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現世で搾取され続けたスピ子さん、異世界では大聖女様になるようです~「ありがとう」と1000回唱えた水が、神代のエリクサーとして認定されました~  作者: ぽてと
【第二章】 聖王国の権威と王都進出編

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第21話 エプソムソルトの奇跡~経皮吸収で王家の呪いをデトックス!~

『異世界スピリチュアル・サロン:コスミック・ワン』のホールにて、国家の根幹を揺るがす重大な秘密が明かされていた。


「私と、父である国王陛下は、数百年前に魔王から受けた『血の呪詛』により、命の危機に瀕しているのです……!」

神聖エリュシオン王国の第一王女、ルミナ・フォン・エリュシオン。

彼女の悲痛な告白に対し、珠子は腕を組んで深く頷き、そしてとんでもない診断を下した。


「あー、それね! 完全に『マグネシウム不足』だよ!!」


「……まぐね……しうむ……?」

ルミナはポカンと口を開け、アディは盛大に天を仰いだ。


「そう! 足がつりやすかったり、まぶたがピクピクしたり、慢性的な疲労感が抜けないのは、典型的なミネラル不足! 特にマグネシウムが足りてないサインだよ!」

珠子は現世の健康番組で得た知識をフル回転させて熱弁を振るう。


「呪いとかネガティブなストレスを受けると、体の中のミネラルってどんどん消費されちゃうの。マグネシウムが足りなくなると、筋肉がこわばって血流も悪くなるし、エネルギーも作れなくなるから、そりゃあ体もダルくなるよね!」

「み、みねらる……? それが、魔王の呪いの正体だというのですか……!?」


「まあ細かいことは気にしないで! とにかく、そういう時はサプリで飲むより、お風呂に入れて皮膚から直接取り込む『経皮吸収』が一番効率がいいんだから! ルミナちゃん、ちょっとお風呂場に行こう!」


珠子はルミナの腕を引っ張り、サロンの奥にある豪奢な浴室へと連行していった。

残されたアディは、嫌な予感しかしない胃をさすりながらその後を追う。


浴室には、サロンの風水リフォームの際に珠子が引き寄せた、真っ白な大理石のバスタブが鎮座していた。すでにたっぷりとお湯が張られ、湯気が立ち込めている。


「よーし、ここでとっておきのデトックス・アイテムの出番だね!」

珠子はリュックの中から、現世のネット通販で大量買いしておいた、無地の巨大なビニール袋を取り出した。中には、真っ白な塩のような結晶がたっぷりと詰まっている。


「これは『エプソムソルト(硫酸マグネシウム)』! 名前にソルトってついてるけど塩じゃなくて、純粋なマグネシウムの結晶なの。これをたっぷりお湯に溶かすと、体の芯から温まって、汗と一緒に悪いもの(呪い)がぜーんぶ外に出ていくんだから!」


珠子はドバドバと、惜しげもなくエプソムソルトをお湯の中に投入し、かき混ぜ始めた。

その瞬間、ただの温水だったはずのお湯が、微かに青白い神聖な光を帯び始めた。


(……出た。まただ)

脱衣所でそれを見ていたアディは、壁に手をついて震え上がった。


(あの真っ白な結晶……。触れた瞬間に空間の魔力濃度を跳ね上げる、純度一〇〇パーセントの『抗魔導霊力結晶』ではないか……! それを、煮えたぎる湯の中に限界まで飽和溶解させるだと!?)


アディの高度な魔術知識が、珠子の「入浴剤」を恐るべき理論へと翻訳していく。

(対象の全身の毛穴を開かせ、表皮から直接、高濃度の解呪成分を魔力回路に叩き込む『経皮吸収オーバーライド・インジェクション』……! 血脈に深く刻まれた数百年の呪いすらも、浸透圧の違いで体外へ強制排出させる、伝説の『絶対解呪の霊泉ホーリー・バス』を、ただの風呂桶で作り出したというのか……!!)


