第78話 脱出と勇者の離脱
夜でございましたわ。
地下聖堂の扉でございますの——4人でございますわ。荷物を持っておりましたの。
「入りますわ」
扉を開けましたの——石段でございますわ。燭台の灯りが揺れましたわ。昼間と同じ空気でございますの——ひんやりとした石の匂いでございますわ。
降りましたの。
通路でございましたわ。
「こちらですわ」
「……本当に覚えているのか」とセバスチャンが言いましたわ。
「ええ」
歩きましたの——左でございますわ。また分岐でございますの——右でございますわ。
「……本当に覚えているのか」
「ええ」
「……そうか」
クーリエが小声で笑いましたわ——すぐに止めましたの。
通路の奥から声が聞こえてまいりましたわ——ナルバスの声でございますの。
「戻ってきてください。正しい道を——」
反響しておりましたの——どこから来るかわかりませんでしたわ。前からでございますの——後ろからでございますわ——壁から染み出てくるようでございましたの。
「……不気味ですね」とクーリエが小声で言いましたわ。
「ええ」
「どこにいるんですか」
「わかりませんわ。でも道はわかっておりますの——参りましょう」
歩き続けましたわ。声が続きましたの——「正しい道を——」「戻ってきてください——」でございますわ。反響するたびに少し変わりましたの——少し遠く、少し近く、でございますわ。
足音が聞こえましたの——信徒でございますわ。後ろからでございますの。
「……付いてきてます」とヴァルターが言いましたわ。
「ええ。急ぎましょう」
足を速めましたの。分岐でございますわ——左でございますの。また分岐でございますわ——真ん中でございますの。
「クーリエ、歩数は」
「……五十一歩です。石段まであと少し」
「ありがとうございますわ」
後ろの足音が増えましたわ——でも石段でございますの——上でございますわ。
地上の光が見えてまいりましたわ。
地上に出ましたの。
夜でございましたわ——月でございますの。乾いた風でございますわ。
4人で石畳を歩きましたの——聖堂から離れましたわ。
後ろで音がしましたの——扉の音でございますわ。
振り返りましたわ。
聖堂の入口でございましたの——ナルバスが出てまいりましたわ。信徒たちに囲まれておりますの。白い衣でございますわ。
穏やかな顔ではございませんでしたわ——怒りでもございませんでしたの。
泣きそうな顔でございましたわ。
「……なぜ、わかってくれないのですか」
「わかっておりますわ」
「では——」
「わかっているから、参りますわ」
歩き出しましたの。
ナルバスが何も言いませんでしたわ。
石畳に足音だけでございましたの。
黄金の光でございましたわ。
ナルバスの周囲にでございますの——細うございましたわ。細く、細く、なっておりましたの。霧のように広がりましたわ——それから散りましたの。
ナルバスは信徒たちに向かって話しておりましたわ——気づいておりませんでしたの。
「……あれは」とクーリエが言いましたわ。
「ええ」
4人で道を歩き続けましたの——南の空でございますわ。月が明るうございましたわ。
セバスチャンが少し間を置きましたわ。「……あれでよかったのか」
「ええ」
「……そうか」
乾いた風でございましたわ——道の両側に香草が育っておりますの。来た道とは逆でございましたわ。南でございますの。




