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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第5章 魔女の師

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202/205

5-3.ジェイザック像

 師匠の話をして上機嫌なゾーラは、ふたりの口出しにも微笑み返した。


「そうね。ヨナくんは優秀だから。本気で学問の道に入れば成果を上げて偉くなっちゃうかもね」

「そうしたら、王族と顔を合わせる機会がでちゃうね。それはまずい」

「逃亡生活も楽じゃないわね」

「師匠さんみたいに、王都から離れた場所に定住して研究するっていうのは?」

「それはありねー。師匠のは半分隠居みたいなものだから、ヨナくんにはまだ早いけれど」


 今から老いについて考えたくはないな。十二歳で逃亡生活中で、将来のことなんか何もわからない。老後のこともね。


 この日のゾーラはずっと機嫌が良さそうで、師匠に会えるのを本当に楽しみにしていた。



 翌日。相変わらず深い森を歩いていく。それでも町に近づくにつれて、人の往来が増えるのがわかった。森の中の道とはいえ、踏みしめる人が多いから太く平坦になっていく。町から村に移動する荷馬車とすれ違うこともあった。

 やがて町をぐるりと囲む柵と、出入りを管理する門番の姿が見えた。


 冒険者の登録証を見せて門をくぐる。ゾーラも冒険者として町に入った。学術院の職員証を見せても入れただろうけど、冒険者パーティーとして振る舞った方が怪しまれない。


 柵の中には広大な町が広がっていた。盆地の範囲をほぼそのまま柵で囲んでいるから、町の面積としては城塞都市とあまり変わらない。前に訪れたヴェッカルの街よりずっと広い。

 町の中には牧草地帯もあって家畜が育てられている。周囲の村でも牧畜は行われているが、ごく小規模だ。村の主な産業は、山の斜面で育てる農作物。


「建物の規模なんかは都市に及びませんが、住みやすそうな町ですね」

「うん。町にお金があるのがわかるよ」

「はい。全体的に綺麗です。土地にも余裕がありますし、住民も穏やかな雰囲気で、いいですね」


 観光客が多いということは、彼らが落すお金も多いということ。町の経済は潤っていて、それが住民に還元される。綺麗に舗装された道路や、充実した福祉制度という形で。

 争いや犯罪は、貧しさから生まれることが多い。少なくともこの町では、それが起こりにくい下地がある。


 祖先である父や兄があんなのだから、個人的にジェイザックを好きになりきれない所はある。けど英雄は偉大だ。こういう町を作る力が今もあるというのは、素直に称賛できる。


「とりあえず、町の中心部に行きましょう。そこで宿を取ってから、師匠を探しましょう」

「見つかるかしら」

「さあ。師匠の性格的に、派手な暮らしはしていないと思うわ。けど、周りから慕われてる学者先生って生活を続けてるなら、知ってる人も多いでしょう」


 師匠の人柄を知っているのはゾーラだけ。だから彼女の言うことに従う他ないな。


 町の中心部まで続く大通りは、大都市に引けをとらないほどの太さがあった。活気もそれなりに感じられた。

 広い町だから、中心部まで歩くのにそれなりに時間がかかる。そろそろ日が暮れるといったところで、中心に何かが建っているのに気づいた。


 黒いオブジェみたいなものだった。


「なんでしょうか、あれ」

「さあ。町の中心が広場になってるみたいね」

「珍しいですね」


 中心近くに、市民の憩いの場である広場を作る都市は珍しくない、王都もそうだった。


 しかし中心にあるのは、通常ならば城だ。この規模の町ならば町長の屋敷と、それを中心に建っている貴族の屋敷とか。あるいは役所とか。とにかく、行政の基幹となる施設だ。

 必ずそうしろと法で決まったわけではないから、いいのだけれど。普通の町ではないって印象を受けながら、広場についた。市民たちが思い思いの過ごし方をしている、平和な光景が広がっていた。


 オブジェがなんなのかもわかった。銅像だ。石造りの立派な台座に乗ったそれは、こちらに背を向けている。町の北側から入ってこの場所まで行くのが正規ルートだから、そちらを向いているのだろう。


 銅像の背丈は子供のものに見えた。つまり、僕と同じくらいの少年かな。

 なんとなく銅像の顔を見ようと、回り込むように歩いていると。


「あああっ!?」


 大声がした。こちらから見て正面にいたお婆さんが、大きな口を開けて僕たちを見ていた。それから銅像を見上げて、また僕を見て、ワナワナと震えだした。そして。


「ジェイザック様じゃー!」


 再び大声を上げた。

広場にいた住民たちの視線がそちらに集まる。お婆さんが震えながら僕を指差したものだから、注目も僕に向いていた。


 なんだ? 何が起こった?


「本当だ」

「そっくりだ」

「まさかジェイザック様が復活した?」

「そんなまさか」

「おい。すごいぞ。似てる!」

「ありがたやありがたや……」

「街を救うために蘇ったのか?」


 住民たちが口々に言いながら、僕に近づいていく。老若男女、みんな似たような反応だ。僕の顔を凝視している。

 いやいや、そんな。なんで。


 慌てて像の正面に回り込む。僕と同じくらいの歳の少年の像。剣を地面に突き立てて、まっすぐに立っている。勇ましそうな顔つきだ。


 剣は伝説で言われている聖剣エグダインではないな。もっと素朴な、安物っぽい剣だ。


 台座には、若き日のジェイザックだと示す文言が刻まれてあった。


 その顔は。


「似てますね。それもかなり」

「割と似てるなー」

「似てるわね」

「すごいわ! そっくりね!」


 僕以外の四人が同じ感想を持った。

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