表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現世で搾取され続けたスピ子さん、異世界では大聖女様になるようです~「ありがとう」と1000回唱えた水が、神代のエリクサーとして認定されました~  作者: ぽてと
【第二章】 聖王国の権威と王都進出編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/26

第20話 戦略級マナ浄化フィルター~マイナスイオンで死の瘴気をデトックス!~

隣接する『静寂の森』から発生した致死の高濃度瘴気が、防壁を越えて街を飲み込もうとした、まさにその時。

『異世界スピリチュアル・サロン:コスミック・ワン』の窓辺に置かれた手のひらサイズのピラミッド型オブジェクト――珠子がたった今手作りしたばかりの『オルゴナイト』が、太陽そのもののような強烈な黄金色の光を放ち始めた。


「ひぃぃっ! あ、光に包まれて……私、死ぬんですの……!?」

ルミナはベッドの上でガタガタと震え、両手で顔を覆った。


しかし、彼女を包み込んだのは、死の苦痛でも、魂を削るような呪いの冷たさでもなかった。

それは、まるで春の陽だまりのような、どこまでも優しく、そして圧倒的な『癒やしの波動』だったのだ。


――ゴォォォォォォッ!!


突如、洋館の周囲に凄まじい乱気流が発生した。

防壁を乗り越え、街の建物を腐食させながら進んできていた赤黒い瘴気の津波が、まるで巨大な掃除機に吸い込まれるかのように、窓辺の小さなオルゴナイトへと猛烈な勢いで収束していく。


「な、なんだこれは……!?」

アディが窓枠にすがりつき、目を見開いた。


緻密な魔力感知の目を持つアディには、オルゴナイトの中で起きている恐るべき現象の全貌がハッキリと見えていた。

赤黒い死の瘴気が、樹脂レジンの表面に触れた瞬間に内部へと強制吸引される。そして、中に閉じ込められたアディの鎖帷子の破片(金属)と、乱反射する水晶の群れを通過するたびに、瘴気の呪いの術式がバリバリと音を立てて粉砕され、純度100%の光属性マナへと強制的に『反転』させられているのだ。


(有機物と無機物の質量相反を利用し、クリスタルをコアとしてマナの属性を強制逆転させる……『超広域・無限反転濾過システム(インフィニティ・フィルター)』だと……!?)

アディの高度な魔導知識が、またしても悲鳴を上げた。

(あり得ない! 対象が持つ「死」のベクトルそのものを「生」へと変換し、しかも自力で周囲の空気を吸い込んで永続駆動するなど、神聖帝国の最新鋭の空中要塞のメインエンジンですら不可能な神業だぞ!)


アディが戦慄している間にも、オルゴナイトの浄化は止まらない。

吸い込まれた瘴気は、オルゴナイトの頂点から、今度は『黄金の純粋マナ(マイナスイオン)』のシャワーとなって、噴水のように街全体へと降り注ぎ始めた。


「わぁっ! すごいすごい、ちゃんとマイナスイオンが出てるよ!」

珠子は目を輝かせ、パチパチと手を叩いた。


「えへへ、オルゴナイトの仕組みってね、すっごく理にかなってるんだよ! 有機物である『樹脂レジン』が、空気中のネガティブなエネルギー(邪気)をギューッと吸い込むでしょ? そしたら、中に入ってる無機物の『金属片』が、それをポジティブなエネルギーに変換して外に放出するの! そして中心にある水晶クォーツが、そのエネルギーを増幅させて、空間全体を愛と光の波動で満たしてくれるんだー!」


珠子はドヤ顔で、現世のスピリチュアル系ワークショップで習った知識をそのまま披露した。本人は「オシャレな空気清浄機」程度の認識である。


「そ、そんな……樹脂と金属と石を固めただけで、そのような神の奇跡が……?」

ルミナは顔を覆っていた手を下ろし、窓の外の景色を見て言葉を失った。


先ほどまで街を死の恐怖に陥れていた赤黒いスモッグは、わずか数分の間に、文字通り一滴残らず吸い尽くされていた。

そればかりか、オルゴナイトが放出した黄金のマイナスイオンによって、街の空気はかつてないほど清浄になり、アルプスの山頂のように澄み切っている。瘴気にあてられて枯れかけていた街路樹は、まるで春を迎えたかのように一斉に青々とした葉を茂らせ、つぼみだった花々は狂い咲きした。

