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夜会話:エリカ

「今日はお疲れ様」


夜、宿屋の二階にあるテラスで佇んでいると急にエリカが労いの言葉をかけてきた。


「急にどうしたの」


 今まで一緒にいたのにそんなことを急に言われるとびっくりしてしまう。


「今日は私、何もできなかったなって」

「違うよ、何もしないように御願いしたのは僕の方だ。気にしないでよ。ちなみにだけど、エリカが相手をしていたらどうだった」

「一瞬ね」


 エリカは躊躇わずに答えた。自慢げに胸を張っているが、あの力は洞窟の壁も容易に破壊できることは想定しているのか気になるところでもある。


「でも本当にこのままでいいの。皆に私の力の事を隠していて苦しくならない」

「そうだね。きっと、いつかはバレるけど、そのときまではこのままいいかな。その時がきたら……一緒に怒られて」

「一蓮托生ってやつよね。それ」

「多分それ。ところで他のみんなは?」

「エイト君は、シズクちゃんの話を聞いて。お父さんに説教するって意気込んでいたよ」

「それは、そうなるね。エイトの性格なら間違いなく」


 宿屋に到着した後、色々と話を聞いてみると、シズクのお母さんが魔に憑りつかれた原因は、竜の咆哮ではなく、心身の喪失にあった。お母さん曰く、夫は真面目に見えるが楽に金を稼ごうとする質があり、過去に何度も悩まされていたが、金の為に犯罪行為に手を染めると宣言したのが、決定打となったようだ。

床に臥せた原因が旦那さんであるとわかれば、エイトの行動もわかないものではない。

 そういえば、下山の時に出くわした山賊も似たようなことを言っていた気がする。


「ケイトとサイスは?」

「のんびりと二人で話していたよ。という訳で私達も」


 そういってエリカが差し出してくれたのは、いつもの徳利と二つのお猪口だった。


「今日はありがとう。私の事を守ってくれて。前は人を守ってばかりだったから、人の背中を見守る立場になるのは、なんだか新鮮だったな」


 きっと生前の記憶なのだろう。エリカはどこか遠い目をしながら街並みを眺めていた。


「でもアラタが危険な目に合うようなら本気出すからね」

「そうならないように頑張ります」


 互いのお猪口を軽く合わせると、耳鳴りの良い音が響いた。

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