学園生活:想定内
評価ポイントを頂けるなんて夢のようです。(しかも5!
拙い文章で読みにくいところもありますが
最後までお楽しみ頂けたら幸いです。
「君たちが、あの教官に認められた生徒たちだね」
髪を書き上げながら話しかけてきた男子生徒。彼は爽やかな笑みを浮かべ、僕達に話しかけてきた。
「いえ、そんな」
「謙遜する必要はないよ。少なくとも僕たちが君たちと同じ年齢の時に褒められた記憶はないからね」
彼は何かを考えるように、アリスとキングを見ている。
「どうかしましたか」
「いや君達みたいな可憐な女性が相手とは思わなくてね。相手が凄腕だったとしても女性には本気にはなれないよ」
そんな歯の浮く様な言葉に訓練場の周りにいる女生徒から黄色い声援が上がった。うっとりとした様子で、揃いもそろって美形ぞろいの四人を見つめる大半の女生徒達。それに反し、言いしれぬ怒気を孕むのは僕達の二人のチームメイトだった。
「随分と面白いことをいってくれるじゃないか」
「もちろん、君達は本気で来てくれて構わないよ」
余計なことを言うなとばかりに、デュークは舌打ちをした。
「そうでなくちゃ、僕達や周りの人も盛り上がらないからね」
どうやら相手は、鬼教官に褒められたとはいえ、年下だと思って見下しているらしい。心のどこかで、実力は自分達の方が上だと思っている節があるのだろう。そうでなければ挑発などできないはずだから。
「キング、言っておくが本気は出すなよ」
問題なのは、その安い挑発に遠慮なく乗っかるチームメイトがいる事だ。手渡された模擬剣をぞんざいな手つきで握りしめたキングは、うっすらと笑みを浮かべている。
「おい待て、聞こえてないふりをするな」
「すまないなアリス。この勝負。負けてやるわけにはいかなくなったみたいだ」
「私は別に構わないわよ」
「だから、人の話を……」
「先鋒は前へ」
審判を務める聖騎士に呼ばれ、キングは前に出る。対戦相手と向き合うような形で立っていたキングは、手にしていた模擬剣を地面に落とした。対戦相手にしてみれば、不可解な行動でしかないが、キングは不敵な笑みを浮かべ相手を見据えている。わざと武器を落とすという突然の暴挙に、周囲からは非難の声が上がるが当の本人は微動だにしなかった。
「拾ったらどうかな」
丁寧な物腰ではあるが、あきらかに気分を害した様子の対戦相手だが、キングは気にも留めない。
「私はこのままで構わないよ」
「模擬戦とはいえ、気が緩めば大怪我に繋がるぞ」
「本気でやっていいのだろう。なら剣は邪魔だ」
審判の戒めにも耳を貸さないキングの態度に、むっとした表情を見せた聖騎士は手を高く上げた。聖騎士の動きに合わせ、キングは腰を深く落とし、矢を射るように拳を引いた。僕がデュークを肘で突っつくと、何かを悟ったように首を振った。
「はじめ!」
開始の掛け声とともに、キングは一歩大きく踏み出すと土煙が舞い上がる。まったく、あの小さな体にどれほどの力を蓄えたのだろうか。土煙を舞い上げるほどの踏み込み。それが常人離れしたものであることは一目瞭然だった。
あの瞬発力は剣聖の中でも卓越した存在だったなと、ぼんやり考えている間にもキングの拳は相手の顔を的確にとらえ、端整な顔に叩き込まんとばかりに迫っていた。拳が当たる寸前、開始の合図とともに地を蹴ったデュークが、キングを背後から羽交い絞めにしていた。
紙一重。鼻先で止められた拳は掠りもしていないだろうが、対戦相手はよろよろと後ろに下がると、しりもちを着いた。
「この勝負、彼女の負けで良いだろう」
デュークの言葉に首をかしげる対戦相手。状況は今一つ掴めていないようだった。
「彼女の負けだ。それでかまわないな」
「ああ……」
圧をかけるような言い方に、微動だに出来なかった対戦相手はようやく頷いた。キングが放つ闘気によって、訓練場が嘘のように静まりかえる。
「委員長、大胆だね君も」
「勘違いされるようなことを言うんじゃない」
「勝てた勝負をなぜ止めたのかな」
「あのまま拳が当たっていたら、どうなっていたかわからない君じゃないだろう」
キングを羽交い絞めにしたまま、僕たちの元へと戻ってきたデューク。
「大変だな」
「そう思うのなら君も少しは協力してくれないか」
僕の言葉に眉間に皺を寄せたデュークの肩を叩いたのは、次鋒であるアリスだった。
「私が全員倒していいのかな。それとも少し苦戦した方がいい?」
彼普段通りに振る舞うアリスの様子に、多少の冷静さを取り戻したデュークは、小さく頷いた。
「ああ、不自然にならない程度に頼む。……アリスはキングと比べると大人だな」
「安心してみていられる」
「おやおや。アリスも私も相手を倒すという目的に関しては一緒だろう。それなのに私だけ咎めるのかい。それにアリスの場合は安心できると、そして大人だと。随分と対応が違うじゃないか」
「ああ、その通りだ。君がいった通り目的は同じ。だが、過程がまったく異なると君もわかって言っているのだろう」
「ふぅ、わかったよ委員長。ここは君の顔に免じて、引き下がることにするよ。私の目的は達成出来たし、あとは我がリーダーに任せるよ」
未だに静まり返った訓練場を固唾を飲むように生徒は見守っていた。つまり、こちら側の圧倒的な力を見せつけることにより、相手の鼻っ柱を折るという彼女の目論見は達成されたということだ。まあ正直な話。のほほんとしたキングの顔を見る限り、どこまでが本気なのかは検討もつかないのが本音でもある。
それからの模擬戦の内容は、圧巻の一言だった。アリスが振るう見事な剣技は見るものを圧倒するほどだった。しかし魅せるために派手に剣を振るう訳でもなく、どこまでも基本に忠実な剣技だった。それは見る人によっては、あたりさわりのないように見えたかもしれないし、どこまでも単純な剣でしかないと評されるかもしれない。
しかし、この場に居るどれだけの人が理解しているのだろう。彼女が、相手の体捌きを見ることで攻撃を予測していることに。そして剣を振り下ろす場所を誘導し、相手の見せ場を演出していることに。
アリスは、相手の鼻を折らないよう、細やかな気配りを見せる演出をずっと続けているのだ。
「見事だな」
「ああ。綺麗なものだね」
硬質な音が一際高く響くと、剣が宙を舞い、地面へと突き刺さった。
「そこまで!」
「これで二人勝ち抜けか、あの聖騎士殿も今頃は慌てるころじゃないかな」
相手が控える訓練場の一角に目をやると、今しがたアリスに負けた二人が、男に大声で怒鳴られている最中だった。模擬戦前に見せた爽やかな笑顔は崩れ、余裕のある流暢な喋り方には程遠かった。
「女に負けやがって、恥ずかしくないのか」
女という言葉をやけに強調しながら先鋒と次鋒を煽り続ける副将。意図しているかは不明だが、その何気のない一言はアリスに火をつけた気がしてならなかった。
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