表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よみがえるエトワール  作者: yoshinoya ussie


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/40

第38話「見守るまなざし」

 店の準備をしながら、ひかりは、ふとみらいを見た。


 特別に何かが変わったわけじゃない。

 髪型も、メイクも、制服も、いつも通り。


 けれど、視線が、以前より少しだけ低く、穏やかになっている。

 無意識に肩の力が抜けているのが、ひかりにははっきりと分かった。


 周りを気にしすぎない、余裕。

 心の奥に沈んだ「安心」。

 それが、言葉や態度より先に、雰囲気を変える。

 みらいが笑うたびに、その落ち着きが表情にあらわれていた。


 ——あれから、うまくいってるみたいやな。

 ひかりは、心の中で小さく笑った。


 あの真面目すぎる男の顔が、自然と頭に浮かぶ。


 慎重で、余計なこと言わなくて、でも、逃げへんタイプ。

 みらいが、無理に強がる必要もないし、急かされることもない。


 そら、安心するわ。

 

 ひかりは、声をかけるタイミングを計りながら、あえて、軽く言う。


「最近な」


 みらいが振り返る。


「雰囲気、変わったで」


 一瞬、みらいの肩が小さく跳ねる。


「……そんな、分かります?」


 みらいは、少し照れながらも、どこか嬉しそうな顔で振り返った。


「分かる分かる」


 ひかりは、微笑みながら言う。


「まあ、ええ顔しとるしな」

「あとは、自分のペース、ちゃんと守りや」


「はい……ありがとうございます」


 みらいは、笑顔でうなずくと、看板を出しに、店の外に向かった。


 ひかりは、みらいの背中を見送りながら思う。


 ——大丈夫。


 この子は、流されへん。

 ちゃんと、選んで進んでる。


 それに。


 あの男も、簡単に手放すタイプやない。

 少し先を行った先輩として、ひかりは静かに、そう確信していた。



 *

 

 

 郊外の古民家。

 水着姿の朝倉ひなたが、カメラマンの指示に合わせてポーズをとっていた。


「はい、ひなたさん。視線ください」


 シャッター音が、小気味良く響く。


 今日は雑誌向けのグラビア撮影。

 順調に進む撮影を、大橋希望と瀬川翔太が遠目に見守っていた。


「ひなたさん、今日は最初から調子いいっすね」

「……やっぱ、いい感じなんですかね」


「さて、どうでしょう」


 希望は、少しだけ口角を上げて言った。


「まあ、気持ちは安定してそうですね」


 今日のカメラマンは中村ではない。

 それでも、ひなたの表情は自然だった。


 指示が出る前から視線が動き、ポーズも途切れない。

 希望は、その様子を静かに見ていた。


「はい、OKです。休憩入れましょう」


 椅子に座ってバスローブをはおり、ストローがささったペットボトルの水を飲んでいるひなた。

 希望が近くに行き、声をかけた。


「ひなたさん、今日の撮影、いいと思います」

「視線や、ポーズの流れ。指示以上の動きができていました」


「……ありがとうございます」

「久々のグラビアで、だいぶ気合はいっちゃって」


「あ……それと……」


「はい」


 ひなたは、ちょっと考えてから、話す。


「希望さん、ありがとうございます。こないだの撮影の時のこと……」

「私……あれから、一歩進めました」


「よかったです」

「後悔は、してほしくないですから」


 希望は、微笑む。


「また、不安なことがあれば、いつでも相談してください」


「はい!希望さん」


 ひなたは、深々と頭を下げた。


 休憩が終わり、撮影が再開する。


 変わらずいきいきとした表情をうかべるひなた。

 その様子を見守っている希望に、翔太が声をかける。


「ひなたさん、どうでした?」


 希望は一瞬考えてから、少し嬉しそうに言った。


「……内緒です」


「え……なるほど」


 翔太は、納得したように希望をちらりと見る。

 普段はあまり見ることがない笑顔。


 希望は、どこか安心したような表情で、ひなたを見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