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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第4章 次期城主

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4-27.ホイの家

 オルソンは目に見えて憔悴した顔になり、何も言えなくなった様子。そんな父の手をリーサはぎゅっと握り、代わりに尋ねた。


「ドラント様。わたしたちは今後、どうなるのですか?」

「わからない。父上も重鎮たちも対応を決めかねていることだ。オルソン殿の長年の献身を認めないわけではないが、問題が大きすぎる……」


 鎮痛な顔を見せるドラントだけど、なんか表情を作っている感じがするんだよな。そんな彼は、すぐに表情を引き締めた。作ってるから切り替えも早い。


「だがリーサ、心配しないでくれ。俺がなんとかする。この家との婚姻は断固として行うし、それには爵位が必要だ。それは変わらない。だから安心してくれ。君の家は絶対に幸せにする」


 ドラントはリーサの方へ行き、力強く語りかけた。本当は手でも握りたかったのだろうけれど、彼女の手は父親の方にあるから出来なかったって様子だ。

 あれ? こいつの婚約者ってリーサだっけ? なんか雰囲気でそう見えてきたけれど。


「あの。ドラント様。それは姉に仰ってください。お呼びしましょうか?」


 戸惑い気味のリーサの様子から、やっぱり姉の方が婚約者だと思い直す。そうだよね。


 ドラントがおかしいだけだ。義理の妹になる女に、こういう態度を取るのって普通なのかな。いや、ないよな。


 来客だというのに、ナーサが戻ってくる様子はなかった。部屋で寝てたりするのかな。ドラントの方も、ナーサの姿が無いことに言及してこなかった。

 どういうことなんだろう。


「いや、いい。ナーサにはいつでも会えるからね。それより、もうひとつ知らせなければいけないことがある。今度は良い知らせ……かもしれないね。君たちに家族が増える」

「え?」


 ドラントが発した言葉に、彼女は首を傾げた。彼は構わず玄関へ振り返り。


「連れてきてくれ」


 すると使用人らしき男と共に、四つん這いで歩く人間がやってきた。


「ホイだわ……」


 アンリの小さな声。


 あの村で出会った男。村人たちと共に兵士に連れて行かれた彼は、とりあえず城で調べられたらしい。

 しかし、ずっとそこに置いておくわけにはいかない。どこかに引き取らせるなら、血縁者の所がちょうどいい。


 ホイの父親はオルソンの兄だ。だからオルソンから見れば甥であり、ナーサとリーサから見れば従弟となる。

 ここに来るのが必然ではある。突然のことすぎて、オルソンたちは戸惑うばかりだろうけれど。


 そんなホイはアンリの方を一瞬だけ見て、気まずそうに目を逸した。代わりに僕を睨みつけている。

 いや、なんでだ。


 ドラントは、そんなホイには全く興味がない様子で。


「最低限の話はできるが、文字の読み書きもできなければ、立って歩くこともできない。すまないがここで教えてくれないか?」

「それは……その」

「オルソン殿。お前の甥だ。ここで世話をするのが一番だ。頼んだぞ。爵位の件は、悪いようにはしないから」

「それは……かしこまりました」


 オルソンに断ることはできない。憎い兄の息子であるホイを家族として迎え入れるなど望んではいないだろうが、城主の家との関係を悪化させるわけにはいかない。


「頼んだぞオルソン殿。では、俺はこれで失礼する」

「あの。本当に姉と顔を合わせなくて良いのですか?」

「ああ。また会いに行くと伝えてくれ」


 婚約者に本気で興味がない様子のドラントは、さっさと帰ってしまう。


 後には静寂が残った。床に両手をついたままのホイは、慣れない環境に怯えているのか、周りをキョロキョロと見ていて。


「こ、こんにちは。初めまして、でしょうか」


 一応は家族になる相手。生来の人の良さもあるのだろう。リーサがホイの近くに寄って、しゃがんで目線を合わせて話しかけた。


「わたしたち、家族になります。わたしはリーサ。よろしくお願いします」

「りー……さ……」


 ゆっくりと名前を繰り返したホイ。その目はリーサを凝視していて、動かなかった。居心地が悪くなったらしいリーサが立ち上がり席に戻ると、首で動きを追いかけて見つめ続ける。


「困ったな。立ち上がることもできない者をどう世話すればいいのか」

「赤ん坊だと捉えて、読み書きと日常の動作を教えればいいのよ。出来るようになれば、手間も掛からなくなる。会話自体は出来るんだから、赤ん坊より簡単よ。お姉さん、出産が近いんでしょ? 練習だと思ってさせてみたら?」

「姉はそういうの、やらないと思います。知らない男性の世話なんて。それに自分の子供も、城の人間にさせるって言ってました。自分は優雅な暮らしをするって」

「あー」


 そういうこと言いそうな人なのは、短い対面でよくわかった。


 じゃあホイの世話はどうすればいいのかだけれど。


「ゾーラさん。あなたは王都出身の学者なのですよね」


 オルソンが、随分と期待を込めた目を向けてきた。

 これってまさか。


「どうか、彼に読み書きを教えてくれませんでしょうか。学者先生ならば、こういうのは得意だと思いますし」


 案の定そんな提案をしてきた。もちろん、ゾーラは戸惑うばかりで。


「いやいや。得意じゃないわ。学者は学問をしているだけ。あたしの専攻は魔術歴史学で、言語学は専門外だし」

「お願いします。他に頼れる人がいないんです。祭りまでの数日だけでいいので。我々は祭りの準備で手一杯で、彼に構う暇がないのです。もちろんお礼はします」

「うー……」


 困った様子で僕たちに目を向けるゾーラ。こればかりは、ゾーラの判断に任せるしかないけれど。


「やってみてもいいと思うわ。他にやることはないのよね?」


 アンリがホイに同情的な視線を送りながら言う。ホイからの好意は受け入れられないとしても、アンリは根からの善人だ。


「あー……うーん……わかったわ。やってあげる」

「おおっ! ありがとうございます! 本当にありがとうございます!」

「お祭りまでだからね。あたしたちも目的があって旅をしているんだから」

「でも、ちゃんと引き受けるあたりゾーラは優しいよなー」

「キア。彼に歩き方や日常の動作を教えるのは、あなたがやりなさい」

「アタシが!? なんでだよ!?」

「運動はあなたの方が得意でしょ?」

「いやいや。でも……ああもう。わかったよやるよ。壁を登れるようになるまで鍛えてやる」

「それはやりすきだけど。アンリちゃんも手伝いなさい」

「え?」

「あなたも、読み書きを習ったばかりでしょう? 簡単な文章くらいは書けるって程度の習得度。だからホイと一緒に学んで復習しなさい。あと習っている先輩として、あなたの立場からの方が教えられることもあるでしょう」

「うー……わかったわ。仕方ないわね、やってあげる!」

「皆さん、本当にありがとうございます!」


 オルソンからお礼を言われて、ゾーラも悪い気はしていないようだった。


 当人であるはずのホイは、こちらの話を理解していないらしい。聞いているかも怪しい。ただ、ずっとリーサの方を見ていた。


 リーサも気づかないはずがなく、困惑しているようだった。

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