第18話 私、望月のことはちゃんと見てるから
真っ白な空間で葉山と二人きり――なんて言うと少しアレだが、今の私たちが狭い場所にいるのは間違いない。
12月のショッピングモール、私たちはゲームセンターのプリクラに入っていた。
エントランスを抜けると、久しぶりにプリクラ撮ろう、と葉山が言い出したのだ。
「撮影モードどうするー?」
葉山は楽しそうに私に聞いてくる。
今日の葉山は白のブラウスにチェックスカートという落ち着いたコーデで、いつもより少し真面目っぽく見える。しかし、彼女の顔はかなり緩んでるため、その雰囲気はだいぶ和らいでいた。
「なんでもいいよ」
「もう、ほんっと望月って……」
じゃ、ナチュラルにするからね、と唇を尖らせてパネルをタッチした。
その後はぱっぱっと操作をして、さっそく撮影が始まった。
1枚目は正面、2枚目は顔を近づける、3枚目はハートを作る、というようにポーズが指定されていく。私たちはそれに合わせて、テンポよくポーズを取った。
パシャ、パシャ、とシャッターを切る音が密室に響く。
そして最後は、自由にポーズをとるように指示された。
――キスしようかな、という考えが頭に浮かぶ。
こういうとこでするのはよくないかもしれないけど記念にはなりそう。
ちらっと葉山を見ると、私の顔を物欲しそうに眺めていた。
しても良いよ、の顔だった。
いや、したいのはそっちでしょ。
でもこういうときは、私からキスすることが多いし、私が動かないといけない。
それならと思って顔を近づけようとすると――
「……あっ」
パシャ、という音に少し遅れて葉山の声が漏れる。
――キスをする前に、シャッターが切れてしまった。
淡々と撮影が終わり、画像を加工するフェーズに入った。
「もう、するならしてよ」
「葉山からすればよかったじゃん」
「いや、私からするのは違うし」
こういうときは望月からだって、と不満そうに葉山は加工を始める。
「最後の写真、一周回ってヤバいね」
写真を指さして、葉山はからから笑う。
彼女の指先に写っていた私たちはなんというか、それっぽかった。
熱っぽい視線を絡ませて、今にもキスしそうな感じ。
妙に生々しい感じがしてそわそわしてしまう。
なんというか、写真には恋人独特の空気感みたいなのが滲んでいたのだ。
「これはこのままにしたいなぁ」
いい? と葉山が聞いてきたので、私はこくりと頷いた。
その後は印刷を終えて、表の取り出し口に2枚の型紙がコトンと落ちる。
すぐに取り出すと、盛れてる数枚と最後の1枚が印刷されていた。
その後、私たちはゲームセンター内を適当にぶらぶらしてみた。クレーンゲームもあったけれど欲しいと思うものもなく、葉山もそこまで興味を示さなかった。
なんとなく、高校時代の話に移る。
「みんなでゲームセンター行ったとき、望月って乗り気じゃなかったよねー」
メダルゲーム辺りを通り抜けた時に、葉山はおもむろに呟いた。
ぎくり、としてしまった。
「……いや、楽しかったけど」
「楽しかったかもだけど、なんか冷めてる感じだったよね」
やっても意味ないでしょ、みたいな顔をしていたらしい。
そういう雰囲気を出さないようにしていたが、葉山にはバレていたらしい。
「よく気づいたね」
「私、望月のことはちゃんと見てるから」
そういうのわかるんだよね、と言って葉山はにこりと笑みを浮かべた。
「葉山って前から私のこと好きだったんだね」
「まぁね。今も好きだけど」
そう言って葉山は、私の肩にとん、とぶつかった。
彼女の好意は周囲の喧騒に溶け込む。
そしてすぐ、葉山は私から距離を取った。
「じゃ、次はアパレルショップ行こっか」
「いいね」
そして私たちは、熱気の包まれたゲームセンターを後にした。




