夜会話:エリカ②
宿屋に戻り、事の顛末をアリス達に報告すると突然エイトが僕の服をめくった。丹念に触診したのち、豪快に笑うと「無傷だな」と言っていた。エイトは自分の目で見るまでは信じ難かったみたいだ。
姉妹は自分達の言う事を信じなかったエイトに突っかかっていた。あの怖いもの知らずの性格は僕も見習いたい。
騒がしい彼らをおいて、僕とエリカは二階のテラス席に腰を下ろした。
「今まで隠していたの?」
「違うよ。そういう訳じゃないの。でも、そう思われても仕方ないよね」
予想はしていたけど、やはり彼女は自分が持つ力について触れてほしくはないようだ。
「治癒の力は、聖女にしか扱えない力だって聞いたことあるけど」
「うん、そうだよ。私も何でそんな力が自分の中にあるのか、未だに不思議でしょうがないよ」
エリカは悲しそうに眼を伏せた。
「私は元聖女って言ったらアラタ君は、どうする」
「そうだな。もし本当にエリカが聖女なら少しイメージとかけ離れているかも。ねえ……いふぁいよ」
「アラタ君が余計な事言うからでしょうが」
エリカは僕の頬を引っ張り、怒った顔をしていたが、段々と頬を引っ張る力が弱まってきた。
「複雑な事情はさておき、エリカが僕の傷をなおしてくれた。そうだよね」
他の事はともかく、それだけは確認しておきたいことだった。エリカから目を反らさない僕に根負けした彼女は、諦めたように頷いた。
「ありがとう」
「……え?」
「ん?」
「それだけなの?」
「それ以外何を言えと、お金?」
違うわよ、といいながら彼女は叩く素振りをして見せた。
「昔、さっきみたいな状況で傷を治したことがあるの。私の力を目にした途端、皆の私を見る目の色が変わった。利用しようとするもの、奇跡の力にあやかろうとするもの沢山の人を見てきた。正直、どれも良い気分にはならなかった。きっと、その時から私は只の女の子じゃなくなったのかな」
彼女の過去。それをエリカが自ら話してくれるのはとても珍しい事だった。
「アラタ君はどうなの、私を見る目が変わったりするのかしら」
「いや、特に何も考えてないよ」
エリカはいきなり吹き出し、笑い始めた。僕の答えが、彼女が求めていた答えだったのかどうかは分からないが、彼女はとても嬉しそうに笑っていた。本当なら色々と聞きたいことがあったけど、あの笑顔を見ていたら聞けそうにない.
……まぁ、いいか。




