第4話 拳銃
魔女の強い語気と気迫ある眼差しを見て、俺はうなだれた。相当面倒なことに巻き込まれた。護衛の件は問題ない。金を稼げるなら引き受ける。
だが腑に落ちない。
命を救ってやった程度の初対面の男にこの呪いを託すだろうか。何か別の理由があるとしか思えない。俺に不利益を与える目的があるのなら、見捨てるだけでよかった。だが何らかの方法で傷を治療し、延命させ、あるいは本当に永遠の呪いとやらを継承して俺を生かした。なぜだ。解呪には生贄が必要なのかもしれない。生贄の身代わりにされた、とか。
「本当に、俺は死ねなくなったのか」
「なんか本当は死にたかったって口ぶり。変なの」
「今この場で頭を吹き飛ばしても死なない、と」
「もちろん。全身が木っ端微塵になっても死にませんし元通りに治ります。試してみますか?」
魔女の視線がベッドのサイドテーブルにある回転式拳銃に移った。
俺は拳銃を手に取った。鉄の質感。握把(銃を握る部分)が少し錆びている。
『クランツァ、撃ちなさい』
心臓が大きく動いた。
頭に構えていないが心臓が訴える。撃つんじゃない。お前は生きなければならない。生の叫びが聞こえる。
「血で汚れちゃいます。冗談ですので、それ置いてください」
「俺が死なないのも冗談か?」
「あ、それは冗談じゃないです。でもいずれ自覚しますから、ね? やめましょ」
魔女は平然とした表情で口にシチューを運んだ。撃たないとわかってて言っている。見透かした言動に気が立ちそうになるが、そんな感情は無意味だ。
拳銃を置いて立った。壁に立てかけてある小銃を手に取る。ボルトを引いて薬室を覗く。異物はない。引く、カチンと撃鉄が鳴る。壊れてなかったらしい。
「そ、それだと撃ちにくいのでは?」
魔女の声は動揺で揺らいだ。彼女も腰を浮かせて立ち上がる。
「山に行ってくる」
「私も行く! 帰らなかったら、困るから……」
「鹿を狩りに行くだけだ」
「もう夜ですよ」
「俺の目は夜も使える。狩れるかは運だ」
壊れていない弾倉を手に取って弾を込める。
「朝には戻る。俺のベッドを使っていい」
「やっぱり私も同行します」
「逃げたりしない。護衛は引き受ける」
ボルトを引いて弾を装填した。威圧的に。彼女を黙らせるように。




