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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第5章 魔女の師

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5-8.ゾンビ化の禁術

 サイラスは町長で家長の威厳もあって、僕を見ても落ち着いて話している。しかし妻子たちはなおも驚いていたり、信じられないといった様子で僕を見ていた。顔にこんなに注目されるなんて初めてだ。

 末っ子は最たるもので、僕に妙に熱っぽい視線を送っているようだった。顔が少し赤いし、ボーッとしているような気がする。


 あの末っ子の名前はたしか、ソフィだったかな。


「む……」


 アンリが、警戒すべき相手がいるみたいな顔でソフィを見つめている。喧嘩はしないようにね。


「ヨナさん。ここからは町のことを話すわけですが、聞いてもらえませんでしょうか」


 サイラスが真剣な顔を向けてきたため、僕もそちらに向き直った。これが本題なのだろうから。


「聞きましょう。お力になれるかは、わかりませんけれど」

「先程、あなたがたも見たゾンビですが、ここ最近何度も出てきているのです。死者が蘇った。あるいは普通の生活をしていた市民が殺されて、直後にゾンビになる」

「さっきの男は?」

「後者です。恋人と一緒に歩いているところを、何者かに後ろから刺されて絶命。直後に蘇って恋人に襲いかかったと、目撃情報があったとのことです」

「何者か、ですか」

「はい。正体は不明です」


 気味が悪いな。


 サイラスは話し続けた。


 最初は、大往生を遂げたお爺さんの遺体。葬式の朝に起きて、親族に襲いかかった。駆けつけた兵士に縄で捕縛されるまで暴れるのを続けた。

 二件目は墓から復活した遺体だ。若くして病気で亡くなった女が墓場からふらふらと出てきて、通りがかった市民に襲いかかった。

 三件目は、さっきの男と同じく直前まで生きていた者だ。混雑している市場で突然刺されて死んだかと思えば、蘇って暴れ出した。


 その他にも数件、似たような事例が起こっているとのことだ。


 奴らは人を見かけると見境なく襲う。それが唯一の行動方針。なぜそんなことをするのかは不明。

 いつか自分もゾンビにされて、醜い姿を人前に晒すのでは。大切な人を傷つけてしまうのでは。そう考えて市民たちは怯えているそうだ。


「ゾンビがなぜ出てくるのか、わかっているのですか? 聞いた限りでは、死者が全員ゾンビになるわけではないそうですけれど」

「はい。ゾンビ化した遺体にはすべて、紙が貼られていました」

「紙?」

「これです。遺体の肌に触れるように張れば作用するようで、生きた人間には何も効果がないとされています」


 遺体から剥がしたものだろう。木製の板に貼り付けられたそれを見せてくれた。


 手のひらに収まるほどの小さな紙に、点線で楕円が描かれていて、その中にさらに複雑な紋様がある。


 さらに。


「魔力が込められているわね」

「はい。町で雇っている魔法系の異能者も同じ意見でした。魔法の異能によってゾンビが作られたと」

「つまりこの紙自体が一種の魔道具なわけね。あるいは禁術と呼ぶべきかしら」


 魔道具にして禁術。たとえば魔物を封じ込めた書なんかはそう呼ばれることが多い。ゾーラが持っている魔物を引き寄せるガラス玉も、村のお婆さんに禁術の一種と例えたことがある。実際には違うのだけれど。


「死者を動かす術があるなんて、聞いたことがないけれど」

「そうなの?」

「ええ。とはいえ禁術はその名の通り、知ることさえ忌避されるもの。記録に残されにくいし、実物や方法を示した書物なんかは厳重に封印されているものよ。責任を持って預かった貴族が、その中身すら把握しないままに決して外に出さないようにしている」


 中身が明かされたら、興味を持った人間が持ち出してしまうかもしれないから。

 王都の城にも王家が管理している禁術庫があるけれど、やはり厳重に鍵がかけられていて中身を知ることすらできない。

 禁術に詳しい人間など稀だ。



「とにかく。この事件には異能者が関わっているのね」

「はい。ですが町で把握している異能者は、全員無関係です。彼らのいないところで事件が起こったこともあります」

「把握している、ね」

「異能者と判明した人間は、町で積極的に雇用しています。そのうち、魔力を物に込めて魔道具を作れる者はひとりだけ」

「その種類の異能者は本当に珍しいって聞くわね」

「ちゃんと平和的な目的で働いています」


 サイラスは部屋の一角を見た。立派な時計が掲げられていた。一日の中で、今がどれくらいの時刻なのかがわかる。


 魔法で動いて時を知ることができる時計は、魔道具の中でも特に人気があるものだ。高級品だから、ごく少数の貴族しか持つことはできない。

 王都にもそんなに数はない。城に数台ある他、王族や上級貴族が個人的に持っているらしい。


 それ以外だと、魔法を使わないバネ仕掛けの時計が学校や大きな教会といった公共施設に少数あるくらいだ。一日のうち数回、決まった時間に鐘を鳴らす機能しかないが、礼拝や終業時間を知ることができるというもの。

 それくらい貴重なもの。市民が目にして時間を知ることはない。


「彼には可能な限り時計を作ってもらおうと、働いてもらっています。ジェイザック様の像がある広場に大きな時計を作り、町の人みんなが時間を知れるようにしたい。そんな願いを持っています」

「そうですか」


 魔道具って作るのに時間がかかるそうだからな。時計っていうのは複雑な構造をしてそうだから、特に大変だろう。


「ゾーラさんゾーラさん。この前使ってたメモ用紙も、実は高級品だったりするんですか?」

「あれは安物よ。紙に闇が定着するように仕掛けがあるだけだから。学術院の異能者に頼んで、割とすぐに作ってもらえるわ」


 それでも異能者が必要か。

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