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あなたの永遠の物語  作者: 水埜アテルイ
第1部 クランツァ・ハザリー

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第19話 追跡


 数分後。今度はメアがやってきた。


「本当に位置を把握できるらしい」俺は言った。

「バレバレです。宿は取れました?」

「問題ない」

「ありがとうございます」


 彼女は赤黒い長髪に指を通して払った。毛量が多いから羊みたいだといつも思う。


「接続者の情報は手に入れられたか」

「あの山にいるのは間違いないようです。特徴もわかりました。白い服を着ていて、髪が生えていない。かなり目立つ容貌だそうです」

「ああ、やっぱりあれか」

「あれって?」

「さっき接続者の特徴と一致する人物が通った」


 メアは俺の肩を掴んだ。


「なんで追わなかったんですか!」

「確信がなかった」

「ちょっとは興味持ってくださいよ! 誰かに質問するくらいはできるでしょうに!」


 肩を揺さぶられ、説教が続く。


「どこへ行ったんですか! ほら立って!」

「山の方角だ」

「確定で接続者じゃないですか! 走れ!」


 言われるがままに走った。

 接続者の足の速さから考えるに、まだ遠くへ行っていないだろう。後ろを見る。メアは少し離れた場所で地面を触っている。魔術か何かで追跡を試みているのだろうか。とりあえず、できることをしよう。


 接続者が向かったであろう方角へ走り続ける。

 杖を見つけた。路上に落ちている。誰も触ろうとしない。住民たちは杖を指差して立ち話していた。不穏な雰囲気だ。


「接続者を見なかったか」ある住民に尋ねる。

「いたいた、人攫いだ。接続者の服は高級品だからね」

「誰が攫ったんだ」

「盗賊に決まってるさ。あんた知らないのか? 服だけじゃなくて、奴隷としてどこかに売られるって噂だ。接続者は世間と関わりないからね。今さっき、ここでそれが起きたんだ」

「どこへ行った」

「馬を使ってあっという間。馬主も気の毒だ」


 住民は頭を抱える行商人を見つめた。荷台がある。馬を二頭繋げるものだが馬はいない。その隣にも同様に頭を抱える別の行商人。馬が一頭残っている。


「確かに気の毒だ」


 俺は残りの一頭を奪った。

 本当に、気の毒な話だ。



 馬の足跡を追跡する。馬術の練度は落ちてない。久しぶりに跨っても体は覚えているものだ。

 果物や野菜が散乱した屋台を横切る。荒々しい走りだ。馬が混乱しているのがわかる。


「あれか」


 前方、三頭の馬を目視する。三頭の前方、荷台付きの馬車が一台。

 荷台も奪っていたとは欲張りな盗賊だ。盗賊だから当然か。

 腰の拳銃を手に取る。最後尾の馬、盗賊の背に照準を合わせる。


 激発。


 一人が崩れ、地面に転がる。激鉄を起こす。盗賊たちは首を回した。遅いぞ。引き金を絞る。命中。二人目はすぐに落馬した。

 荷台の後方、幌を手でわけて男が顔を出した。小銃だ。


 馬を右へ。

 身を落とし、馬体側面に隠れる。

 当たるな。

 祈りは通じた。

 右折後、次の角で左折。

 全力で馬を走らせる。馬の息遣いが荒くなる。


 商店街の並びが途切れた。

 左方に馬車。追い越している。

 手綱を握る盗賊。後方に向かって何か叫んでいる。


 狙いを定める。


 馬が跳ねた。

 外した。

 二発目。

 盗賊が腹を折る。前転するように落馬し、荷台の下に消えた。


 二頭が別々に走ろうとして荷台が大きく傾く。それを見届けた後、俺の馬が大きく跳ねた。馬が聞き慣れぬ銃声に耐えきれなかったのだろう。投げ出され、落馬。地面に転がって衝撃を分散する。


 呼吸に違和感はない。折れてない、大丈夫だ。

 荷台は草原で横転している。後続は三人いたはずだ。二人は途中で落馬したが、まだ一人どこかにいる。しかし見渡しても馬の影は見えない。


 荷台から呻きが聞こえる。息を殺して待つ。

 男の頭部が幌(ほろ)から出る。顔を見合わせる。射撃。これで弾切れだ。

 男の手から小銃を引き抜く。重心部分が割れて機関部が露出してる。この程度の衝撃で破損するとは、なんて粗悪な銃だ。


 馬の足音が聞こえた。通過してきた道から一頭、馬が来る。残りの盗賊だ。盗賊は離れた位置で止まり、馬に身を隠しながら降りた。こちらの状況を伺っているらしい。馬を盾にして近づいてくる。


「お前は同業か!」


 声の届く距離になると盗賊は叫んだ。


「違う」


 盗賊は短刀を抜いた。

 猫店長のナイフを手に取る。


「何が目的だ。お前も金か。二人でわけてやってもいいぞ」


 盗賊はそう提案したが、俺は刃先を向けた。その返答に盗賊は舌打ちで答える。


「あんたの運命は変わらない」

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