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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第4章 次期城主

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4-20.リーサ

 ザサール商会を守っていた、急遽雇われた他の冒険者たちにも報酬が渡された。彼らは帰りもザサール商会の護衛を希望したが、お祭りの間はお役御免。

 街に滞在して別の仕事をしたり祭りを楽しみながら、ザサール商会に声をかけてもらうのを待つ。

 その前に街を出るのもいい。冒険者とは、そういう自由な仕事だ。


 戦いで重傷を負った護衛も冒険者ということで、彼らの身柄はギルドに引き渡された。その後の処遇はギルドに任される。治療を受けさせてから、社会復帰を目指させることになるらしい。

 そんな手続きを見てからギルドから出た僕たちは、ザサール商会の馬車についていって別の場所へと向かう。


 本来なら僕たちも契約が切れて自由行動になるのだけれど、お祭りについて詳しく聞きたいから、ついていくことになった。


 街の中心部から少し外れた所にある住宅街だ。庶民的な家々が並ぶ区画。貴族たちの屋敷とは違う、小さくて素朴な家ばかり。


「お祭りに必要な、セイホラン様の像を作っている人たちがいるんです」

「像?」

「はい。巨像です。お祭りのシンボルの」


 馬車は、一軒の屋敷の前で止まった。庶民の家が並ぶ中にある、屋敷だ。


 とはいえ貴族の屋敷と比べれば、随分と慎ましい。他の家と比べれば大きくて、ちょっとした庭があるって程度。屋敷自体も、さほど築年数があるってわけではなさそうだ。

 使用人がいるわけでもなさそう。貴族の屋敷なら、昼間に馬車が屋敷の前に停まったら、それに気づいた使用人が門までやってくるはず。


 この家の場合は、庭を含めた敷地と外を隔てる門は開けっ放しになっている。ラマル・ザサールは馬車から降りて、屋敷の扉へと歩み寄って叩いて来訪を知らせた。


「ザサール商会です。お祭りに必要な物資を持ってきました」


 すると屋敷内からバタバタと音がした。扉まで急いで走ってきたって音。そしてすぐに開いた。


「お世話になります。お待ちしていました。本当に助かります!」


 出てきたのは、二十代半ばくらいの女。愛嬌のある美人だ。

 全体的に品のある佇まいをしているけれど、今は息を切らして、ちょっと落ち着かない様子。それは、待ちかねていた荷物が届くまで心配だったとか、そんな内心からだったのだろう。


「ごめんなさい。父は今、準備会の方に行って。姉も動けないので、わたししかいなくて。あ、申し遅れました。リーサ・オーゲルと申します。父がお祭りの準備会の会長をしています」


 慌ただしく、リーサと名乗った彼女はラマルにお辞儀をした。


「すぐに父の所に案内しますね。お姉ちゃん! ちょっと出掛けてきます!」


 屋敷の中にいるらしい姉に声をかけてから、リーサは扉を閉めた。人前で大声を出すのも、お金持ちのお嬢様としては少し、はしたないと言われるものだけど。

 やっぱり彼女は、生まれながらの金持ちってわけではないのかな。けど、ちょっとした屋敷を持っている。庶民ではありえない名字も持っている。父親は、街の重要なお祭りの責任者らしい。

 どういう立ち位置なんだろうな。


「没落貴族ね」


 リーサの姿を見ながら、ゾーラが静かに言う。


「なんらかの理由で立場を追われて庶民の中で生きることを強いられた貴族」

「下級貴族も似たようなことしてない? 庶民よりも少しお金持ちくらいで、暮らしぶりはそう変わらない。庶民と同じ店で買い物をする」


 僕は元王族。貴族にも色々あるのを見てきた。下の方は貴族とは名ばかりの、そういうものだ。


 ゾーラはその見分けができてる様子で。


「下級貴族の屋敷は、お金持ちが住む区画の端が多いわ。あそこの立地は少し違う」

「確かに……」

「没落貴族はね、没落してもかつての貴族社会とのパイプを持っていることは多いの。個人的に仲が良くて、縁を切られてない人脈ね」

「そういうのって、ありえるの? 没落した貴族なのに?」

「没落の理由によってはね。仕方ないって周りから思われることもあるのよ」


 そういうものか。


「そういう家は庶民扱いだけど、庶民側の代表者になりえる。貴族たちと交渉する仕事もできるしね」

「なるほど。昔の繋がりが使えるのか。お祭りみたいな、庶民の手で運営されるイベントの実行役にも選ばれるってこと?」

「そう。没落貴族が必要な立場もあるのよ」

「世の中って複雑だね。じゃあ、リーサさん……オーゲル家が没落したのはなぜ?」

「それはわからない。仕事で大きな失敗したとかじゃない?」


 それが一般的だよね。


 人の良さそうなリーサに、あなたの家はなんで没落したんですかって訊くわけにもいかない。わからないけど、わかる必要性も薄い。

 ザサール家が乗る馬車にリーサも同乗して案内されるままに住宅街を歩く。市民たちの集会所のような、少し大きな建物があった。大きな倉庫も併設されている。


「お父さん! 商人さんが来たよ!」


 集会所に呼びかけると、何人かが出てきた。その中の初老の男が、おそらくはリーサの父。

 ひと目でわかった。周りとは明らかに品格が違う。


「おお、良かった。商人様、本当にありがとうございます。祭りの責任者のオルソン・オーゲルと申します」


 丁寧なお辞儀をしたオルソンに、商会の代表であるラマルもお辞儀を返した。

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― 新着の感想 ―
「なんらかの理由で立場を追われて庶民の中で生きることを強いられた貴族」 悲しいです。
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