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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第5章 魔女の師

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5-14.アカナ

 アンリは目立つよね。本人が目立ちたがりだし、大きな馬に乗ってるのだから見た目もインパクトがある。そんな彼女が自分も英雄が復活した姿だと言い張れば真実だと思う人も出る。

 だから僕のこともジェイザックだと思われるし、今よりもさらに注目される。


 なんでこうなるんだ。ゾンビを作ってる奴は、目立つ僕を避けて離れたところで事件を起こしたがるんじゃなかったのか。なんで僕が注目されることをするんだ。


「あー。うあー。やだー。目立ちたくない。僕はただのヨナなんだ。ジェイザックじゃなくて……」

「ヨナ様。大丈夫ですよ。ゾーラさんの師匠に会って、さっさとこの町を出ましょう」

「そうね。できればゾンビ事件の真相も解決したいところだけれど」

「ゾーラさん。気持ちはわかりますが、こんな町はさっさと出ていくべきです」

「たしかにヨナくんが限界みたいだから、そうするべきね。けど、こんな町呼ばわりはよくないわ。いい町なのよ。変な事件が起こっているだけで」

「あら。あなたもこの町を気に入ってくれたの? 嬉しいわね、ゾーラ・アトキンス」


 見知らぬ声が聞こえた。


 威厳があるというか、年月を重ねて深みを増したって感じの声だった。つまり、それなりに年を召した声。

 見れば、老年の女がこちらに近づいていた。


 彼女はさっき、ゾーラを名字込みで呼びかけていたな。つまり。


「師匠!」


 ゾーラがいち早く反応して、彼女に近づいた。

 アカナという名前だったかな。


「お久しぶりです、師匠。お元気そうでなによりです」

「あなたもね。こんな所まで来て、どうしたのよ。随分と賑やかなお友達と一緒にいるみたいだけれど。それに……噂のジェイザックの生まれ変わりも一緒なんてね」

「ちょっと複雑な事情がありまして。どこかでお話しできませんか?」

「ええ。でもその前に用事を終わらせないと。さっきのゾンビの案件で、兵士に協力を求められたのさ」

「協力?」

「ゾンビになった一家は、あたしの知り合いなのさ。お客さんと言うべきかしらね」

「お客さん?」

「あたし、薬草屋やってんのよ」

「たしかに師匠は薬学にも詳しかったですが、商売をしているのですか?」


 ゾーラが首を傾げて不思議そうな顔をした。アカナはさらに畳み掛けて。


「そうよ。この町で結婚してね。そこから資金援助を受けて店を始めたの」

「師匠結婚なさったんですか!?」

「しかも名字も貰った」

「名字を!?」

「待って待って。ひとりで驚かないで。整理しよう。まずはお互いの自己紹介から」


 僕たちにとっては何も知らない相手が出てきて、知っているはずのゾーラも知らない情報が多すぎて混乱している。


 一旦仕切り直そう。


「初めまして。僕はヨナと言います。王都出身で、今はゾーラと旅をしています」


 僕から始めて、他のみんなも順番に自己紹介をする。僕の出自やティナが王都で兵士の訓練を受けていたことは、当然のように隠す。


 ゾーラの師匠だから信頼できるとは思うが、それでも彼女は学術院でそれなりの地位にいる人間だ。隠居の身とはいえ、今後王都に行く機会がないとは言い切れないし、王族と関わる可能性もあった。

 その心配が無さそうなら、僕の正体を明かしてもいいとは思っている。


 幸いにも、立場のある役人であったはずのアカナは、僕が王家の末っ子だとは気づかなかった。


 王都にいた頃に僕の家族は見たことがあるかもしれないけれど、その時は僕は小さかった。少なくとも五年は会ってないわけだから。

 気づかなくても無理はない。


 アカナは僕の素性を疑うことなく聞き入れて、自分の紹介に入った。


「初めまして。アカナ・スレンディルと言います。王都で学者をしていました。専門は歴史学。けれど、なんでも学んできた」


 スレンディル。それが、ゾーラも知らなかった今の彼女の名字。


「元は王都で薬草を売る家の娘、高名な学者に才能を見いだされて、この道に入ったわ」


 アカナはゾーラの師匠だけど、彼女にもまた師匠と呼べる人間がいたらしい。

 そしてここからが、この町に来た後のことだけれど。


「蓄えはちゃんとあったわ。定期的に研究の成果を王都に送るから、給金はちゃんと出る。けど、それ以外にも町の役に立ちたいから薬草屋を始めた。こういう形で町の人と関わって仲良くしていれば、研究もしやすいしね。昔から残る家には、当時の資料が残ってたりするもので、それを見せてもらえたり」


 なるほど。収入だけが狙いではないのか。


「開業資金は、スレンディルの家が出してくれた」

「スレンディルというのは?」

「この町の貴族よ。町長を長年補佐してきた立場。二番目に偉い貴族と言うべきかしら。学者として町のことを調べる立場だから、引っ越した時に挨拶をして仲良くなったの」


 王都の役人だから、地方の貴族と接触できる立場ではあるのか。貴族たちに挨拶周りをするのも、その後の研究を進めるのに必要なこと。


「それで師匠は、スレンディルの家の人と結婚した?」

「そう。既に隠居した前の当主と仲良くなって。地位を息子に譲った直後に奥さんを亡くして、寂しかったようだから」

「師匠と同じぐらいの歳の方なんですか?」

「ええ。少しだけ年上ね」

「では、お似合い……ということなのですね」

「ええ。この年になって結婚して、花嫁衣裳を着ることになるなんて思わなかった。けど幸せだった」

「師匠は前から、研究に生涯を捧げると言っていましたからね」

「それは今も変わらないわ。結婚をしたとしてもね。でも幸せよ」

「そのようですね」


 こうしてアカナは名字を得て、金持ちの後ろ盾で店も持てた。そして研究もやりやすくなる。


 憧れの町に行って思いもよらない変化はあったとしても、根幹は変わっていない。師匠の様子に、ゾーラは口元を緩ませているようだった。

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