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【百合】可愛い友だちに告白されたから、お試しで付き合ってみることにした。  作者: 夏野恵


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第2話 なんでもいいのー?

 葉山と付き合い始めて数週間が経った。


 恋人になったからと言って私たちの関係はそこまで変わらなかった。


 大学では他の友だちと混ざって話をするし、2人で話をするときもいつも通りだ。いきなり手を繋いだり熱っぽい視線を向けられることもなく、過ごしやすい日々を送っていた。


 正直言って、当初は葉山と付き合うことにかなり心配していた。


 でも今のところ、私たちの関係性に恋人という名前が付いただけだった。



 *



「望月ってこのあと講義ある?」


 講義が終わった直後、隣に座っていた葉山に尋ねられた。


 1年の講義の多くが必修だから、葉山と横の席に座ることが多い。

 それは恋人だからではなくって、友だちの頃からそうだった。


「ないけど」

「じゃあ一緒に帰ろー」


 いいよ、と頷いてノートパソコンを鞄の中に入れる。


 友だちに軽く挨拶してから、私たちは講義室から出た。

 学生たちで混雑している廊下を抜けて外に出る。


 しばらくは黙って歩いていると、葉山がおもむろに口を開いた。


「今日さ、望月の家に行ってもいい?」


 鞄を握り直してから、葉山に視線を向ける。


「いいけど私、18時からバイトなんだよね」

「じゃあ、それまでに出るよ」


 それなら、ということで私の家まで一緒に向かった。


 私と葉山の家はそれほど離れていない。どちらとも大学近くのアパートに住んでて、徒歩で10分程度の距離だ。


「入っていいよ」

「お邪魔しまーす」


 鍵を開けて葉山を招き入れる。


 いきなりだったので、今日は少しだけ散らかっている。

 軽く整理してから、葉山にクッションを手渡した。


 私はさっき出た課題を片付けることにする。

 講義の感想を簡単に書いてすぐに提出を済ませた。


「葉山もレポートの感想書いたほうが良いんじゃない?」

「書きたいんだけど、充電無いんだよね」

「充電すればいいじゃん」

「いいの?」


 葉山は何に気を使ってるんだろう。

 ちょっと充電するくらい、そこまで電気代はかからないだろうに。


「私の貸すから」


 延長コードで充電器を引き延ばして渡す。

 葉山はすぐに差し込んで、黄色いランプが灯いた。


「たすかるー」


 葉山は私に笑みを見せた。


 それはやっぱり友達に向ける笑顔で、恋人に向ける笑顔ではない。

 私はそれでいいんだけど、葉山は満足しているのだろうか。


「……葉山ってさ、何かしたいこととかないの?」


 レポートがある程度終わったのを確認してから、私は口を開いた。


 まだ時間は16時、バイトの準備をする時間ではない。

 もう少ししたら葉山に帰ってもらうことになるので、聞いてみることにした。


「どういう意味?」

「その、一応付き合ってるわけだし……」


 言葉を詰まらせて応えると、葉山はにやにや笑って私との距離を縮める。


 付き合うことを提案したのはあくまでも葉山から。

 だから葉山のしたいことにできるだけ応えたいと思った。


 もちろん、いきなりセックスしたいと言われても困るけれど。


「もしかして望月、ネットとかで色々調べてる?」


 ゆったりとした口調で核心を突いてきた。


 葉山と付き合うことになって、女性同士の付き合い方の記事を見るようになった。どういう関わり方をした方が良いのかとか、事前に確認した方が良いこととか。そういうのを見ると、葉山もこういうことがしたいのかなと思ったりすることがある。


 そして自分が何もできていないことに申し訳なくなったりもする。


「あくまでも世間はそうだよねって話だから、無理に合わせなくていいよ」


 私たちのペースがあるから、と葉山は付け加える。


 そうかもしれないけど、私には昔の失敗がある。


 自分たちのペースで、というのは相手に希望を押し付けているのと同じ。

 いつのまにか相手を縛っている可能性だってある。


「でも、望月が私のために考えてくれてるのは嬉しいかな」


 ありがと、と言って彼女は私の頭を軽く撫でた。


 柔らかい指で私の髪を梳く。

 人に撫でられることはそんなにないので、少し気持ちよかった。


「ていうか、望月って髪染めないの?」


 私の髪を手に取って葉山が尋ねる。


「いつか染めようとは思ってるんだけど、まだ勇気が出ないっていうか」

「望月って可愛いから、どんな色でも似合いそうだよねー」


 ありがとう、という言葉は飲み込んだ。

 今の葉山の髪色も良いよね、という言葉も飲み込んだ。


「……私のことは良いんだけどさ、葉山がしたいことってなんかないの?」

「なんでもいいのー?」


 葉山は髪から手を離し、いたずらっぽい表情を私に向けてくる。


「なんでもは無理だけど、できることなら」

「ふーん、じゃあ週末出掛けようよ」


 さらりと葉山は提案してきた。


 そのくらいは、これまで何度もしたことがある。

 高校の頃は、仲の良いグループでショッピングモールに行ったりしたし。


「いいよ」


 私が頷くと、葉山は嬉しそうに顔をほころばせる。


「じゃあ映画とか見に行く?」

「いいね」


 そんな話をしながら、私たちは出掛ける予定を決めた。


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