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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第5章 魔女の師

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5-7.アリンガム侯爵家

 腰につけている仮面に、自然に手が伸びる。


「ヨナ様。これ、逃げてもいいのでしょうか」


 そばに寄ってきたティナに尋ねられたけど、そんなことわからない。逃げたい気持ちはあるけれど、兵士に囲まれている。

 さすがにこの状況で、何も知らないと言い張って立ち去るのは無理だろう。


 他のみんなも集まって、僕を守るように囲む。兵士たちもこちらを見つめるばかりで、どうすればいいのかわからないって様子で。


「皆さん、お仕事ご苦労さまです」


 ふと、穏やかな声が聞こえた。全員がそちらに目をやる。


 馬に乗った中年男性がこちらに近づいてきた。彼はまっすぐにこちらを見つめている。


「英雄ジェイザック様によく似た少年がいると聞きました。当人はその評価に困惑しているとも。是非に会いたいと思いました。悪いようにはしませんから、私の屋敷に来てもらえませんか?」


 男が近づくのを、兵士たちは止めようとしない。むしろ頭を下げて敬意を示している。街の人たちも同様だ。


「失礼ですが、あなたは?」


 男が偉い人なのは理解できるけれど、かといって簡単に従うわけにはいかない。結局仮面を被ることにした僕は前に出て尋ねた。

 彼は気分を害した様子もなく答えてくれた。


「申し遅れました。わたしはサイラス・アリンガム侯爵。この町の町長を拝命しております」


 町で一番偉い人だった。


「どうしますかヨナ様」

「さすがに町の最高権力者とは、仲良くすべきだよね」

「そうですね……」


 見たところ悪人ではなさそうだ。


「わかりました。招待をお受けします。近くの宿屋に馬を預けているのですが、連れてきても?」

「ええ。もちろんです」


 馬なんかどうでもいいから早く来い、とは言わない程度の度量はあるか。いざとなれば逃走にも使える馬をつれてくることを許すのだから、善意で接してくれているのはわかる。

 善意だから信用していいとは、限らないのだけれど。


 町の人たちは最初から、何かの危機に見舞われている所に英雄ジェイザックが来た、みたいな言い方をしていた。その危機がさっきのゾンビと関係あることは間違いない。


 サイラス町長みたいな地位のある人まで、英雄が復活したと本気で信じているとは思えない。けれど僕はジェイザックにそっくりで、ゾンビを圧倒した。

 住民たちの不安を払拭するために、政治的な道具に使おうとする可能性は高い。彼は為政者で、善意を持って住民のために働くならば、その手段を取るべきだから。


 宿に預けていたもふもふは、サイラスの馬よりもふた周りは大きく、その雄姿に彼は目を丸くしていた。

 しかし同時に、英雄の騎乗する馬に相応しいと言った。動かしているのはアンリで僕は後ろに同乗させてもらってるだけなのは、見ないふりをしているのかな。


 町の中心部にある広場から少し行った所にある立派な屋敷に招かれた。

 内装は豪華だが、品のある雰囲気で整えていた。そして案の定というか、僕にそっくりなジェイザックの絵画が飾られていたり、やはり僕にそっくりな木像が棚に置かれていた。

 本当にどこにでもいるな、ジェイザック。


 夕食は取ったばかりなのだけど、軽い食事を出された。晩餐会みたいな感じで気軽に会話をしてほしいとか、そんな意図なんだろう。仮面をつけっぱなしの僕は食べられないのだけど。

 アリンガム一家の紹介もされた。サイラスの妻と子供たち。次期町長になる長男と、それを支える次男。兄弟仲良さそうだし、双方ともに誠実そうな印象で為政者としての器はあるようだった。


 それから、末っ子で僕と同じくらいの歳の娘。


 サイラスの子供たちの名前は一度じゃ覚えられなかったし、話の流れとかから聞いて改めて頭に残しておこう。


 僕たちも自己紹介をした。旅の学者であるゾーラと、それについて行ってる仲間たちだ。僕の素性を明かすわけにはいかないから、王都の一市民ということにした。

 ある日異能に目覚めて、それがどうも聖剣と性質が似ているらしい。だからこの街にいる高名な学者に話を聞くべくやってきたとか、そんな感じの作り話だ。


「そうですか。アカナさんを尋ねて来られたのですね」

「師匠のことをご存知なのですか?」

「はい。この町の誰もが知っていますよ。ジェイザック様のことを研究する学者先生なので」


 知らない名前が出てきたと思ったら、ゾーラの師匠で間違いないらしい。つまり、僕たちが尋ねた理由でもある。

 この街でも健在で、人々の信頼を集めている。それを知ったゾーラは、少し口元を緩ませた。


 それからサイラスは僕をまっすぐに見定めて。


「それではヨナさん。差し支えなければ、仮面を外してもらえませんでしょうか」

「……はい」


 アリンガム家の全員がこっちを見ている。部屋の隅で控えている使用人も興味津々という様子。居心地の悪さも少しだけ感じながら、おもむろに仮面を取る。

 ほう。僕の顔を見た人たちが息を呑んだ。


「いやはや。本当にそっくりです。生まれ変わりだと信じる者がいてもおかしくはない。確認ですが、本当にヨナさんはジェイザックとは無関係なんですね?」

「はい。聖剣のような異能に目覚めた以外には、無関係です」


 実は直系の子孫で、追放された王族なんだけど。そんなことは言えない。


「そうでしたか。しかし聖剣の異能まで持っているのならば、やはり奇妙な繋がりを感じさせます」

「そうですねー」


 自分でも乾いた笑いが出てくるな。

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