第20話 その……さ、葉山
へとへとに疲れた私は、高畑さんと話もせずひっそりとバイト先を後にした。
今日は本当に大変だった。
12月24日ということもあり、客入りが良すぎた。
とくに高校生たちが多くって、店内はとても賑やかだった。
バイトをしている私たちからしてみれば、困ったものなのだけれど。
「さっむ……」
身体を小さくしながら、葉山と一緒に買った手袋を身に着ける。
最近は外に出るとき、この手袋をよく身に着けている。ふわふわした手触り感が好きで、外出することがほんの少しだけ楽しくなった。
静かな通りを早足で歩き続ける。私の足音だけが、小さく響いた。
今日は私の家で、葉山と一緒に過ごすことになっている。
そのため、まずは葉山を迎えに行って私の家に連れて行く必要がある。
なぜそうなったかと言えば、私の家の方が大学に近いから。明日も講義が入っているので、できるだけ一緒にいられる時間を増やそうと思ってそうしたのだった。
私もだいぶ熱っぽいことを考えるようになったと思う。
前までならこんなことを考えるタイプではなかったはずだ。ふと我に返ると少し恥ずかしいけれど、そこまで嫌ではなかった。
葉山の家に近づくにつれて、私の鼓動は少しずつ早まっていく。
別に今日はクリスマスイブだから集まるという感じではない。クリスマスプレゼントもあんま期待しないでね、と葉山に事前に言われるくらい、いつもみたいに一緒に過ごす予定らしい。
でもそれはきっと、私が気負いしないようにするための葉山の心遣いだと思う。
「ごめん、望月待った?」
マンションに着いたので、葉山に『下にいる』とメッセージを送ると、すぐに彼女がやってきた。
「いま来たとこだから」
「じゃ、いこっか」
そういって、嬉しそうに歩き始めた。
葉山も一緒にショッピングモールに行ったときに買ったミルクティー色の手袋を身に着けている。
無意識にその手を追っていると、葉山は手を繋いできた。
びっくりして肩が跳ねる。
「あれ、繋いでってことじゃなかったの?」
ずっと見てたから、そうなのかと思ったんだけど、と葉山は口にする。
違ったけど、違うとも言えず、葉山の手を握り返した。
階段を上って鍵をさし、扉を開ける。
玄関の扉はきぃ、と音を立てて開いた。
「どうぞ」
「おじゃましまーす」
中に入って電気をつけると、葉山は大きめの荷物を下ろした。
「今からご飯にする?」
「うん。お腹すいた」
バイト終わりなので、とりあえず何か食べたい。
でもそのあとのことを考えると、食べ過ぎない方がいいかも。
「とりあえず、ピザだけ頼もっか」
「いいね」
フードデリバリーでピザを注文すると、すぐにやってきた。
飲み物は冷蔵庫に入っていたお茶を注いで準備は終わりだ。
本当にゆるいクリスマスイブだった。
雑談をしながらのんびりとピザを頬張って飲み物を口にする。
食べ終えてから、ちょっとしたプレゼントを交換した。私はハンドクリームで葉山は化粧ポーチと、どちらも数千円で買えるものだった。
ゆったりとした空気が漂っている中、私はさりげなく話を始めた。
「今からどうする?」
「お風呂入って映画でも見ようかな」
葉山は本当にいつも通り過ごすことを考えているらしい。
それでももちろん良い。
というか、それが私たちらしいような気もする。
言い出す気持ちが少し鈍ったけれど、なんとか気持ちを奮い立たせる。
「その……さ、葉山」
「なに?」
私がいつもと違う雰囲気を察してか、葉山はぱっと私に顔を向けた。
「えっなに、ほんとにどうしたの?」
望月、めっちゃ顔赤いけど、と葉山は不思議がる。
やはり私の顔は真っ赤になっているらしい。
私の心にあるのは不安と葉山の期待に応えたいという気持ち。
だから私は思い切って口を開いた。
「……お風呂、一緒に入らない?」
私がそういうと、葉山は大きく目を見開いた。




