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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第5章 魔女の師

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5-12.ゾンビ一家

 どちらかというと敵地にいると知ったアンリは、不機嫌そうな顔をした。


「アンリーシャの良さをわからないなんて、この町もまだまだね!」

「そうだなー」

「アンリーシャのこと、伝えなきゃいけないわね!」

「それは程々にね。町は今、ヨナくんが目立つことで助かっているんだから。他の英雄が出てきても邪魔なだけよ」

「むぅー。納得いかない」


 眉間に皺を寄せるアンリを、みんな微笑ましく見ている。


 歓声を上げる観衆の中にいても、みんないつも通りなのが頼もしかった。


 もちろん僕は役目を忘れず、人々に笑顔を見せて手を振っていた。こうやって安心を与えるのが仕事。こうも人でごった返していれば、警備どころではないけれど。


 大通りを行き、僕にそっくりな銅像の横を通って、町の主要な場所を回っていく。人々は僕についてきて、その数は増える一方だった。


 ルートの途中には墓地もあった。死体がたくさん埋まっている場所。そこを騎乗した僕は何事もなく通過する。人々が、ジェイザック様の威光によってゾンビが怯んで出てこなくなったと喜んでいた。

 そんなわけあるか。偶々(たまたま)だ。



 警護というより、セイホランであった祭りの像になった気分で馬を進めていく。やがて庶民的な家々が並ぶ住宅街に差しかかった。そんな場所なら人が多いのも納得で、道には多くの住民が出ているし、建物の窓から手を振る者もいる。

 あちこちに笑顔を振りまくために、僕も周囲の全方向を見ることになった。


 そして、ある一点に目が留まった。


 ゾンビらしき人間がいた。顔に血の気がなくて目が虚ろ。そして動きがぎこちない。


 世の中にはそういう人もいるだろうけれど、四人も並んで歩いていたら、それはもうゾンビの集団発生と見て間違いないと思う。


「アンリ、もふもふの上に来て! キアはあそこの家の屋根に登って! ゾンビがいる!」

「ええ! わかったわ!」

「おいおっさん! 肩借りるぜ!」


 僕が伸ばした手を握ってもふもふの上に引っ張りあげられるアンリと、群衆の中にいた男の体を踏み台にして近くの家の壁にしがみつくキア。ゾーラとティナも、兵士や住民たちに避難を呼びかけた。


「アンリ、あれはゾンビだよね?」

「昨日見たのとそっくりね! 間違いないわ! もふもふ、あっちに行って!」

「うわぁっ!?」


 手綱は僕が握ったままだけど、もふもふはアンリの指示を受けて急発進した。振り落とされないように慌ててしがみつく。

 馬が人語を理解していることに今更驚きはしないけれど、やっぱりもふもふの走りは強いな。


 群衆の頭上を軽々と飛び越えて、ゾンビの後ろに着地する。


 至近距離で見ても、ゾンビはゾンビだった。昨日の男と様子がよく似ている。見た目で死因はわからないけれど、死んでいるのは確からしい。目に生気がなく、口がだらしなく開いている。

 というか、既に近くの住民に襲いかかっている。背後から迫られて首を掴まれた市民を見て、別の誰かがゾンビだと叫び声を上げた。


 周囲はたちまち大混乱になった。


「落ち着いて! 兵隊さんの指示に従って避難してください! ゾンビはなんとかできますから!」


 ティナの声を聞きながら、僕はもふもふから飛び降りる。


 四体のゾンビは、元は家族だったのだろう。若い夫婦と兄弟だ。子供は僕よりも年下。元の人となりはわからないけれど、今は虚ろな目でこちらを見ている。

 夫婦のゾンビが、なおも市民に掴みかかっていた。


 ますはこれを引き剥がさないと。


「アンリ! キア!」

「わかってるわ! もふもふ!」


 馬が前足を上げて後ろ足だけで立つポーズをする。振り上げた前足が、ゾンビ妻の肩を叩いて、強制的に地面に伏せさせれる。

 キアも同時に動いていた。屋根の上から夫の方に飛びかかって、勢いに任せて自分より体格が上な男を地面に倒した。


 そのまま組み伏せ続けるのは、体格差のせいで無理がある。ゾンビ夫はすぐに、キアを掴んで投げ飛ばしながら起き上がろうとして。キアもわかっているから、無駄な抵抗はせずに退避する。


 夫の体に、地面から生えた蔓が生えて幾重にも巻き付いた。


「こいつひとりを拘束するので限界よ! 他のを早く無力化して!」


 杖を向けているゾーラが、かなりきつそうな様子で叫ぶ。


 ゾンビ夫はすぐに起き上がろうと体をバタつかせている。ゾーラの全力により、なんとか動きは封じられているけれど、蔦を引きちぎろうとする勢いだ。

 体がぶっ壊れたとしても、暴れるのをやめようとしない。脳が手加減をすることを完全に忘れているから、限界まで力を込めて暴れる。それがゾンビだ。


「なあ! これって体に紙を貼っているからゾンビになってるんだよな!? 剥がせばいいって思ったんだが、見当たらねえんだけど!?」

「服の下に貼ってるんでしょう! 脱がせて見つけてから剥がすしかない!」

「面倒だな手足を切り取った方が楽そうだ!」

「だね! 手が空いてたら僕を手伝って!」


 ゾーラはゾンビ夫を拘束していて、キアがそいつの肩や膝をナイフで傷つけて動けなくしようと試みている。

 アンリともふもふは妻の方を無力化させるのに忙しい。


 馬体で女ゾンビの体を何度も踏みつけつつ、上から矢を放っている。体中に矢が刺されば、いずれ動けなくなるだろう。


 その間、僕は残った二体のゾンビを相手しなきゃいけない。

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