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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第5章 魔女の師

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5-17.現場検証

 さっきまで生き生きと話していたのが嘘みたいだ。


「わたしにそんな力はないし、あなたは町を離れられない」

「どうして離れられないの?」

「ゾンビはこれからも出続ける。あなたはそれを放って逃げ出せるほど冷酷じゃない。それにゾンビが出る限り、町の人はあなたを放っておかない」

「僕が勝手に逃げないように監視をつけるってことか。町全部で見張る」

「そういうことよ」

「君の家も? ヴァニアの意思は別として、貴族である君の父は僕との結婚を望んでるし、そうなるように僕を見張る?」

「知らない。お父様の考えてることなんか、興味ない」

「けど事実として、君は貴族の娘だ。興味が無くても関係が無いとは言い張れないよ」

「でも本当に知らないのよ。最近お父様と話もしてないし」

「そっか。何も知らないんだね」

「なによ。仕方ないでしょ?」

「じゃあ、ゾンビ事件のことも何も知らない? さっき、これからも出続けるって言ってたけど。何かわかってることがあるの?」

「ああそれは」


 知らないと言わせられ続けて、だんだん不機嫌な顔になるヴァニア。ゾンビの話題になった途端に笑顔になって何かを言いかけて。


「よく知らないわ。でも、なにか魔道具が関係してるらしいって聞いてる。これからも出てくるのは間違いないでしょ。何回も出てるのに、急に止まるなんてありえない」


 真顔になって、はぐらかすような答えを口にした。

 なにか隠しているな。


 それからヴァニアは笑顔を取り繕って。


「なーんてね! 冗談よ。全部。貴族たちがあなたを手に入れようだなんて、そんなこと考えてないわ。ちょっとからかっただけ。本気にしないでよ。すっごく深刻そうな顔で聞くんだもん。すっごく面白かった」


 そう言って全部無かったことにした。


「ヴァニア。いつまでお喋りしてるの。着いたよ」

「はーい」


 前を行くアカナに言われて、ヴァニアはそっちに駆けていった。

 残された僕らは顔を見合わせる。あの子の言ったことが全部冗談だなんて、誰も信じていなかった。



 ゾンビにされた一家の家は、既に兵士が入り込んでいた。


 家の扉は開けっ放しになっている。よく見れば鍵が壊されていた。中にも兵士がいて、犯人の痕跡がないか調べている。

 ゾンビは自然発生しない。何者かの手で紙を貼られて死者が復活する。この一家の場合は、その前に殺されるという手順を踏んでいる。


 犯人がいるはずだ。僕の目は自然とヴァニアに向いていた。彼女は何を知ってるんだろう。


 兵士たちはアカナをよく知っているらしく、敬礼と共に出迎えた。そして僕のことも。顔だけでこういう扱いを受けるの、慣れないなあ。あと、ゾンビを倒したっていうのもあるけど。こんなのは誰にでもできてしまうことだし。

 その倒された一家のゾンビもまた、ここに運ばれていた。


 紙は剥がされて、今となってはただの遺体。死者の顔は無表情で、死ぬ間際にどんな顔をしていたのか誰もわからない。


「少年が殺された。痛ましいわね」

「ええ。本当に。未来ある男の子なのに。犯人が許せないわ。ゾンビを作る魔道具に関しては、魔法の異能者のゾーラの方が詳しいわよね。紙を見ておやりよ」

「紙は、昨日町長の家で見ましたわ。あたしにもさっぱりわかりませんでした。禁術と呼ぶべきもので、情報が手に入らないので」

「禁術ねぇ。わかるわ。危ないものは知られちゃいけない。けどねえ。学者としては、そういうのを知った上で駄目なものって世間様に広めるのが、正しいやり方だと思うのよ」

「師匠のお考えは正しいです。けれど、本当に危険なものを悪用して大惨事になりかけた例はたしかにありますので」


 王都のど真ん中にドラゴンが現れるとかね。


「でもゾーラなりに、わかることはあるのでしょう?」

「まあ、それなりには。魔道具については専門じゃないですけれど」


 紙に描かれた複雑な紋様を見つめて、険しい顔をするゾーラ。師匠の指示となれば真剣になるのは理解できる。

 昨日見たのと同じ、点線の楕円形を基本とした紋様は、やっぱり素人が見たらなんのことかさっぱりわからない。


「こういうの、魔道具の専門家に聞くべきなんでしょうね」

「でも、この町の専門家は時計作りに忙しいって」

「中断させて少し話を聞くくらいならできるだろ?」

「聞いても、詳しくない禁術については知らないって言うしかないのでしょうね」

「ふうん。時計、ねー。聞いたわ。みんなが見れる時計を作るなんてね」


 僕たちの会話にヴァニアが入ってくる。


「立派よね。けど、もっと役に立つ魔道具を作るべきだと思うわ」

「例えば?」

「人々の仕事が楽になる道具とか」

「それはあるべきだね。どんな風なの?」

「わからないけど。わたし、魔道具に詳しくないし」


 それもそうか。


 ゾーラが紙を睨んでいる間に、アカナは遺体を見つめた。たしかにうちの客だと言って、それから遺体の首元に手をやった。


「首を絞めた跡があるわ。この痣だよ。多分これで死んだんだね。遺体全部にある」


 それが死因か。もちろん兵士たちも把握していたことだろう。しっかりと頷いた。

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