街の人々は誰も倒れておらず、それどころか「おおっ、なんだか体が軽いぞ!」「長年の喘息が治った!」と、歓喜の声を上げて表通りで謎のステップを踏み始めている。


「教皇様が……国中の高位神官を集め、一月がかりの儀式を行ってようやく張れるかどうかの広域浄化結界を……たった数分、工作遊びのように作った手のひらサイズの置物で、再現した……? いえ、それ以上の効果を……」


ルミナの瞳から、ボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちた。

それは、死の恐怖から解放された安堵の涙であると同時に、長年探し求めていた『真の救済』を目の当たりにした希望の涙だった。


「うわーん、珠子様ぁぁぁっ!!」

ルミナはベッドから飛び起きると、珠子に勢いよく抱きついた。


「わわっ、ルミナちゃん、大丈夫!? まだ無理しちゃダメだよ!」

「珠子様……あなた様は、本当に本物の大聖女様だったのですね! 私、感動いたしました! この奇跡、王家の……いえ、後世の歴史書に必ずや刻まれるべき偉業ですわ!!」


「大聖女じゃないってば! でも、これでサロンの空気もバッチリ綺麗になったね! PM2・5も花粉も、ネガティブなカルマも全部シャットアウトだよ! うちのお店はいつでも換気レベルMAXだから安心してね!」


珠子は能天気に笑いながら、ルミナの背中をポンポンと優しく叩いた。


一方、窓枠に張り付いたままのアディは、完全に白目を剥きそうになっていた。

(……一つの街を覆い尽くすほどの死の呪いを、ただの『花粉対策の空気清浄機』と同列に扱い、数十分で解決してしまった……。この女の常識のスケールはどうなっているんだ。もはや、この世界の生態系そのものが、この女の『スピリチュアルな思い込み』によって、音を立てて崩壊していくのが聞こえる……)


アディが胃痛と共に世界(の常識)の終焉を予感している中。

珠子の腕の中で泣きじゃくっていたルミナは、やがて顔を上げ、決意に満ちた強い眼差しで珠子を見つめた。


「珠子様。実は……私、ただの薬師ではありません。あなた様のような、真に神の奇跡を御使いになれるお方にしか、お話しできない重大な『秘密』があるのです」

「えっ、秘密? もしかして、借金とか? それとも不倫の悩み? タロット占いで見てみよっか!」


「ち、違いますわ! そのような俗っぽい話ではなく……! 私の、この身体に流れる『血』と、一族にかけられた恐ろしい呪いについての話です……!」

ルミナは周囲を一度警戒するように見回し、アディの強力な防音結界が張られていることを確認すると、居住まいを正した。


「どうか、驚かずにお聞きください。私の本当の名は……ルミナ・フォン・エリュシオン。この国、神聖エリュシオン王国の第一王女なのです」


「ええーっ!? 王女様!? すっごーい! セレブじゃん!!」

珠子は目をキラキラさせて拍手をした。

アディは「やはりか」と額を押さえたが、珠子のリアクションがあまりにも「現世で芸能人に会った時の一般人」のノリだったため、ツッコミを入れる気力すら湧かなかった。


「そして……私と、父である国王陛下は、数百年前に魔王から受けた『血の呪詛』により、命の危機に瀕しているのです。どうか……大聖女様のその御力で、王家を救っていただけないでしょうか……!」


深々と頭を下げる一国の王女。

しかし、珠子の目は、ルミナの言葉の深刻さとは全く別のところ――ルミナの「肌」と「ふくらはぎ」へと向けられていた。


「うーん……呪詛っていうか……ルミナちゃん。最近、足がつりやすかったり、まぶたがピクピク痙攣したりしない? あと、いくら寝ても疲れが取れないとか」

「えっ……? は、はい。呪詛による生命力の低下で、慢性的な疲労と、身体の痺れが……。教皇様の治癒魔法でも治らないのです」


ルミナが悲痛な顔で頷くと、珠子はポンと手を打った。


「あー、それね! 完全に『マグネシウム不足』だよ!!」

「……まぐね……しうむ……?」


国家の根幹を揺るがす数百年の呪いが、珠子の謎の横文字によって、突如として「ただの栄養不足」へと強制変換されようとしていた。

王家を巻き込んだスピリチュアル無双は、いよいよお風呂場デトックスへと戦いの場を移す!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