街中魔窟:自警団2
お陰さまで1000PV越えました。
手にとって頂いた方に感謝を。
「済まないが、盗ったものを返してもらえるかな」
とげのある言い方だったが、二人は特に気にすることもなく、投げ返した。
「いろいろと済まなかったね。こいつらには後で厳しく言い聞かせておくよ」
手渡された警棒を仕舞う二人の顔を見る限り反省の色は見られなかった。
「自己紹介がまだだったね。俺は自警団のリーダーをしているカイトだ。よろしく頼む」
カイトはあくまでも表面上は友好的に振舞ってくれるらしい。
「さて、君には悪いが少し話しをしたい」
時折相手がちらつかせる悪意は、この際気にしないことにする。
「断る」
そして関りももたいないことにする。
「残念だな。僕はそれでも構わないが、見ての通り自警団は血の気の多くてね。僕の目が届かないところではなにをするかわからないんだ」
「それって強迫?」
「とんでもない。出来る限りそうならないよう努めるし、避けたいのが本音だが。全ては君次第だ」
身振り手振りを交えながら、演説のように良く喋る男だった。
この言葉は僕に向けてではなく、聞き耳を立てている人ごみに投げかけているのだろう。
「まあ逃げるというならそれでも構わないさ。そのことは自警団全員に言いふらすがね」
取り合おうとしない僕の考えを見透かしたように、カイトは挑発的な言葉を繰り返す。
「まあ怖気づいてしまっても仕方はないが、気が変わったのなら自警団の詰め所においでよ。話だけは聞いてあげよう」
自分が言いたいことだけを伝えたカイトは高笑いをしながら人ごみを押しのけるようにして去っていく。残っていた二人も僕を蔑むようににやりと笑い、カイトの後を追うようにこの場から消え去った。
「さて、これからどうしようか」
「とりあえず昼飯でも食うか」
「さ、賛成です」
トレイとセブンは今までのやりとりを気にする様子もなく、いつも通りに接してくれている。ただ、エリカだけは上手に気持ちを切り替えることが出来ない様子だった。
「ねえエリカ。顔が怖い」
「そんな事より、アラタ君。あそこ迄言われて黙っているつもり」
いつになく好戦的な彼女の目が少し怖い。このまま放っておくと一人で詰め所に押し掛ける勢いである。
「色々言いたいこともあるかもしれないけど、まずはご飯食べようよ」
「でも!」
「早く」
彼女の手を引っ張り、食事処が立ち並ぶ通りへと走る。本音を言わせてもらえば、こんなことに時間を割かれるよりも、何を食べるか悩むエリカを見ている方がずっと有意義な時間の使い方である。もちろん彼女には言えないが。
「ね、ねえ、トレイ。賭けをしませんか」
「行かないに晩飯をかける」
「ず、ずるいですよ。まだ何も言っていないじゃないですか」
「賭けにならねぇって言ってんだよ。どっちを選ぶかなんて、剣聖全員に聞いても同じ答えが返ってくるぞ」
「た、確かに。んふ、ふふ」
セブンは、何かを思い出したかのように笑い出した。
「アラタに、そういう意地だとかプライドとか欠片ももっちゃいねえからな。剣聖だからどうとか、馬鹿にされたから、こうしなきゃならないなんて考え方はあいつにはねえよ」
「ト、トレイにはありますか?」
「……まあ俺も色々あるけどな。アラタを見ていると、そういうものに縛られているのが馬鹿らしくなるっつうか」
「わ、わかります。アラタって私やサイスの話し方を一度も馬鹿にしたりしないです。それどころか一生懸命聞いて、話してくれます」
「あいつは、いい意味でも悪い意味でも人付き合いは平等だからな。まあそういう訳で、この件はアラタに任せようぜ、あいつが喧嘩を買わねえのに俺たちがごちゃごちゃしても喜んではくれないだろ」
「ど、同感です」
二人を呼ぶ声が聞こえ、そちらに顔を向けると手を振るアラタの姿があった。どうやら昼食のメニューが決まったらしい。
「ありゃ、絶対行かねえな」
「そ、それどころか、もう彼らの顔すら忘れたんじゃないですか」
恐らくランチのメニューで頭がいっぱいになっているであろうアラタの元に二人は駆け出した。
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