第26話 目覚め
目を開ける。首を横に倒す。メアが隣のベッドで横たわっている。同時に目覚めたらしく、彼女はうつろな目をぎゅっと一度閉じ、こちらを見た。
「あ、おはようございっ!?」
メアは跳ねるように起き上がった。
「嘘!?」メアは顔を赤らめて叫んだ。
彼女の反応を無視し、体を起こす。床に靴が揃えてあった。
「あ、あの……何も覚えてないです」
「夢を見たか?」
「み、見てませんけど……」
「俺たちは接続者に会いに来た。あの鉄扉を覚えてるか」
「……もしかして監禁されてる?」
部屋の状態は悪くない。床も壁も木材。窓が一つあって日光が差し込んでいる。二階か、三階にいる。窓に近づく。外はスペラルジェ連峰の山肌だ。
「荷物がない。メアもないか」
問いかけにメアがベッドの下を覗く。
「ベッドの下にもないです。靴だけ」
腰の拳銃も取られている。荷物は全てだ。
「たぶん記憶を覗かれていた」
「記憶を? というか覗けるものなんですかね、記憶って」
「魔術の痕跡を感じるか。俺にはわからない」
「いえ、ないです。幻術系だったら絶対に気付けるんですけど何も感じません。魔術師の観点からではお手上げです」
メアはベッドに再び横たわった。のんきなものだ。
ドアへ移動。ドアノブに手をかける。開いた。そもそも鍵穴自体がないようだ。
「大丈夫だと思いますよ。変だけど」
「俺の仕事はお前を守ることだ。少しは危機感を持て」
「わっ! かっこいいこと言いますね!」
「いざというときは魔術を使え。いまの俺は格闘しか手段がない」
「それについてはご安心を。私をただの女の子と思ってるかもしれませんが、魔術師としての腕は超一流です。冥界の力も使えますから」
「冥界ってのは、死んだ後の世界って意味か」
「どうなんでしょう。死後の世界っぽいからそう呼んでるだけです。死んだ人、見たことないですし。なんか魔術で呼び出せちゃうんですよね。いろんな種類の冥者がいますが、大抵、目に入った人間を全員倒してくれます」
メアは余裕の笑みを浮かべると目を閉じた。また寝るらしい。
しかし行動しようにも丸腰でうろつくわけにはいかない。部屋に武器になるようなものもない。結局、待機が賢明のようだ。
数分後、接続者がやってきた。以前会った接続者とは別人だが、杖、頭髪のない頭、白い衣服という特徴は共通していた。性別は男で体は細い。髭もない。
「メア様。クランツァ様。どうぞこちらへ」
メアが立ち上がる。
「あなたも接続者ですか」
「左様でございます」
「私たちに何を?」
「お二人の過去を拝見しました」
「クランツァさんの言うとおりですね……」メアは視線をこちらに向けた。
「お二人が無害であることを確かめるためでございます。われわれ接続者は武装しておりません。襲撃にあえばひとたまりもないのです。どうしてもお二人の真意を確かめる必要がありました。申し訳ございません」
「私たちは無害だった、と理解していいんですよね」
「左様でございます」
「でもどうやって記憶を? 魔術を使った残り香はなくて……」
「世界と接続いたしました」




