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002

主人公は、日本の高校に通う男子生徒である。


ここ数日、

新聞やテレビのニュースでは、

謎の組織と「社会実験」と呼ばれるものが、

激しい議論を巻き起こしていると繰り返し報じられていた。


多くの大人たちは不安を覚え、

中には反対の声を上げる者も少なくなかった。


だが、彼だけは違った。


彼はとても興味をそそられていた。


親元を離れて暮らし、

父や母に干渉されることもなく、

それでいて学校生活はこれまで通り続く――

彼にとって、それはまるで

青春の理想をそのまま形にした夢のような話だった。


彼は思ってもいなかった……

自分の学校が、

その三校のうちの一つに選ばれているなどとは。


正式な発表がなされた瞬間、

教室はざわめきに包まれた。

だが彼は、ほとんど迷わなかった。


そして即座に、

自分がペアを組む相手を決めた。


それはアキラ――

隣の席の友人だった。


休み時間のたびに一緒にチェスを指し、

駒の動きや戦略、

チャイムが鳴るまで続く長い対局を

共に楽しんできた相手。


この実験で誰かを信じるとしたら、

それはアキラ以外にあり得なかった。


彼の家は三人兄弟だ。

彼は長男だった。


出発前日の夜、

二歳年下の弟が笑いながら言った。


――「最初の方で脱落するなよ。

せめて金は持って帰ってきてくれよな」


彼はただ笑って、

弟の頭を軽く撫でた。


その日の夕食は、

いつもより穏やかに過ぎていった。


誰も口には出さなかったが、

全員が分かっていた――

これは、

普通の外出ではないということを。


夜十時ちょうど、

母親が彼を学校まで送っていった。


校門は明るく照らされ、

すでにバスが待機していた。


娯楽になるものは一切持ち込み禁止だった。

携帯電話も、

音楽プレーヤーも、

個人用の電子機器もすべて不可。


運営側の人間が、

生徒一人ひとりの持ち物を検査し、

厳重にチェックしていく。


すべてが徹底的に管理されていた。


その後、生徒たちは順番に

バスへと乗り込んでいった。


車内を見渡すと、

乗っているのは全員クラスメイトだった。


彼はアキラの隣に座った。


――「俺たち、ペアになろう」

――「ああ。俺もそう言うつもりだった」


バスは走り出す。


窓はすべて覆われ、

外の景色は一切見えない。

どこへ連れて行かれるのか、

誰にも分からなかった。


最初の緊張は次第に薄れ、

会話の声も小さくなり、

やがてクラス全体が

静寂の中で眠りに落ちていった。


翌朝、

バスが停車したことで彼は目を覚ました。


目の前に広がっていたのは、

息をのむほど近代的な複合施設だった。

白く清潔な建物、

整然とした通路――

まるでSF映画の世界のようだった。


周囲には大勢の生徒がいた。

だがよく見ると、

全員が自分の学校の生徒だった。


運営側は、

正式なペアリングを行うよう指示した。


手続きが終わると、

各ペアはそれぞれ個別の部屋へと案内される。

部屋は隣り合って並び、

番号は1から22まで振られていた。


それは、

彼のクラスの人数――

44人に対応する数字だった。


このエリアは

「10A2区画」と呼ばれていた。


彼の学校には三つの学年があり、

各学年に十一クラスずつ存在する。


この実験に参加するのは、

成績上位の三クラス――

10A1、10A2、10A6だった。


しかしその時点では、

彼はそんなことに

まったく注意を払っていなかった。


部屋に足を踏み入れた瞬間から、

彼は強い高揚感を覚えていた。


――「すげえな……」


彼は二段ベッドによじ登り、

上段を選んで仰向けに寝転がった。


――「なあ、アキラ」

興奮を隠せない声で言う。

「俺、上で寝るな」


彼はまだ知らなかった……

この「最高だ」という感覚が、

最初の数日間しか

続かないということを。


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