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誠の乙女!黄泉がえりの局長は新選組の結成を全力で阻止する  作者: 二コ・タケナカ
第一章 「イサミ」

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1-9 「ツネはワシの女だ!」

「……なんだ?」

こちらの問いかけに、ツネはなかなか話しだそうとしない。ワシの方も、それ以上追及して言葉を促すことはしなかった。今、何か軽々しく口を開けば、全てを否定してしまいそうだった。それよりは、いっその事ツネの方から真意を語ってもらった方が、キッパリ諦めがつくのではないか?そんな自虐的な思いが頭を巡る。


お互い押し黙った所へ、不意に声が聞こえた。

「ごめんくださいまし」

戸をあけ放っていた道場から見える庭先、母屋の玄関前に一人の男が大きな木箱の荷物を背負い立っている。紛れもなく、それは土方歳三であった。


トシの顔を認めた途端、ツネの顔がほころんだ。

「あっ、薬屋さん」

手を振って呼びかけている。ワシは呆然と立ち尽くした……

トシの方も、あの女好きのする顔に笑みを浮かべ、ツネの側にやってくる。そして、親し気に言葉を交わし始めた。

「私の実家は直ぐに分かりました?」

「ええ、先刻寄らせていただきました。おツネさんがこちらにいらっしゃると聞いて、帰る前にご挨拶をと思いまして」

「そんな、わざわざ気を遣ってくださらなくともよかったのに」

(……なんじゃと?トシの奴、ツネの実家に挨拶に行ったのか⁉)


ドカン!と、頭のてっぺんまで一気に血が上った。理性も、身を引くという決心も、すべてが焼き尽くされて消え去る。この怒りこそ、ワシの結論!ツネはワシの女だ!新選組がなんだ!たとえ、盟友であろうと!ここで生涯たもとを別つことになろうとも!もうこの激情は止められぬ!


「おいっ!ツネに何をした!」

怒鳴り声を上げて飛び出したワシを見て、二人は目を丸くして硬直した。

「……なに、とは?」

「とぼけるな!隠れてコソコソと!」

「いえ、いえ、お嬢さんは何か勘違いをなさっておいでだ」


怒りで視界が真っ赤に染まったワシは、持っていた竹刀をトシへ向かって投げつけた。

「言い訳は無用!取れ!決闘だ!」

だが、トシは苦笑いを浮かべ、穏やかに首を振った。

「ご勘弁ください。私はただの薬売り、お侍ではありません。剣を握った事もございませんから」

丁寧に頭を下げてから、立ち去ろうとするその背中へ、ワシは奴が一番嫌う言葉を投げかけた。

「逃げるのか?」

ピタリとその足が止まる。


振り返ったその顔に、先ほどまでの笑みは綺麗に消えていた。

「何だって言うです……ええ!」

背負っていた木箱を雑に地面へ放り出し、転がっていた竹刀を乱暴に拾い上げると、草鞋(ぞうり)を履いたままドカドカと道場へと上がってきた。ワシも新たに竹刀を取り構える。

「私が何をしたって言うんです?侍はいつもこうだ!農民だからって見下しやがって!」

その顔は、鬼の副長と呼ばれたあの頃を彷彿させる。トシは、怒りに任せたままズカズカと間合いを詰め、いきなり竹刀を振り下ろした。

ワシはそれを受けて、流し、そのままがら空きとなった胴を絶った!


バスッ!


お互いこれで終わるはずも無し!ワシはすぐさま距離を取り、正眼に構えた。そして渾身の気を飛ばす!

「来いっ!!」

更に激高したトシは、なんと竹刀の両端をガッチリ掴むと、それを盾に突っ込んできた。剣術など関係ない突進に、さすがのワシもさばききれず、吹っ飛んだ。おなごの体はなんと軽い事か。壁まで飛ばされ、ものすごい勢いで激突した。


バ――ンッ!!


衝撃に一瞬呼吸が止まったが、空気の塊を吐き出し立ち上がる。まだ辞めるつもりなど毛頭ない。竹刀を構えて改めて気合を飛ばそうとした、その瞬間――ツネの悲鳴の様な叫びが道場に響き渡った。

「やめて――っ!!」


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