第34話 むへへ
ここは夢だ――と感じたのは、私の部屋に望月がいたから。
朝日が差し込むうっすらとした部屋の中に、なぜか望月が寝ている。
発熱してから、望月が一度だけ家に来たのは覚えている。
せっかく来たのにもう帰るのって思った感情が鮮明に残っている。
でも望月はそのまま家に帰り、私の部屋に入ることはなかった。
つまり望月がいるということこそ、ここが夢であるという証拠になる。
そして望月は、すうすうと寝息を立てて寝ているのだ。
夢だからか、とても都合の良い状況である。
私は本能に従い、ベッドに下りて望月のすぐ隣に寝転がった。まつげとか綺麗な鼻筋とか薄い唇とか、夢のわりにはかなりディティールが細かいような気がする。
まるで本物の望月が目の前にいるかのようだった。
でもそんなことはあり得ない。だって望月は私の家に来なかったのだから。
つまりこれは夢、いわゆる明晰夢だろう。
そうなったらやることは決まっている。
望月を仰向けにしてから、私は本能の赴くままに胸に手を伸ばした。
服の表面から舐めるように触ってから、ちょんと指で触れてみる。
ずっと望月の胸に触ってみたかった。
触っても起きなさそうなので、望月の胸を5本の指で楽しんでみることにする。
両手をこすり合わせてから、私は望月の胸をむんずと揉んでみた。
大きさはそれほどではないけれど、思ったよりも柔らかい。
自分のとは違ってハリはそこまでなく、ふわふわした感じがした。
むへへ、と変な笑い声が漏れる。
エッチしているときに意地悪なことを言う子の胸を揉むのは楽しい。
なんというか、立場が逆転したような感覚があった。
ゆっくり呼吸するため、胸が静かに上下するところは本当に現実っぽい。
私は無心で胸をひたすら揉み続けた。どうせ現実ではそんなことできないだろうし、夢でなら問題ないでしょ、と言い訳をしながら望月の胸の感触を味わった。
しばらく触っていると、望月の呼吸が浅くなった。へぇ、望月も触られて気持ちよくなるんだと思い、服越しに先端部分をいじってみる。
「んんっ……」
いつもは淡泊な望月から、甘い声が漏れた。
そして先端部分は、ほんの少しだけ固くなった。
さっきとは違ってしこりを帯びているような気がする。
そこで私は一瞬、はてと疑問が過った。
……望月の反応が、あまりにもリアル過ぎる。
まるで本当の望月がそこにいるみたい。
でもここに望月がいるのっておかしいし……
そんなことを考えているうちに、望月が薄く目を開けてきた。
「……葉山、起きてたんだ」
おはよ、と言って私の頬に触れてくる。
私の頬にはとても柔らかい感触が生まれた。
「お、おはよ……」
――冷や汗が背中を伝う。
「体調大丈夫?」
「まあ、大丈夫だけど……なんで望月いるの?」
「葉山が入れてくれたんけど、覚えてない?」
「えっ、私?」
そんなわけないでしょ。
そう思ってスマホを見てみると、『大丈夫だけど、』という謎のメッセージを送っていた。そして望月によるとその後、私は家の扉を開けて望月を招き入れ、そばにいてほしいという恥ずかしい言葉で引き留め、家の鍵を閉めることができない望月は泊まることを決めたらしい。
そんな覚えのない私は、夢だと勘違いして望月の胸を揉みしだいたってわけだ。
……やばい、恥ずかしすぎて死にそうなんだけど。
望月は気づいていないみたいだけど、私のしたことはあまりにも変態すぎる。
人の寝込みを襲うなんて、どう考えても普通じゃない。
「……なんかごめんね、望月」
土下座せんばかりに謝罪すると、望月がなぜかもじもじし始めた。
「いや、うん、私もごめん……」
「なんというか、ほんとに、うん……」と落ち着きなく太ももを擦る。
なんでこの子が謝っているのだろう。
だって望月は私の我儘に付き合ってくれただけなのに。
でもなぜか望月は私と目を決して見ようとはしなかった。
「……」
「……」
部屋に何とも言えない気まずい空気が流れる。
「と、とりあえずご飯、食べよっか」
「あっ、いいね、うん」
こくこくと望月はうなずき、すぐに立ち上がった。




