第83話 セラフィナ
翌朝でございましたわ。
宿の扉を叩く音がしましたの——低い音でございますわ。
開けましたわ。
黒い鎧でございましたの——少し間がございましたの。
「……私を、討伐してくれるか」
「お茶が美味しゅうございますわ」
少し間がございましたの。
「……それは、どういう意味だ」
「引き受けますわ、という意味でございますわ」
セバスチャンが黙りましたわ。
後ろからクーリエが顔を出しましたわ——何も言いませんでしたの。ヴァルターが静かに一礼しましたわ。
セバスチャンが頷きましたの。
翌日でございましたわ。
宿の扉を叩く音がしましたの——今度は軽い音でございますわ。
開けましたわ。
「統括官」とクーリエが言いましたの——後ろから顔を出しましたわ。
「元気そうですね、クーリエ」
「よく来てくださいましたわ」とわたくしは言いましたの。
セラフィナが少し頷きましたわ——中に入りましたの。
セバスチャンを見ましたわ。セバスチャンがセラフィナを見ましたの。どちらも何も言いませんでしたわ。
クーリエが湯を取りに行きましたわ。ヴァルターが椅子を引きましたの。
セラフィナが小さな包みを取り出しましたわ——わたくしに渡しましたの。
「これ……天界でしか育たない茶葉なんですが。こんなものしかありませんが」
「まあ」
受け取りましたわ——包みの上から少し触れましたの。軽うございますわ。香りが薄うございましたの——でも確かにございますわ。
「ありがとうございますわ」
セラフィナが少し間を置きましたわ——椅子に座りましたの。
銀のティーポットを出しましたわ。
クーリエが湯を持ってまいりましたの——テーブルの上に置きましたわ。
包みを開けましたの——葉でございますわ。薄い緑でございますの。乾いておりましたわ。量を確かめましたの——少のうございますわ。丁寧に量りましたわ。
湯を注ぎましたの。蒸らしましたわ。
注ぎましたの——カップの中に淡い色でございますわ。ほとんど透き通っておりますの。湯気が細うございましたわ。
セラフィナに渡しましたの。
「どうですか?」
「……私に聞かないでください。あなたが淹れたのでしょう」
わたくしは自分のカップを受け取りましたわ——一口飲みましたの。
……。
「……初めての香りでございますわ」
もう一口でございましたわ。
「清々しゅうございますわ」
クーリエがカップを受け取りましたわ——一口飲みましたの。少し目を丸くしましたわ。何も言いませんでしたの——もう一口飲みましたわ。
ヴァルターがカップを受け取りましたの——一口飲みましたわ。窓の外を見ましたの。
セバスチャンがカップを受け取りましたわ——両手でございますの。一口飲みましたの。黙っておりましたわ。
セラフィナが自分のカップを見ておりましたの——一口飲みましたわ。
クーリエがカップを両手で持ちましたわ——窓の外を見ましたの。ヴァルターが前を向いておりましたわ。セバスチャンがカップを見ておりましたの。セラフィナが手の中のカップを見ておりましたわ。
外で風の音がしましたの——止みましたわ。
また静かになりましたの。
「……全部、うまくいくといいですね」
「ええ」
窓から光が入っておりましたわ——午前の光でございますの。カップの中に映っておりましたわ。




