街中魔窟:シズクと共に
二人と別れ、シズクとの待ち合わせ場所である校門の前へと急いだ。時折、目にする自警団とは目を合わせないようにする。ようやく校門に着いたが、シズクの姿はまだ見当たらなかった。その場でしばらく待っていると、シズクは今朝見た友人と共に校舎から姿を現した。
「シズク」
彼女に声をかけると、嬉しそうにこちらへとかけてきた。
「アラタお兄ちゃん、お待たせ」
「おかえりシズク。約束通り彼女も一緒だよ」
シズクの隣に居た少女は、シズクの体に隠れるように僕の顔をちらちらを見ていた。
「君はシズクの友達かな、僕はアラタ。彼女の宿にお世話になっている旅人です」
「カオリです」
「よかったらカオリも一緒に遊びに行かない」
シズクの誘いに、カオリはしばらく頭を悩ませていたが、首を横に振った。
「最近、お母さんがあまり外に出ないでって言うから、また今度ね」
「そっか、じゃあ途中まで帰ろうよ」
「あ、シズク。そんなに速く走らないで」
シズクはカオリの手を引っ張る様に走り出す。カオリは困った声を出しながら、シズクと一緒に駆けていった。
「アラタお兄ちゃんが鬼だよ。私達を早くつかまえてみて」
振り返ったシズクは、笑いながら手を振っている。その様子を見ていたカオリも、僕に向かって遠慮がちに手を振った。いつの間にか始まったオニゴッコはカオリと別れるまで続いた。
シズクに案内された場所は街の傍にある川だった。彼女の言葉どおり人の姿はほとんど見えない。仮に出会ったとしても、あたりに生い茂った草木が良い目くらましになってくれるだろう。
「ここはお父さんと釣りに来る場所なんだ」
「シズクちゃんも釣りをするの」
「んー、餌とか気持ち悪いからあまりしたくないけど、行かないっていうとお父さん悲しそうな顔するから」
お父さん……。
エリカは川の傍に座り、手で水を掬っている。
「水が好きなの?」
「そういうわけじゃないけど」
「里に居た時も、同じようなことをしていたから」
「そういえば、そうだったね。こうしてぼうっとしていると、なんだか気分が落ち着いてくるの。深く息を吸うと草木の香りって言えばいいのかな。それが体に染み込んでくるような気がして、なんか楽しくなってきちゃう」
「だからって、水を掛けたりするのは駄目だからね」
すると彼女は残念そうな顔をして、手のひらから水をこぼした。やる気だったのか。
「むー、駄目なの」
いつの間にかエリカの隣に腰を下ろしていたシズクも、エリカと同じように手のひらから水をこぼした。君もか。耳をすませば聞こえてくる水のせせらぎと時折聞こえる鳥の声が、里の風景を思い出させてくれた。
「ねえーアラタ君」
「なに?」
「今考えていること当ててあげようか」
エリカは意地悪そうな顔を僕に向けた。
「一杯やりたい」
「正解」
そんなに分かりやすい顔をしていたのかと、確かめるようについ自分の頬を触ってしまった。それを見ていたエリカは、心底楽しそうに微笑んでいた。
「そういえば、アラタお兄ちゃんとエリカお姉ちゃん、昨日テラスでお酒飲んでいたよね」
エリカに抱きかかえられるように座っていたシズクが、好奇心に満ちた目で僕を見つめてくる。
「うん、前からちょこちょことね」
「二人でお酒飲むなんて、なんか大人の趣味って感じする」
「そんなことないと思うけど。そういえば、テラスの照明の色がピンクなのではなんで?」
エリカと同じことを僕も考えていた。あれのせいで、落ち着いてのむことが出来ず、昨日は早々に切り上げてしまった。正直、いかがわしい店の雰囲気を醸し出しているうえに、好奇な目で見上げている視線が気になって仕方がないのだ。
「あれは、お父さんがこうした方が盛り上がるからって」
本当に余計なことしかしないな、この子の父親は。
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