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幕間:ナインの行方

 ナインは行く当てもなく街を歩いていた。ふと横を見てみたが、いつも慰めてくれる友人はいない。今頃何をしているのか。歩きながら、そんな事ばかり考えていた。

--試してみれば?

 あの時のアラタの顔を思いだすと自然に体が震えてくる。気の置けない友人でありながら、時折見せる冷酷さ。そのギャップがナインを混乱させていた。戦友であり、苦楽を共にした仲間であることは間違いない。だが、戦いの最中に見せる冷静さ。それは敵だけはなく、味方にも向けられるものだと改めて実感してしまった。


「容赦ねえな」


 いつもの癖で頭をぼりぼりと掻いていた手が、突然何者かに掴まれた。ナインが振り返ると黙っていれば美人に見える姉妹が立っていた。


「こんなところでなにしているのでしょうか」


 アサギとルリはナインの腕を抱きかかえ、体を寄り添わせた。


「おまえらがもう少し、大人ならな」


 寂しさに押しつぶされそうだったナインの強がりを姉妹は笑わなかった。


「泣きそうな顔で強がらなくてもいいのに。素直に追いかけてくれて嬉しいっていいなさよ」

「ほら、ぶらぶらしてないで早く宿に帰りましょう。さっきアリスとトレイに会いました。その流れで、久しぶりにご飯でも食べようって話になったので、貴方の事を誘いに来ました」


 アリスとトレイの名前が出た瞬間、ナインは踏み出そうとした足を止めた。


「え、ちょっと待って。それって俺が説教されるパターンじゃない」


 姉妹はナインの疑問に答えなかった。沈黙が続く恐怖に、ナインは腕を振りほどこうとするが、姉妹に捕まれた腕はびくともしなかった。


「いたた、痛い。姉妹ちゃん、腕が結構痛いので優しくしてくれると助かる。ちょ、絞まってる、絞まってるって! 子供なのに何なのその力!」


 ナインの抗議の声もむなしく、彼は引きずられるように宿屋の前まで連れて来られてしまった。全てを諦め、宿の中に入ろうとした時、ナインの服を引っ張る少女の姿があった。服を引っ張ったのは、アサギとルリと同い年くらいの少女だった。


「先に入っているから、ちゃんと来なさいよ」


 姉妹は逃げ出さないようにナインに釘をさすと宿の中へと消えていった。裾を引っ張った少女の顔には見覚えがあった。淫魔に憑りつかれていた少女だ。


「あの」


少女から手渡された紙には、見覚えのない住所が書かれていた。


「さっき助けてもらってお礼がしたいの。お店、もうすこしで閉まっちゃうから。その前に必ず来てね」


 伝えたいことだけを伝えた少女は、恥ずかしそうに頬を染めながら去っていった。少女の背を見送ったナインは宿の窓に目をやった。宿の中では、見慣れた顔ぶれが楽しそうにくつろいでいる。

 ナインの姿に気が付いたアラタが手を振り、キングはこちらに来いと言わんばかりに手招きをしていた。

見慣れた顔ぶれに、ナインは自然と笑みをこぼしていた。寂しさを吹き飛ばしてくれるような温かさを感じたナイン。

 彼は迷うことなく、全速力で走り出した。待っていると言ってくれた彼女の元へと。


「ちょっと、アンタ本当に馬鹿なんじゃないの」


 窓から勢いよく身を乗り出したルリは、本気でキレていた。


「泣きそうな顔をしていたから親切にしてあげたというのに。なんて人ですか、まったく」


アサギもルリと同様に、怒りを隠すことなくナインにぶつけている。


「何十回、何百回と食事してきた奴らと過ごす事より、初めての出会いを大切して何が悪い! いい加減、お前らの顔は見飽きたぜ!」


 己の煩悩に忠実となったナインは、欲望に命じられるまま走り出した。なりふり構わぬ本気の走りを見せるまでは良かった。しかし、それを上回る速さで宿から飛び出してきたトレイによって呆気なく捕まり、宿に滞在している剣聖総出で説教されることとなった。

PVが段々と増えてきていて嬉しい限りです。

残りおおよそ六万字程度ですが、最後までお付き合いくださいませ。


ご覧いただき有難うございました。

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