リメイク第二章 FIGHT BY LIGHT
『さぁ、立ち上がって。一緒に戦うよ』
『力を使え・・・もう理解出来ただろ?お前が背負うと決めた命、それこそがお前の力だ』
『俺たちは常にそばにいる、それを忘れんじゃねぇぞ?じゃあ行け、あいつに勝ってみせろ!!』
「・・・あぁっ!!行くぜ!!ううぉりゃぁぁっ!!」
俺はとりあえず一発俺の顔面を殴ってやった。俺の馬鹿さ加減に一発喝を入れてやらねぇとな。
額が割れて血が顔を伝う、けどそのおかげでずっとあったモヤモヤがやっと晴れた。
「その感じ・・・遂にやり遂げたみたいだね。けど、一つ気になるな。何が君を変えた?」
「・・・三上、俺がお前を殺す覚悟を持たなかった理由はグレイシアさんがずっとお前を愛していたからッス。俺はそんな人を置いて1人お前と戦ってそれで良いのか?そんな風に考えてた。1人の物語を勝手に奪っても良いのだろうか?ってな。
けど、今ようやく答えが出た。ここに俺が来てしまった、それが俺に与えられた物語だ。グレイシアさんもそれを分かってて俺に託した。なのに俺と来たら、色んな思いが重なって結局何も出来なかった。
俺はそんな俺自身の馬鹿さに腹が立ったんス。みんなそれぞれに物語を持ってるのに、俺には無いって思い込んでた。俺にだって俺の物語がある・・・俺の物語はこの世界に来てお前と戦い、お前を超えて、そして平和な世界を取り戻す!!
それを実現できるのは今!ここにいる俺だけなんだ!!俺はみんなの物語を背負っていた!俺にはそれを貫き通す義務がある!!だから三上!!俺はお前を!!必ず殺して見せる!!」
三上は自らの刺さった剣を抜いた。
「成る程、君自身が君を変えた・・・そう言う認識でいいかな?」
「さぁな、知りたきゃ俺と戦え。何が俺を変えたか、そこに答えが見えるかもな・・・行くッスよ、三上っ!!!!」
「にははっ!!」
太陽のオレンジ色の光が屋上を照らす。その中俺と三上は同時に前へ踏み出した。
『左だよっ!!』
『ガキィィィンッッ!!』
俺は銃のグリップの底の部分を剣に合わせて受け止めた。
「だあああっ!!」
俺はそれを弾き、銃口を三上に向ける。そしてありったけの電撃を撃ち込んだ。
三上は剣でそれをいなす。流石にこの魔法だけじゃ三上には及ばないな。ならっ!!
「んっ、風!?」
「それだけだと思うなっ!!」
俺がもう一度引き金を引いた瞬間、俺の電撃は枝分かれし、三上をあらゆる方向から襲った。
「ちっ!!」
「逃すかっ!!凍りやがれっ!!」
俺は一歩踏み込み、その足の魔法を使い。三上の足を凍らせて動きを封じた。
「そしてっ!!」
『ダメっ!!後ろから来るっ!!』
「くっ!!」
俺は言葉に従って避ける、その瞬間三上の足元の氷が砕けた。
「あはっ!」
三上が攻め込んでくる。
『左っ!!』『次は上だっ!!』『右手から回り込まれるぞっ!!』
俺は三上の早すぎる連続斬りを全て銃で防いだ。
「僕の動きが先読みされてる?なら」
この動きは、縮地の抜刀術・・・だけど!!
「下っ!!!』
『ガギィィィィィンッッッ!!!』
「嘘っ!?」
「誰が嘘なんかつくか、これは・・・正真正銘俺の力ッスよっ!!!」
三上の攻撃を捌いて放った俺の渾身の一撃は、三上の腹に穴を開けた。
「ふぅ、ようやく本気になれたね・・・なら僕もそろそろ、全部本気で行こうっ!!」
『っ!!?ちょっ!何これっ!?あっ!左から!っ!右もっ!!』
「くそっ!!!」
三上の剣が俺の脇腹にクリーンヒットした。この速さ、あいつの力だけじゃ避けきれないな。
「へぇ、まともに喰らったのに平気だなんてね。流石だよ。けど、今のやりとりで理解出来た。やっぱり聞こえてるんだよね、見えてる訳じゃなくてさ。聞いて反応してるみたいだ」
たったこのやりとりで何でそこまで分かるんだか・・・それより、さっきの本気になった三上の攻撃だ。あの見えない攻撃が一斉にどれだけ来た?