「はい、準備オッケー! ルミナちゃん、服を脱いで肩までしっかり浸かってね! 二十分くらい入ると、汗がドバドバ出てスッキリするから!」

「は、はい……! 失礼いたします……!」


ルミナは緊張しながら衣服を脱ぎ、珠子に言われるがまま、青白く光るお湯の中へと身を沈めた。


「ああっ……!」

お湯に浸かった瞬間、ルミナの口から甘い吐息が漏れた。

熱すぎず、ぬるすぎない絶妙な温度。しかし、彼女の体内では劇的な変化が起きていた。


ルミナの真っ白な肌の奥深く――心臓から血管に沿って、赤黒い痣のような『魔王の呪縛』の術式が浮かび上がってきた。それは彼女が生まれた時から刻まれている、王族の命を削る死の紋章である。

しかし、エプソムソルトが溶け込んだお湯がその痣に触れた瞬間。


「ジュウゥゥゥゥ……ッ!!」

まるで熱した鉄板に氷を押し当てたかのように、強固な呪いの術式がボロボロと音を立てて崩壊し、お湯の中へと溶け出し始めたのだ。


「こ、これは……!? 私の体から、黒い泥のようなものが……!」

「あー、すっごい老廃物(呪い)が出てるね! いいよいいよ、そのまま毛穴から全部デトックスしちゃおう! マグネシウムがしっかり浸透して、細胞が喜んでる証拠だよ!」


珠子は浴室の椅子に座り、のんきに鼻歌を歌いながら湯かき棒でお湯を混ぜている。


二十分後。

「ふぅ~、お風呂上がりはやっぱりこれだよね!」

バスタオルを巻いて脱衣所に出てきたルミナに、珠子が冷えたガラス瓶を手渡した。中には、現世の銭湯の定番『フルーツ牛乳』が入っている。


「フルーツ……牛乳……?」

「腰に手を当てて、一気に飲むのが作法だよ!」

「こ、こうですわね……コクッ、コクッ……プハァッ!!」


ルミナは言われた通りに腰に手を当ててフルーツ牛乳を一気飲みし、至福の溜息を吐いた。

その瞬間、彼女の全身から、王城そのものを吹き飛ばしかねないほどの、圧倒的で清浄な魔力がドーム状に爆発した。


「な、なんだこの尋常ではない魔力は……!?」

アディが思わず防御態勢をとるが、その魔力に攻撃性はなく、ただただ温かく澄み切っていた。


ルミナ自身の姿も劇的に変化していた。

呪いによって青白く疲労していた顔色は、ほんのりと桜色に染まり、肌はゆで卵のようにツルツル、ピカピカに輝いている。パサついていた髪は天使の輪ができるほど潤い、何よりも彼女の瞳には、全盛期以上の生命力が満ち溢れていた。


「信じられません……。私の体を蝕んでいた魔王の呪いが、欠片すら残さず消え去りました……! それどころか、魔力が泉のように湧き上がってきます! お肌も、見たことがないほどツヤツヤに……!」

ルミナは鏡に映る自分の姿を見て、ボロボロと感動の涙を流した。


「エプソムソルトのおかげで血行が良くなって、お肌のターンオーバーが正常化したんだね! やっぱりミネラルは大事!」

珠子はウンウンと満足げに頷く。


ルミナはバスタオルのまま、珠子の前に深々とひざまずいた。

「珠子様……いえ、真の大聖女様!! あなた様は、この世界の希望です! どうか、どうかお願いです! 王都へいらしてください! そして、ベッドから一歩も動けなくなっている私の父、国王陛下をお救いください!!」


「えっ、王都!? 王都って、すごく大きくて賑やかな街だよね!?」

珠子の目が、キラーンとドル袋の形になった。


「もちろん、王家の権威にかけて、最高の厚遇をお約束いたします! 報酬も、王室の金庫からいくらでも……!」

「行く行く! 絶対行く! 王都にサロンの二号店を出す大チャンスじゃん! 引き寄せの法則、キタコレ!!」

珠子はガッツポーズをして飛び跳ねた。


かくして、辺境の街の小さなサロンは、王族からの公式な招待状を受け取ることとなった。

アディは胃薬代わりのハーブティーを飲み干し、国家の最高権力の中枢すらもトンデモ・スピリチュアルで蹂躙しに行くという、恐ろしい未来に腹を括るのだった。

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