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現世で搾取され続けたスピ子さん、異世界では大聖女様になるようです~「ありがとう」と1000回唱えた水が、神代のエリクサーとして認定されました~  作者: ぽてと
【第三章】 科学の帝国と低波動カルトの襲来編

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第30話 ツインレイ認定と宇宙銀行の小切手~運命の魂の片割れに無限の愛を!~

神聖エリュシオン王国の首都。

空を覆い尽くすほどの巨体を持つ『絶望の魔神』は、ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら、王都の上空で完全に途方に暮れていた。


『ハァ……ハァ……ナ、ナゼダ……。我ガ放ツ万物ヲ滅ボス呪イガ、コトゴトク……靴ヒモヤ、クシャミヤ、ハトノ群レニ阻マレルトハ……!』

魔神のプライドはズタズタだった。

いかなる神聖魔法も通じない彼にとって、「偶然(ギャグ)」という最強の物理法則で無効化されることは、恐怖すら覚える未知の事象であった。


魔神は血走った巨大な眼球で、地上で暢気に手を振っている一人の少女――珠子を、ギリギリと憎悪を込めて睨みつけた。


「ああっ……! 魔神が、さらに恐ろしい殺気を珠子様に……!」

ルミナが震えながら両手を組む。


しかし、その「極限の殺意」と「穴が開くほどの凝視」を向けられた珠子の反応は、斜め上どころか次元の彼方へと突き抜けていた。


「ねえ、アディちゃん」

珠子は頬をポッと赤らめ、両手を胸の前で組んでモジモジし始めた。

「あの子……さっきからずっと、私のこと見つめてるよね? すっごい熱い視線……! なんだか、魂の奥底から懐かしい波動を感じるの!」


「……は? 何を言っている、あれは純度一〇〇パーセントの純粋な殺意だぞ!」

アディがツッコミを入れるが、珠子の耳には届かない。


「間違いない……! あの子、私の『ツインレイ』だ!!」

「ついん……れい……?」


「そう! ツインレイっていうのはね、元々は一つだった魂が、宇宙に生まれる時に二つに分かれた『運命の魂の片割れ』のことなの! だから初対面なのに強烈に惹かれ合うし、試練(攻撃)を乗り越えることで、二人の魂は統合(アセンション)に向かうんだよ!」


(……出た。この女の、現実を強制的に捻じ曲げる『超・ご都合主義的スピリチュアル解釈』……!!)

アディは胃を抱えた。

対象が放つ「世界を滅ぼすほどの憎悪と殺意」を、珠子は「初対面なのに強烈に惹かれ合っている(運命の恋)」として脳内変換してしまったのだ。


「私、あの子に愛の波動を届けてくる! シリウス、お願い!」

『ニャァァァン!!』


神獣シリウスがその背に珠子を乗せ、凄まじい跳躍力で空へと舞い上がった。

そして、空中に浮かぶ巨大な絶望の魔神の顔の真正面、その巨大な鼻の先にピタリと静止した。


『キ、キサマァッ!! ヨクモ我ヲコケニシテクレタナ! 今度コソ、ソノ魂ゴト喰ライ尽クシテ――』

魔神が巨大な顎を開き、珠子を丸呑みにしようとした、その瞬間。


「やっと会えたね、私のツインレイ(魂の片割れ)!」

珠子が、満面の笑みで魔神の両目を見つめ返した。


――ドクンッ!!!!


星の因果律が、宇宙の法則(ワンネス)によって強制的に書き換えられた音がした。


『……エ?』

魔神の動きが、ピタリと止まった。


珠子から放たれる『一切の疑いを持たない無条件の愛(全肯定の波動)』を真正面から浴びた魔神の心臓――いや、数万年分の怨念で固まっていた精神の核が、ドクドクと、まるで思春期の少年のように激しく高鳴り始めたのだ。


『な、ナンダ……我ノ、コノ胸ノ高鳴リハ……。コノ小娘ヲ見ルダケデ、呪イノ力ガ抜ケテ……ア、アレ……?』

魔神の顔を覆っていた漆黒の瘴気が、みるみるうちに『薄ピンク色』へと変わっていく。

さらに、あれほど世界を絶望させていた巨大な六枚の翼が、「パタパタ……」と、なんだか落ち着きなく、照れ隠しのように小さく羽ばたき始めたのだ。


「こ、これは……」

地上で見ていたアディは、完全に白目を剥きそうになっていた。

(対象の魂の因果を『運命の伴侶』として強制的に縛り付ける、神話級の『絶対魅了(アルティメット・チャーム)』の永続デバフ……!! 世界を滅ぼす魔神が、ただの『恋する乙女(物理)』にされてしまっただと!?)


「よしよし、何万年も一人で寂しかったんだね。カルマ(怨念)がいっぱい溜まっちゃってるよ。でも安心して! 私が、宇宙からの愛をチャージしてあげる!」


珠子はリュックの中から、現世の文房具屋で買った『ピンク色のかわいいメモ帳』と『ラメ入りのペン』を取り出した。


「な、何をするつもりだ珠子!」

「『宇宙銀行の小切手』を書くの!」


「うちゅう……ぎんこう……?」

「そう! 宇宙には無限の豊かさ(エネルギー)を貯蔵している見えない銀行があるの! ピンク色の紙に、『宛名』と『受け取りたいエネルギー』を書いて宣言すれば、宇宙が必ずそれを振り込んでくれるんだよ!」


珠子は空中で、サラサラとラメ入りのペンで文字を書き込んだ。

そこには、達筆な日本語でこう書かれていた。


【宇宙銀行 御中】

宛先:魔神くん

金額:愛と光のエネルギー(無制限)

期限:今すぐ!


「よし、書けた! これでお支払い完了っ!」

珠子は、シリウスの背中から身を乗り出し、そのピンク色のメモ用紙(小切手)を、ペタンッ!と、巨大な魔神の額のど真ん中に貼り付けた。


『……ハ?』

魔神が、寄り目になって額のピンク色の紙を見た、次の瞬間である。


――カッ!!!!!!


魔神の額に貼られた小切手を起点として、星の――いや、宇宙全体の『絶対的な浄化の波動(無限の愛と光)』が、物理的な激流となって魔神の体内に直接叩き込まれたのだ。


『ア……アアアアアアアッ!!!!』

魔神の口から、絶叫が上がった。

それは苦痛の声ではない。数万年分の汚れ(カルマ)を、滝行のような強烈なマイナスイオンで強制的に洗い流される、「凄まじく痛気持ちいい」デトックスの悲鳴であった。


絶望の化身は今、一人のスピリチュアル女子の「小切手」によって、宇宙規模の強制浄化(アセンション)の渦へと飲み込まれようとしていた!

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