『・・・なぁ、三上のあの見えない攻撃を見切れる奴はいるッスか?流石にあの子じゃ限界があるみたいッス』
『なら私が見よう・・・クロ、彼の目は私が変わる、お前はあの男本体に気をつけろ』
『はーい』
俺が今誰と話したのか、正解はこの真上を飛んでる奴だ。さっきまで三上の攻撃を見極めていたのは一羽のカラス。名前はクロらしい。そして今、そのクロに変わって俺の力になってくれたのは鷹だ。名は、ホクトって言うみたい。俺の力の正体、それは動物たちと会話する事。そして、俺の味方にする事だ。
『ホクト、後もう一つ聞かせてくれ。三上のあの見えない攻撃は何なんだ?』
『あなたには見えない?私の目にははっきり見えてるわ。もう一人、彼がいる』
っ・・・そう言う事か、サンキュー。
「三上、俺の方こそようやく理解出来たッスよ。お前の力の正体。ズバリ、もう一人いるんだろ?お前自身が・・・」
「っ!?」
三上が初めて心底驚いたって顔をした。ようやく一矢報いた気がする。
「ふふふ、覚醒により目覚めたもう一つの力・・・使いこなし始めてるね。そう、見えない僕自身を召喚する。それこそ僕のもう一つの力さ。見る事も触れる事も出来ない。けど、確かにそこにもう一人の僕は存在する。
桜蘭君、覚醒って言うのは精神の異常な程の揺らぎで発動するんだ。その瞬間、精神と肉体はこの世界の流れの一部となる。そうする事でこの世界の流れから魔法を理解して魔法を発動出来て、更にはその応用も咄嗟に理解できるようになる。さっきの君の氷の粒を混ぜた電撃みたいにね。また恐怖に呑み込まれる暴走、つまりバケモノ化も、覚醒した肉体と精神によりバケモノになる事はなくなる。簡単にまとめたけど、これが覚醒のメカニズムって所かな。
けど、その中で一つ、これはまだ僕も理解出来てない事だから予測でしか無いけど、稀に覚醒の中で更に別の力を持つ者が現れる事があると僕は考えてる。これは全員に起こり得る事なのか、選ばれし者しか使えないのかは分からないけど、覚醒の際に放出される脳波は、己自身を飛び越えて外へと漏れ出す。それが周囲に何かしらの影響を与えて何かを自在に操る、支配する力を手にすることが出来るんだ。かつてゼロがバケモノを自在に動かしたのもそれだ。
桜蘭君はどうやらその域に到達したらしいね。君の支配は何を支配しているのか・・・」
三上はじっと俺を見つめて剣を構える。
そして俺も、銃を三上に向けて構える。
『行くぞっ!!!』
互いに同時に踏み込む。そして剣と銃がぶつかり合う。ほんとこの銃頑丈に作ってあるな、三上の剣をもろに食らっても傷一つ入らない。
『左だっ!!』
そして風の魔法を使えばこうやって一気に間合いを離したり、逆に一気に詰めたりもできる。
俺の剣が折れた今、この銃でどう攻めるかだ。三上相手にもう間合いを取って攻めるなんて事はしない。今は攻めて攻めて、攻めまくる。
『桜蘭っ!!今度は上と右!二つだ!!』
「っ!!!」
けど、見えない攻撃の手数も増えてきたな。
「上手くかわしたね・・・反応速度が変わった?」
今は三上の言葉は無視だ。今の攻撃は2箇所同時、2人召喚してるのは確実か。
『ホクト、今奴は何人いる?』
『あいつは今はあの本人1人、現れるのは攻撃の瞬間だけ。さっきはあいつプラス2人の3人だったわ』
攻撃の瞬間だけ?俺のこの力と比べたらかなり限定的にしか使えないんだな。まぁ、自分自身の召喚なんて次元が違うレベルの能力だからな、相当精神力を削るんだろう。
「だったら負けを認めるか?2人じゃ今の俺には勝てないッスよ?」
「お、言うようになったね・・・なら!!」
三上の奴、全員出すつもりか!!
『何人だっ!?』
『上、左右、後ろっ!!四人だっ!!前に飛べ!!』
俺は前に踏み出して三上本人に迫った。
『後ろの方が速いっ!!』
「ちっ!!」
俺は下に風の魔法を撃つ。後ろから来るならその攻撃を三上に当てられるかもしれない。
「ふふっ、自爆狙い?けど残念!!」
『しまった!!罠だっ!!下だ!!下に避けろ!!』
不可能だ、避けきれない・・・なら、せめて最低限のダメージで・・・んっ!?
