第25話 ……はずいこと聞かないで
ノートパソコンを広げて課題に取り組み始めてから数十分ほど経つ。
――ちらっ
――ちらちらっ
私は真面目にレポートを書いてるのだが、隣からの視線がうるさい。
少し前にエンターキーを大きく叩いた少女が私を盗み見してきているのだ。
最初は無視していたが、流石に気になってきたので声をかける。
「……終わったの?」
「うん。望月はまだ?」
もうちょっと待ってて、と口にすると、葉山はそわそわと髪を触り始める。
――課題が終わったら、私たちは初めてエッチをすることになっている。
葉山の初めてになりたいからという我儘を、私の恋人は受け入れてくれた。
その嬉しさを噛みしめながら、私は急いで課題を終わらせた。
自分のレポートを読み直してから、大学のポータルに提出して顔を上げる。
「終わったよ」
「……そっか」
その声には、今までとは違う固さがあった。
パタンとノートパソコンを閉じてから胸元に寄せる。
まるで自分の身体を守るかのように、ぎゅっと抱きしめていた。
「まだ、しないの……?」
「するけど、それ、しまった方が良いと思う」
「あっ、そっか……」
ごめん、と謝ってから、葉山はぎこちなくノートパソコンを鞄の中にしまう。
まだ何もしていないのに、ちょっとした仕草だけでも緊張が伝わってくる。
私だって緊張で頭がちゃんと働いていない。葉山を満足させられるか不安だし、なにより身体に触れたときに違和感を抱いてしまわないか心配だった。
でも――
「んっ……」
葉山が振り返ったタイミングで、私たちは唇を重ねた。
ちゅっ、と小気味よい音が部屋に響く。
軽いキスをしてから頬と頬を擦り合わせる。
葉山のほっぺたはもちもちしていて、子どもみたいだった。
目を合わせてから、もう一度キスをする。
ときおり漏れる葉山の吐息が、私の唇をくすぐった。
唇とはまた違った柔らかな感触で、頭の中の何かがほどける。
それからは流れるように、私は葉山の口の中に入り込んだ。
お互いが絡み合ってうねる音が部屋に響く。
私より少し熱い内側で、葉山と深く繋がった。
隙間に漏れる呼吸は少しずつ浅くなり、頬が朱に染まっていた。
葉山は私の首に手を回し、少しでも深く結びつこうとしてくる。
その表情も様子もすべてが健気で可愛くって、ほんのりとした妖艶さがあった。
いったん絡むのをやめて、葉山の上唇を指でなぞる。
私と葉山のもので混ざり合った表面は、ぴとっと滑らかに吸いついた。
「はぁっ……」
葉山は甘い声を漏らしながら私の頭を撫でる。
彼女の柔らかい指が私の髪を通る。
さらさらと音を立てて滑る音が耳に入った。
なるべく邪魔しないように身体をかがめ、葉山の身体を下りていく。
なめらかな首筋を焦点を合わせて、私は唇を吸いつけた。
キスとは違って、しなやかな薄い膜という質感だった。
「んぅっ……」
小さく吐息を漏らし、髪を梳く手を止める。
揺れる瞳の色を読み取り、私は胸に触れた。
触り心地の良い服の下にある確かな熱を感じ取ることができる。
「望月――」
名前を呼ばれて顔を上げると、葉山は唇を甘く噛んでいた。
すぐに葉山の唇をさらう。
そして手の空いた私は、胸を下から持ち上げた。
服越しに伝わる葉山の胸は、ハリがあってずっしり重い。
手に沈み込む感覚がとても新鮮で、ずっと触っていられそうだ。
葉山は私の背中に手をまわして、ぎゅうっと抱きしめてくる。
少ししてから、葉山には服を脱いでもらい上半身は下着だけになってもらった。
就寝用の黒のブラは落ち着きがあって、幼さの残る葉山を大人に彩っている。
「葉山の胸って綺麗だよね」
「……そんなことない」
高校の頃から、男女問わず葉山の胸には注目が集まっていた。色々大変そうだなと思っていたけれど、まさかこういうことをすることになるとは思わなかった。
「触るよ」
「うん……」
私も葉山もいつもみたいなテンションではなかった。熱っぽくて湿り気を帯びていて、この状況にどっぷりのめりこんでいる。
そして私は、下着越しに葉山の胸を手で弄った。
「気持ちいい?」
「……はずいこと聞かないで」
葉山は私と腕を絡めつつ、もう片方の手で服をくいくい引っ張ってきた。私にも脱いでほしいのだと思い、手を止めてからスウェットをまくり上げる。
向こうに放り投げると、ぽすんっと柔らかな音を立てて床に着地した。
「ベッドで横になって」
私が指示すると、顔を赤らめたまま葉山はあおむけになった。
自分の指を甘噛みしながら、私のことを物欲しそうにじっと見つめてくる。
――少女の表情は、完全に緩んでいた。
とろんとした瞳は私をとらえていて、口角が柔らかく上がっている。
私に身体をゆだねてくれているということがたまらなく嬉しい。
葉山に信頼されているということの喜びがひしひしと感じられる。
温かな感情をたしかめるように、指先で胸を遊ばせる。
「んくっ……」
さわさわと軽く触る程度なのに、葉山は腰を浮かせていた。
「めっちゃ感度良いね」
「ふつう、でしょ……」
その否定の言葉には、たしかな熱を感じられる。
「ブラとるから、身体あげて」
すぐに葉山は上半身を逸らして、下着を持ち上げやすくしてくれた。
さっと葉山のブラを外して胸元をはだけさせる。
そして下の衣服もゆるめて、ショーツだけの姿にした。
