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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第5章 魔女の師

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5-9.ゾーラの願い

 町の異能者とサイラスが市民のことをよく考えているって話は感動的だけど、話題が逸れてしまった。

 問題は、その時計屋さん以外にも町に異能者が潜伏して、便利な魔道具を作るでもなくゾンビを作っていること。そして市民は怯えている。


「ヨナさん。そして皆さん。お願いを聞いてもらえませんでさょうか」


 サイラスが真剣な顔で言う。


「町を巡回して警備をしてほしいんです。形だけで構いません。兵士たちがやっているのに混ざってください。あなたが町を見守っているという事実で、市民は安心するんです」


 市民が恐怖に呑まれるのを阻止したい。兵士たちが事件の真相を突き止めて犯人を捕縛して解決するまでの間、ジェイザックに似た少年が平和を守る。そうすることで町の秩序を保つ。


「報酬は出します。なのでどうか、引き受けてはくれないでしょうか」


 そう言われて、みんな顔を見合わせる。というか僕の方を見る。そして立ち上がって僕の周りに集まってヒソヒソと話をする。


「どうしよう」

「ヨナ様が現状に戸惑ってらっしゃることは、よくわかります。その、ジェイザックと同一視されることを好きではないことも承知しています。断ってもいいんじゃないでしょうか」

「だなー。というか、お飾りの英雄ができることなんて知れてる。広い町のどこでゾンビが出るかわからないし、向こうは目立つヨナを避けて別の場所でゾンビを作れる」


 ティナとキアは根拠を言いながら反対してくれた。


 実のところ、僕もあんまり乗り気じゃない。僕はジェイザックじゃないんだから。


「わたしはやるべきだと思うわ! ジェイザックみたいな仕事ができるって素敵じゃない! それに町の人たちの不安をなんとかするの、大事だと思うわ!」


 アンリは乗り気だ。わかってたけど。


それからみんな、ゾーラの方を見る。一番知恵が回るし、こういうのは彼女の意見を聞くべきだ。


「そうね。受けてもいいと思う。というか、あたしはヨナくんに受けてほしい」


 理屈ではなく、自分の気持ちを吐露した。


「キアの言うこともわかるわ。ヨナくんがやることで、事件が解決するかは怪しい。ヨナくんが目立つことをした上で、別の場所でゾンビが暴れられたら、英雄の信用はガタ落ちよ。ヨナくんだけじゃなくて、町のシンボルのジェイザックのイメージまで傷つくでしょう。でもやってほしいの」

「それはどうして?」

「師匠の町だからよ。あたしはこれから師匠と会う。その時に、恥ずかしくない人間でいたい。師匠の町を守るためにやれることはやる。そういう姿を見せたい」


 ゾーラの、純粋な欲望だった。尊敬する人間の前では格好つけたいとか、そんな小さな思い。


「わかっているわ。自分でも馬鹿馬鹿しいと思う。師匠があたしに期待しているのは学者としての姿。旅の中で出会った男の子に英雄ごっこをさせることじゃない。けど、やりたいのよ。だからお願い。ゾーラ・アトキンスが、町のために尽力してるって師匠見せたいの」

「……」

「ヨナくん?」

「ねえみんな。聞いた?」

「はい。ゾーラさんって名字あったんですね」

「小役人の家って言ってたっけ。役人ってみんな名字があるものなのか?」

「下級役人には無い人が多いよ。持ってる人もいるけど」

「持っている人と持ってない人の違いはなに?」

「昔あった名字は消えないからね。かつては偉かったけど没落したら、こういうこともある」

「へえー。名字があっても偉いとは限らないのね」

「でも、成功した庶民が名字を欲しがって、そういう下級の人と婚姻することはあるよ。名字はあるだけで財産って考え方もできる」

「ちょっと! その話はいいのよ別に」

「だって。こんなに一緒にいるのに、ゾーラさんの名前を知らなかったんですから」

「ごめんなさいってば。悪かったと思ってるわよ。実家は本当に小さな家で、昔は立場もあったらしいけど随分前に没落して、名字なんてあるだけだったのよ。使う機会なんかほとんどなくて。畏まった場でしか使わないし、自分でも普段意識しないから言ってこなかったの」

「そっか。わかった。からかってごめん」


 つまり今のお願いは、ゾーラにとっては畏まったものだったわけだ。


「やるよ。町の警備。大したことはできないかもしれないけど、英雄のそっくりさんとして望まれてるなら、やる」

「ありがとう、ヨナくん!」

「あー! 何やってるんですかゾーラさん! やめてください! 胸が! 邪悪な脂肪の塊がヨナ様に当たってムニってなってます! 良くないです! 教育に悪いです! てかムカつきます!」

「そうよ! ゾーラだけ羨ましいわ! わたしもやりたい!」

「おーい。みんな落ち着け。町長の前だぞ。ほら、ティナもアンリも離れろ。アトキンスも」

「あんたに苗字で呼ばれるの、変な気分ね。いつも通りでお願い」


 キアの言うとおり、サイラスたちが呆気にとられた顔でこっちを見ていた。

 変だよね。特に、英雄と同一視されている人がやることじゃない。


 気まずさも感じながら咳払いして、サイラスに言う。その仕事を受けると。


 一家は大いに喜んでくれた。


「ありがとうございますヨナさん。この町に滞在している間、この屋敷で寝泊まりしてください。不自由のない生活を約束いたします」

「ありがとうございます。お願いがあるのですが、学者のアカナさんと面会したいので手配をしてもらえますか?」

「ええ。もちろんです。明日にでも屋敷に呼びます」


 とりあえず、町に来た目的は果たせそうだ。頼まれごとは引き受けてしまったけれど、少なくとも師匠をこちらから探す手間は省けた。

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