三上の見えない攻撃は確かに俺に届いた。けど、その瞬間に何も感じなくなった。そしてその直後に三上本人も来る。俺たちは互いに武器がぶつかり合い、大きく弾かれた。
「20秒か・・・」
「ん?」
「お前のその見えない攻撃、最大で20秒しか出せないんだろ?だからお前自身が最後俺に攻撃を仕掛けた。違うッスか?」
「あらら、見抜かれちゃったね。けど、僕も君の力を見抜いたよ、君の能力の正体は動物の支配だ。さっきから感じる妙な視線。上を飛んでる鷹に、そこにいるカラス、排水管を登ってきたネズミ・・・ここにいるあらゆる動物たちが君の味方だ。中々メルヘンでファンタジーな能力だね」
まさかここまですぐに見抜いて来るなんてな・・・てか、ファンタジーを言うならお前の能力はそれ通り越してミステリーだ。
「お前のそう言う相手の精神にズカズカと入ってくる所気持ち悪いんだけど」
「観察力があると言って欲しいな。さて、お互い能力を完全に理解した。さぁ、まだまだやれるよね!!」
「当たり前だっ!!!」
『っ!!あいつ!あの能力を使うつもりはない!!攻撃が真っ直ぐ飛んでくる!!』
『違うぜホクト!!次は地面だっ!!』
ネズミのスケサンは三上の攻撃を察知した。三上は剣を振ると地面から無数の岩で出来た槍みたいなのが突き出してきた。
「あぶねっ!!!くそっ!!お返しだっ!!」
俺も銃を地面に撃ち込んで同じ技を三上に喰らわせた。って、あれっ!?
『後ろ!!』
三上は俺の後ろに回り込んでいた。あの石は目眩しか・・・けど、今の俺に死角はない!!
『ガァンッ!!』
俺は真後ろに電撃を撃つ。ついでに風も同時だ。俺は一気に三上との距離を離す。そして着地した瞬間に俺は急旋回し、三上に向かって踏み込む。
「即興で思いついた!!こいつを喰らえ!!!」
俺は銃のスライドを引っ張った。本来ここにはあの剣を付けるアタッチメントになる部分だけど、今は剣が折れてる。けど、剣に魔法が纏えたなら、刀身が無くてもここに魔法のみを纏わせる事も出来る筈!!
電撃と炎、そして風。この3つを混ぜ合わせたこの攻撃なら三上を一瞬で真っ二つに出来る超高熱の刃を作り出せる!!
「これはっ!!!」
俺はまるで火炎放射器のように噴き出す刀身を三上に振り下ろした。だが、三上はそれを剣で防ぐ。どうやってこの質量のない剣を受け止めてるんだ?
っ、これは・・・三上も同様に魔法をぶつけてるのか。
「せいやっ!!」
「くっ!!」
押し負けた・・・流石に腕力は三上が上か・・・
「ふぅ、中々凄い魔法だね。さしずめ、溶断の魔法かな?原理的にはプラズマカッターやガス溶断に近い。軽く2000度を超える刃か・・・」
「なら、そのぷらずまかったーってのを何発も喰らえばどうッスかねっ!!」
俺は三上に追い討ちをかける。三上の剣と俺の剣がぶつかり合い、火花をあちこちに散らす。
「うおおおおおっ!!!!」
「せいゃぁぁぁっ!!!!」
けどその時だった。
「っ!!!」
三上の動きが急に止まった。俺は思わず動きを止めていた、何か様子が変だ・・・
「はぁ・・・はぁ・・・ちっ」
脂汗?三上が?
「あれ?良いの?今、チャンスなのにさ・・・」
「っ、いくらあんたを殺す為に戦ってるのだとしても、その状態の奴に追い討ちかける程、腐ってないッスよ」
「はは・・・そうやって見栄張って、負けても知らないよ。ぐっ!!!」
三上は心臓近くに注射みたいなのを突き刺した。
「ふぅ・・・ごめんね、どうやら予想以上に体力をすり減らしてたみたい、さっき君の体力を回復させたからかなぁ。桜蘭君、君は僕の思ってる以上に強いね・・・なら、そろそろ最終局面と行こう・・・」
ぞくっ!!!
今、背筋に激しい悪寒をかんじた。これは・・・三上の殺気?
「奥義・・・」
三上はふらっと剣を納めて抜刀術の構えを取る。
「その技ならさっき見切ったッスよ?」
「それは・・・どうかなっ!!」
消えた・・・まだあそこまで速く動けるのか。けど!!
『いや!!伏せろっ!!』
「なっ!!!」
俺は咄嗟に伏せた。けど、今のは何だ?閃光が走ったような・・・
「この奥義は、避けるしか正解は無いよ?」
後ろか・・・俺は振り向いた。けど、その光景に俺は唖然とした。三上は貯水槽を真っ二つに切り裂いていた。しかも、ただ切り裂いていたんじゃない。切断面がまるで一瞬で溶かされたみたいだ。
タンクの切断面はオレンジ色に光り、漏れ出た水からは激しい蒸気が出て、その熱気が俺に伝わって来る。
そしてもう一つ、立ちはだかる三上の剣から淡い光が発せられていた。




