第11話 竜殺しの接続者
国立図書館に到着。
大門の警衛に「爬虫人と赤毛の女が来なかったか」と尋ねると許可証を渡された。どうやらブーチョが作ってくれたようだ。それと交換するように拳銃を手渡すよう要求された。まあ、仕方ない。拳銃と革製ホルスターを預けた。
国が管理する土地というのもあって敷地内は綺麗に整えられている。正しく剪定された植物や噴水、均等な高さの青い芝生。その上を老人や青年が難しい顔で書物に目を落として歩く。俺は場違いだな、と思った。
図書館は静寂に満ちていた。学者や学徒が右往左往し、人ではなく本と向き合っている。天井は高く三階建てだ。二階と三階が見える構造で、落下防止の手すりが横一直線に伸びていた。
「赤毛の女が来なかったか。連れなんだ」眼鏡の高齢司書に尋ねる。
「ああ、初めて来た子のことだね。たぶん二階の歴史資料にいるよ。訊かれたから」
司書は二階を指差した。
二階へ上がる。ずらりと並ぶ本棚のそばを手すりに触れながら歩く。
いない、いない、いない。そうして司書がさっき指差した付近を横切ったとき、彼女を見つけた。
「メア」
彼女は一冊の本を手に突っ立っていた。
「わっ! クランツァさん」
「知りたいことは見つかったか」
彼女は本を閉じた。
「ええ、なんと見つけちゃいました。奇跡というか、超偶然に!」
移動して大木を切り出した広い机に移動した。
「永遠の呪いは、世界のどこかで発生し、人に宿り、放棄され、継承され続けてきました。私たちがやるべきことは最初の一人を見つけ、起源にたどり着くことです。ラマチェフは近隣諸国の中で帝国に次ぐ大国で、不死者の記録が残っている可能性が高い。魔女の私は帝都には入れません。だからラマチェフに来たってわけです」
彼女は興奮した様子で開いたページの一節を指で示した。
「これです。題名を読んでみてください」
「……竜殺しの接続者。接続者というのは?」
「ある宗教の言葉です。宇宙と自意識を繋いで真理を視る。何十年と厳しい自然の中で修行をする者を接続者と呼ぶらしいです」
「その接続者ってやつが竜を殺した話か」
「簡単に言えば。竜に食べられちゃった接続者が腹を裂いて無傷で帰還。そう記述されています。こんなの不死者以外にありえません。定命の克服、とも書かれてます。決められた寿命からの解放って意味です」
「誰かが考えた童話って線はないのか」
「それを確かめに行くんですよ。他に方法あります? もちろん他の本も数日間読み続けますが」
「呪いは解呪できないものなのか。永遠の呪いではなく、他の呪いも」
「通常の呪いは私にも解呪できます。でも永遠の呪いは無理です。呪いが見えないんです。どう説明したらいいかな。とにかく見えないし、触れられないんですよ。魔術で干渉もできない。本当は呪いではないのかもしれません」
「俺の体内に呪いがいまあるわけだが、どんなに優れた魔術師でもわからないのか」
「魔女の私がわからないんだから、そこらへんの魔術師がわかるはずありません」
説得力が弱いが、それ以上は質問しなかった。魔術に疎い俺が考えて提案しても、魔女はとっくに思い付いていた案ばかりだろう。
メアは両手を腰に当て、胸を張った。
「接続者の物語を聞きにいきましょう」




