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【百合】可愛い友だちに告白されたから、お試しで付き合ってみることにした。  作者: 夏野恵


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第19話 一緒にいよ?

ゲームセンターを抜けてから、別のフロアにあるアパレルショップに向かった。


12月上旬ということもあり、ショッピングセンターは数週間後のイベントの気配を感じさせる。


ちらりと横に視線を流すと、葉山は上機嫌な様子で歩いていた。


今年はどうするんだろう。高校生の頃は葉山を含めた友達と一緒にファミレスでご飯を食べたりなんかしたけど、流石にそれだけじゃダメだと思う。ケーキを食べたりして楽しく過ごしつつ、夜も更けてきたら――


「おーい、望月―?」


いきなり目の目に手が表れて、思わず立ち止まる。


「……なに?」

「いや、こっちがなに? なんだけど」


いきなり黙ってどうしたの? と言って、私の顔を覗き込んでくる。


恥ずかしくなって私は目を逸らした。でもその先にあったクリスマスの装飾が目に入ってきたので、別の場所に視線を向ける。そういうことを繰り返しているうちに、元の葉山に落ち着いた。


「……別に、なんでもないから」

「ふーん」


納得はしてないけど、追及するまでもないという感じの相槌だった。


アパレルショップに着くと、葉山はとあるコーナーにまっすぐ進んでいった。


「最近寒いからさ、こういうのがあったらいいなって思ってたんだよねー」


そういって葉山は小物コーナーにあった手袋をこちらに見せてくる。


今日は手袋を買いに来ることが目的だったらしい。


ひとまず、陳列されていた商品を見てみることにした。


気に入った商品を取り出し、値札を見てそっと戻すというのを何度か繰り返す。

価格に目が吸い寄せられてしまうのは悪い癖だと思う。子供のころから抜けない。


「なんかいいのあったー?」


葉山がすっと横に来て話しかけてきた。


彼女は買い物かごを下げており、その中にはいくつか手袋が入っている。

葉山にしてはずいぶんと落ち着いた色だな、と思った。


「あんまないかも」

「自分の見つけるのが難しいならさ、私の選んでよ」

「え、葉山の?」


こくんと彼女は頷いた。


小物コーナーをぐるりと見回す。手袋の置かれているスペースはそこまで大きくないので、葉山に合いそうな手袋はすぐに見つけることができた。


アーガイル柄でミルクティー色の明るい手袋を手に取って葉山に向ける。


「これとか良いと思うけど」

「へぇ、結構いいじゃん」


葉山に手袋を渡すと、触り心地を確かめていた。


「価格もいい感じだし、これにしようかな」

「そっか」


見た目だけで選んだけど、価格も手ごろで葉山が喜んでくれて嬉しかった。


「自分のが決められないんだったらさ、この中から選んでみてよ」


そういって葉山は買い物かごを私によこしてきた。


そこには、3種類の手袋が入っていた。最初に感じた通り、私の手袋を選んでくれていたらしい。


私はすぐ、アーガイル柄でグレーの手袋を手に取った。


「これにする」

「決めるのめっちゃ早いね」


さっきまで悩んでたんじゃないの? と言って葉山は近づいてくる。


せっかくならお揃いにしたかった、というのは恥ずかしかった。

私、そんなことを軽く口にするようなタイプじゃないし。


「……なんかいいじゃん、こういうヤツ」


言葉を濁すと、葉山はにやにやと笑っただけで何も言わなかった。


バレたと思ったけれど、追及してこないのであれば説明するつもりはない。

すぐレジで精算を済ませて店を出て、少し離れたところにある長椅子に腰掛けた。


しばらくぽつぽつと雑談をしていたが、葉山がおもむろにあることを切り出した。


「クリスマス、あるじゃん」


そういう葉山の言葉の質感は、いつもと少し違っていた。


いつもより芯のあるような、固めのトーンだった。


「その日ってどうなの?」

「どっちの日のこと言ってるの」


どっちともだけど、と言って、隣の女の子は私にすっと近づいた。


周囲の喧騒から、少し遠のいた感覚を覚える。

葉山のちょっとした目線や息遣いにやけに敏感になった。


触り心地のいいポリエチレンの袋を、手の甲でゆっくり撫でる。


「ごめん、イブはシフト入ってる」

「いつまで?」

「20時」

「そのあとは大丈夫?」

「うん」


頷くと、葉山は嬉しそうに目を細めて、私に耳打ちした。


「じゃあさ、24日と25日は一緒にいよ?」


彼女の吐息が私の耳に触れる。


私が頷くと、葉山はすぐに元の距離感に戻った。


そして彼女は私の目をじっと見てから、すっと目を伏せて髪に触れる。


もしここがショッピングモールではなかったらおそらくキスしていた。


でも流石に、公共の場でそういうことをするのはまずい。

理性が邪魔をして、あと一歩を踏み出すことはできなかった。


「……もう用ないし、帰ろっか」


キスしないとわかったからか、葉山は鞄と買い物袋を持ってすぐに立ち上がった。


その後の私たちは、どこかぎこちない空気を漂わせてエントランスまで向かった。

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