第38話 共闘
翌日の午後でございましたわ。
街道の先に、砂埃が見えましたの。
近うございますわ——近づいてきておりますの。砂埃の量でございますわ。馬の蹄の音が聞こえてまいりましたの。1頭や2頭ではございませんわ。
「多いですね」とクーリエが言いましたの。
「そうでございますわね」
ヴァルターが前に出ましたわ。盾を外しましたの。
「後ろに下がってください」
「下がりませんわよ」
「……そうですね」
見えてまいりましたわ。
騎士が20人でございますの。馬に乗っておりますわ。その後ろに徒歩の兵士がさらにおりましたの——30人は超えておりますわ。総勢50人以上でございますの。
クーリエが上空を見ましたわ。
「……多いですね」
「先ほどもそうおっしゃいましたわ」
「さっきより多いです」
「そうでございますわね」
騎士の先頭が馬を止めましたの。
「引き返せ。これが最後の警告だ」
「ありがとうございますわ。ただ、引き返す理由がございませんの」
騎士が剣を抜きましたわ。後ろに合図を送りましたの——部隊全体が動き始めましたわ。
わたくしはフレアアローを8本展開しましたの。クーリエが槍を上空に6本並べましたわ。ヴァルターが盾を正面に向けましたの。
ただし——50人でございますわ。
どうしたものかと思いましたの。
その時でございましたわ。
街道の脇、木々の中から声がしましたの。
「……なぜ私はこんな場所にいるんだ」
セバスチャンでございましたわ。
黒い鎧でございますの。長身で黒髪、赤い瞳でございますわ。剣をすでに抜いておりましたの。木々の際に立っておりましたわ。
「セバス」
「セバスチャンだ」
口癖のように返しましたわ——ただし剣は構えたままでございますの。
「なぜここにいるんですか?」とクーリエが聞きましたの。
「北東から南へ変異種を追っていたら、この辺りに出た。そうしたらお前たちがいた」
「それだけですか?」
「……それだけだ」
セバスチャンが騎士の部隊を見ましたわ。
「50か」
「以上でございますわ」
「……なぜ私がこんなことに」
「ご一緒していただけますか?」
「断れる状況か、これが」
動きましたわ。
セバスチャンが先に仕掛けましたの。
馬に乗った先頭の騎士3人に向かいましたわ。一歩で間合いに入りましたの。剣が薙いで2人を馬から落としましたわ。3人目が剣で受けましたの——セバスチャンの剣が押し勝ちましたわ。騎士が吹き飛びましたの。
ヴァルターが左翼の騎士5人に向かいましたわ。盾を地面に刺して防壁にしましたの——馬が止まりましたわ。盾ごとタックルで2人を落としましたの。残り3人がヴァルターを囲みましたわ——
「ヴァルター、右」
「わかりました」
クーリエの槍が右から来た2人に刺さりましたの。ヴァルターが正面の1人を剣で制しましたわ。
わたくしは正面の騎士群に向けましたの。フレアアローを8本、同時に放ちましたわ。フルバーストしましたの——前列が崩れましたわ。
後方の徒歩兵士が動きましたの。
「クーリエ、壁」
「はい」
光の壁が街道を横断する形で展開されましたわ。徒歩兵士が壁に当たって止まりましたの。
ただし壁の向こうで兵士が重なりましたわ。数の圧でございますの——壁が少しずつ押されておりますわ。
「持ちますか?」
「……少しだけ」
セバスチャンが右側の騎士を次々と落としておりましたわ。この方の動きは止まりませんの。7人、8人——剣が止まりませんわ。
ただし右翼の奥から、新たに騎士が10人出てまいりましたの。
セバスチャンが舌打ちしましたわ。
ヴァルターがセバスチャンを見ましたの——無言でございますわ。
セバスチャンが一瞬ヴァルターを見ましたわ。それから前を向きましたの。
「……右の増援は私が行く。左は任せる」
「わかりました」
セバスチャンが右翼の騎士10人へ向かいましたわ。ヴァルターが左翼に残った騎士を盾で受け止めましたの。
クーリエが壁を消しましたわ。
「ハンマー使います」
ハンマーが光の粒を引きながら徒歩兵士の密集した箇所に向かいましたの。音が響きましたわ。前列が崩れましたの。
わたくしがエアープレスで崩れた足元をさらに持ち上げましたわ。フレアアローを5本バーストしましたの。
後方の兵士が止まりましたわ。
右翼でセバスチャンが10人を抑えておりましたの。ヴァルターが左翼の残りを盾で押さえておりますわ。2人の間に隙間がございませんでしたの——壁のようでございますわ。
しばらくして、騎士たちが動きを止めましたわ。撤退の合図でございますの。
静かになりましたわ。
ヴァルターが盾を背負いましたの。セバスチャンが剣を収めましたわ。
遠くでございましたの。
レオガルドでございますわ。街道の遠方から、馬でこちらを見ておりましたの。深紅のオーラが薄く揺れておりましたわ——動いておりませんでしたの。セバスチャンが加わったのを見ておりましたわ——それだけ見て、馬を返しましたの。去っていきましたわ。
クーリエがセバスチャンを見ましたの。
「セバスチャン、こちらはヴァルターさんです」
セバスチャンがヴァルターを見ましたわ。ヴァルターがセバスチャンを見ましたの。
「……ゼルブルクか」
「そうです」
「騎士団の動きをする」
「……していましたので」
セバスチャンが少し黙りましたわ。
「……悪くない動きだ」
ヴァルターが少し間を置きましたの。
「……ありがとうございます」
セバスチャンが遠くのレオガルドを見ましたわ。レオガルドの馬が向きを変えましたの——去っていきましたわ。
「……あれがレオガルドか」
「ご存知でしたの?」
「名前だけは。厄介な相手だ」
「そうでございますわね」
セバスチャンが溜息をつきましたわ。
「……なぜ私はこんな場所にいるんだ」
「一緒に参りますか?」
セバスチャンがわたくしを見ましたの。
「どこへ行く」
「この先でございますわ。茶葉があるかもしれませんの」
「茶葉か」
「レオガルド殿がまた来るかもしれませんわよ」
セバスチャンが少し黙りましたわ。
「……なぜ私が選ばれたのか、今でもわからない」
「さあ。ただ——」
「わかっている。同じ方向だということだろう」
わたくしは何も言いませんでしたわ。
セバスチャンが歩き始めましたの——3人の方向でございますわ。
クーリエが小声で言いましたの。
「4人になりましたね」
「そうでございますわね」
ヴァルターが前を向いたまま言いましたの。
「……頼もしいです」
「否定はしない」
セバスチャンが前を向いたまま言いましたわ。
4人で歩き始めましたの。




