せる。誰もが羨む立場になってみせる。


 ヨナは庶民だから、ヴァニアのために必死に働いてくれるだろう。存在だけでお金を生むだろうし、望む人生をもたらしてくれる。

 そのために、次は何をするべきかな。


 考えながら、アカナの店舗兼家まで向かった。手伝わせている男は、後で薬を送ると言って帰らせた。彼の家にはもうひとつ死体が隠してある。昼間暴れさせた男の妻だ。


 夜も明けようとしている。この時間に実家に戻れば、夜に外を出歩くなと家族がうるさいから、こっちに行くしかない。


 ゾンビをけしかけてヨナを活躍させたから、町はまだまだヨナを離そうとはしないだろう。

 けど問題はある。ヨナは町を出ようとしているし、アカナがその手伝いをしている。本物の聖剣探しのために地図を作ってるんだっけ。前の弟子の女と一緒に。


 ヨナには余計な女が四人もくっついている。ヴァニアが嫁の座を手に入れるには邪魔な奴ら。なんとか排除しないといけないけど、絆は強いようだから簡単ではなさそうだ。


 アカナによる地図作りも止めないと。ヨナが出ていくきっかけは全て排除しないと。


「おはようございまーす」


 持たされている合鍵を使って店舗の入り口から入る。さすがにアカナも寝ているだろうから、起こさないよう静かに動く。

 自分も寝させてもらおう。起きたらアカナは、ゾーラと一緒に地図作りの続きをしていることだろう。その進行具合を確認して、どうにか邪魔する手立てを考えよう。それからヨナの心を射止める方法も考えて。


 ああ。忙しいなあ。


「おはよう、ヴァニア」

「ひっ!?」


 アカナは起きていた。店の居住スペースで、座って本を読んでいた。妙に早起きだけれど、向こうも同じことを考えていたようだ。

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