第85話 令嬢と魔王
荒野でございましたわ。
4人で歩いておりましたの——しばらくして、セバスチャンが立ち止まりましたわ。
「……クーリエとヴァルターは、下がっていてくれ」
クーリエが少し間を置きましたわ——ヴァルターを見ましたの。ヴァルターが頷きましたわ。2人が少し離れましたの——でも遠くへは行きませんでしたわ。
セバスチャンとわたくしでございましたの。
風がございましたわ——乾いた風でございますの。草が少のうございますわ。空が広うございましたの。
セバスチャンが剣を外しましたわ。
地面に置きましたの——静かな音でございますわ。
少し間がございましたの。
「……よかったのか」
風が吹きましたわ——草が揺れましたの。
「今は、それで十分でございますわ」
セバスチャンが黙りましたわ——空を見ましたの。
風が吹きましたわ——草が揺れましたの。また風が吹きましたわ——また揺れましたの。
空を見たままでございましたわ——動きませんでしたの。
剣が地面にございますわ——静かに置かれたままでございますの。
セバスチャンが目を閉じましたの。
「……達者でな」
「ええ。あなたも」
わたくしは一歩踏み出しましたの——静かにでございますわ。
セバスチャンが倒れましたわ——音もなくでございますの。
地面に横たわっておりましたわ——黒い鎧でございますの。風が通り過ぎましたわ——草が揺れましたの。
空が広うございますわ——雲が少しございましたの。動いておりましたわ——ゆっくりでございますの。
足音がしましたの。
「クラリッサさま——」
「大丈夫でございますわ」
クーリエが立ち止まりましたわ——セバスチャンを見ましたの。わたくしを見ましたわ。何も言いませんでしたの。
ヴァルターが傍に来ましたわ——膝をつきましたの。セバスチャンを見ておりましたわ——立ちましたの。静かに一礼しましたわ。
3人でそこにおりましたの。
風が吹きましたわ——草が揺れましたの。
クーリエがセバスチャンの傍にしゃがみましたわ——黒い鎧を見ておりましたの。何も言いませんでしたわ。ヴァルターが空を見ておりましたの——立ったままでございますわ。
わたくしは荷物から銀のティーポットを出しましたわ。
「……淹れますわ」
クーリエが少し間を置きましたわ——立ち上がりましたの。湯筒を出しましたわ。
地面に座りましたの——3人でございますわ。セバスチャンの傍でございますの。
天界の茶葉でございましたわ——残っておりますの。丁寧に量りましたわ。湯を注ぎましたの。蒸らしましたわ。
注ぎましたの。カップを持ちましたわ。
一口飲みましたわ。
……。
風が吹きましたの。草が揺れましたわ。
クーリエがカップを両手で持っておりましたの——下を向いておりますわ。ヴァルターがカップを持ったまま前を向いておりましたの。
もう一口飲みましたわ。
しばらく、3人でそこにおりましたの——セバスチャンの傍でございますわ。空が動いておりましたの。風がございましたの。草の音でございますわ。