「恥ずかしい……」
赤面する葉山は俯き、左手で胸を、そして右手で下腹部を隠そうとしていた。腕に力が入っているからか、上腕が少しひくついている。
「可愛いからもっと見せて」
「望月も脱がないとやだぁ……」
甘えるように言われたので、私も葉山と同じ格好になることにした。
ブラの端をつかんですっと引き抜く。
そして腰に手をかけて衣類を取り去った。
あっという間に、私はショーツだけの姿になった。
私の手際があまりにも良かったからか、葉山は不満そうに唇を尖らせる。
「私だけ恥ずかしがってるのしんどい……」
「恥ずかしいけど、葉山も一緒だから」
「……そういうのずるい」
葉山はとても嫌そうに腕をよけて、全身を見えるようにしてくれた。
「あーもう、ほんとにはずい……」
すぐに葉山は、真っ赤な顔を両手で覆い隠す。
淡く染まった先端はぴんと張っていて、ショーツには水玉が浮かんでいた。
――興奮してくれている、という事実が身体に現れている。
それだけで、私はとても嬉しかった。
葉山と密着してから胸の先端を避けて周りを刺激し、太ももに手を滑らせる。
その身体はびっくりするほど火照っていた。
どの部位も熱を持っていて、生きてるって感じがする。
「んぁっ……」
しばらくして胸の先端に軽く触ると、葉山はぴくんと身体をうねらせた。
やはり、葉山の感度はかなり良い。
「やっぱひとりでしてるの」
「望月のせい、なんだから……いつも、キスしかしないし……」
いつもの葉山なら絶対に口にしないような言葉がするりと漏れた。
可愛い、と呟いて私は先端を舌先で転がす。
柔らかさの中にある芯のようなものを感じた。
なんというか、先端だけ別の生き物みたいだなと思った。
「んんっ……」
零れるような嬌声が部屋に響く。
そしてキスの位置を少しずつ下に落とし、葉山の核心へと迫っていく。
さっき見た時より水玉はほんのり広がっていた。内太ももに手を滑らせてじらしていると、葉山は腰をくねらせて、私の手を特定の場所にもっていこうとする。
「……はぁ、はぁっ」
葉山の浅い呼吸音が私の耳をくすぐる。
さっきよりも間隔の短い呼吸で、彼女の胸は上下していた。
もう洗濯しないとダメだろうな、と思いながら、ショーツに手をかけて下腹部を露わにしようとすると――
「ちょっ、望月……」
葉山は私の手をぱっと掴んで止めようとしてきた。
「さすがに無理、はずい……」
けれど、その手の力はそれほど強くなく、簡単にのけることができる。
やめさせようとする手を恋人つなぎにして、外側に持っていった。そしてショーツの表面から撫でてあげると、葉山は「んぅっ……」と甘い声を漏らした。
ああどうしよう。私の恋人が可愛すぎる。
葉山が何も言わなくなったので、それを合図に、繋いでいた手を放して下腹部を露わにすると、すでに周囲までしっとりと湿っていた。周りを指先でさすりながら片方の手で太ももを触っていると、葉山のお腹が大きく動いた。
そして十分な頃合いになってから、欲しがっていた箇所にちょんと触れてみる。
「はんっ……」
今日一番の大きな嬌声が漏れた。
葉山は頬を真っ赤に染め、瞳は微かに揺れている。
そして呼吸に合わせるように、葉山の下腹部は動いていた。
――ちゃんと葉山を気持ちよくさせることができている。
それは、私の高校生のときの記憶を薄めるほどの快感だった。
葉山に求められているという感覚が、繋がりをもっと密にしていく。
「指、入れてもいい?」
「いいけど、最後までできたことない……」
「そうなんだ」
大丈夫だよ、と言って表面を触り指を湿らせてから、葉山の内側に入り込んだ。
他の人の熱や圧迫感を知ったのが初めてで、とても驚いた。
ふわふわした女の子とは思えないほどの生命が脈動している。
静かな部屋に、普段は聞くことのできない甘い声と水音が響く。
上側にある質感の少し違う場所に触れていると、彼女の腰がぴくんと跳ねた。
ここなんだなと思って、丁寧に丁寧に、葉山の気持ちを高めていく。
胸も触りながらしばらく続けていると、葉山の呼吸が少しずつ浅くなってきた。
「もち、づき……」
かすれ声で私を呼ぶ葉山は腰が少しずつ浮いてくる。
どんどん中の圧迫感が増してきた。
指を締め付ける痛みは葉山の気持ちよさ――。
足が閉じそうになったので、胸を触るのをやめて少し強めに押さえる。
甘い声が少しずつ大きくなっていき、内側はきゅうっと締め付けてくる。
――そして葉山の身体は、びくんと大きく跳ねた。
浮かんだ腰はゆっくりベッドに沈み込んでいく。
大きく動いていた胸も、次第に静けさを取り戻していった。
緩まった内側から指を引き抜き、葉山に顔を近づける。
私の恋人は、天井を見ながらぽーっとしていた。
浅い呼吸は苦しそうだけれど、そこには快楽の色が浮かんでいる。
「葉山、ありがとう……」
思わず零れた言葉は、葉山に対する感謝だった。
葉山の初めての人として選んでくれたこと、ちゃんと喜んでくれたこと。
そして私でも最後まで導くことができたことへの安心感で胸が暖かくなった。
「大好きだよ、望月……」
呼吸を整えてから、ぽつりと口にした。
私も好き、と応えて、お互いの気持ちを確かめ合う。
――葉山とのひとときは、これまで感じたことのないほど幸せだった。




