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27. 15年前。


「僕達兄弟は、今でこそ継承者同士として緊張関係にあり、世間的には気安い関係ではなくなってしまいましたが…昔はとっても仲が良かったんです。」


綾艶リンイェンは表情そのままに語り出す。

てか、今朝方そんな夢を見た気もしなくもないな…。


ジン兄上もウェンも笑っていて

レイもいて…」


ふーん、堅物な錦艶も生意気な雯艶も素直に笑えてた時代があったのか。想像できねぇ〜。


蕾って…ああ蕾艶レイイェンか。

確か…斐艶フェイイェンの実の弟で11年前に死んだんだっけか?

雯艶と同じ歳だったから…享年八か。

…みじけぇもんだな。


「…でも、僕がそれを壊した…。

 十五年前のあの日…僕の過ちで…

 全てが壊れてしまった…。」



————————————

【15年前】


万姫帝国 後宮


第二皇妃の宮殿。

豊かな緑に彩られ、鯉が優雅に舞う苑池えんちを擁する翠霞宮すいかきゅう


優しく穏やかな第二皇妃は

我が子である錦艶ジンイェン(12歳)、綾艶リンイェン(6歳)をそれはそれは可愛がり、2人と仲の良い他の皇子達のことも我が子の様に可愛がっていました。


おのずと翠霞宮すいかきゅうは皇子達の遊び場となり、宮内は常に子供達の笑い声に包まれていました。


“王族”という“厳しい運命”の中を生きる皇子達にとって、兄弟と過ごしたその時間は何にも代えがたい日々。

かけがえのない幸せとして記憶に残り…

同時に、二度と戻らないものとして深く胸に刻まれることになりました…。


…。


幸せが一転したのは

春の気配を運ぶ風が頬を撫で

青空がどこまでも穏やかな

そんな日…。


その日

第二皇妃は、数日間の実家帰省から今朝方戻り、

一人自室へ引きこもっていた。


そこへ、まだ寝ぼけ眼の綾艶とそんな弟を支えるように手を繋ぐ錦艶が入室し朝の挨拶をする。


普段ならそんな二人を優しく抱きしめ言葉を返してくれる母は、息子達を見て…繋がれた二人の手を見て…泣き崩れた。


母の突然のその姿に二人は困惑しつつ駆け寄る。


「「母上!?」」


錦艶は震える母を支え椅子へ座るように促し、母の側仕えに湯で温めた手拭いを持ってくるように指示を出す。


「母上?大丈夫ですか?また、おばさまにひどいこと言われたのですか?

大丈夫…。大丈夫ですよ母上…。

…ボクと兄上が守るから、泣かないで母上。」


未だ泣き止まぬ母に、己も涙を溜めながらも母の涙を止めようと声をかける綾艶。

母を支えながらも静かに母を観察する錦艶。


…。


しばらくし、

第二皇妃が手拭いで目元を抑え温かい茶で少し落ち着いた頃。不安から母の腰に抱きついていた綾艶が思い立ったように口を開いた。


「そうだ!!母上!第六皇妃様を呼んでお茶会をしましょう?!」


その提案は、幼いながらも母を思って必死に考えたものだった。


母がお気に入りの茶を飲みながら景色を楽しむのが好きなこと。

第六皇妃を「お姉様」と言い慕い、彼女と共にいるととても楽しそうなこと。

いつも自分達がこの宮で集まり遊んでいるのを、彼女とお喋りをしながら穏やかに見守っていること。


これらのことから、第六皇妃とお茶の時間を楽しめば母も元気になり笑顔に戻ってくれると考えたのだ。


無邪気で優しいその提案だったが…

第二皇妃はビクッと肩を揺らし震え出す。

明らかに正常ではないその反応に、綾艶は自分の提案が原因だとは気付か事なく…

「早く第六皇妃様を連れてきて母上を元気にしてもらわなくちゃ!」と部屋を飛び出す。


「…っ?!あ…ま、まって阿綾アーリンっ!!」


震える母の制止の声は“母を笑顔にしたい”と必死な綾艶の耳には届かなかった。


第二皇妃は顔を両手で覆い掠れた声で何かを呟きだす。


そんな母の姿に錦艶は顔を歪め、弟を追うため母を支える腕を解こうとするが…その腕を母に強く掴まれたことで綾艶を止めることはできなかった…。


……。


もしもこの時…

錦艶が弟を止める事ができていたら


何か変わっていたのだろうか…?


…。


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