リメイク第二章 WAKE UP BY SUNRISE
「うらぁぁぁぁぁっ!!!」
「せいゃぁぁぁぁっ!!!」
右手の銃と左手の剣、それを駆使して俺は三上に喰らいつく。
「行けぇぇぇぇ!!!」
『前から来るよっ!!』
「っ!?」
まただ、声に導かれるように俺は回避していた。そして俺の攻撃しようとした場所の地面は何か巨大なハンマーでも振り下ろしたかのように凹んだ。
「はははっ!!!この土壇場で僕のこの技を避ける術を身につけたか!!なら!!こいつは避けられるっ!?」
『ガギィンッ!!!』
気がつけばまた三上は俺の懐にまで入り込んで来る、いい加減うざいな!けど、その技はそこからしか攻撃してこないなら、俺はそこに合わせれば良いだけだっ!!
俺の剣は三上の剣と合わさった。
「ふふっ、縮地にも対応し始めて来てる・・・良いぞ、もっと怒れ、もっとこの戦いを楽しめ。次は速さを常にマックスで行くよっ!!」
目の前から三上が消えた、これは・・・後ろっ!!俺は後ろに攻撃を放つ。
「残念、僕は更に後ろだよっ!!」
「だと思ったよっ!!」
「あっ!しまっ!!」
『ズガァァンッッ!!!』
俺は同時に後ろに電撃を放った。やった・・・電撃は三上の腹にクリーンヒットし、壁に激突した。少しずつだけど、追いついて来てるのか?
「はぁ・・・はぁ・・・ちっ、けど浅いッスね」
三上は壁にぶつかりながらも平然と立っている。
「・・・何で?」
三上は突然俺に質問した。
「あ?何が・・・」
「今のは100点だった・・・隙を完璧に捉えていた。今の桜蘭君なら心臓を貫いていてもおかしくない。何で今、こんなにも威力が落ちた?」
威力が落ちただと?ほぼマックスチャージで撃ったんだぞ?
三上は俺を見つめた。そして無言のまま攻撃に移る、これは・・・見切れる、三上の速さが落ちたのか?
「ここだっ!!!」
「・・・せいゃぁぁぁぁぁっ!!!」
完璧に隙を突いた、筈だった。
な、何だこれっ!?
三上は突然掛け声を上げ、さっきまでとは明らかに違う動きで俺を一気に追い詰めた。
「くっ!!がっ!!!がはっ!!」
「はぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
三上は俺の動きを封じ、そして俺を押し倒して胸を踏みつけられた。
「くっ!!っ!?」
その時の三上の顔は、笑顔ではなかった。これは・・・言うなれば絶望。
「これ、君はもしかして・・・覚醒出来ない?」
「は?」
三上から意外な一言が聞かされた。俺が覚醒出来ないって、どういう事だ?
「やっと分かった・・・君が覚醒に至らない理由を。君は既に半分は覚醒している。魔法の威力も増して、もう一つの力も後少しで理解できる所まで来てる。けど、肝心な一歩が踏み出せてない。
覚醒の後の冷静さ、君の場合それが先に来てる。先に冷静さが頭をよぎるから心にブレーキをかけて、ほんの僅かに恐怖するんだ。『人を殺す』君は引き金を引く一瞬、その事を恐れてしまった・・・最悪、僕は君を買い被ってたみたい。君は一番ポテンシャルを秘めてると思ってたのに・・・あーあ、つまらない。こんな・・・こんなふざけた話があってたまるかっ!!」
三上は、何を怒ってるんだ?いや、笑ってる?三上の口角は上がり、肩を震わせてる。
ふざけてるのは、お前の方だろ・・・何勝手に絶望してんだ?
「おい、何適当な事を言ってるんだよ。俺がここまで来たのはお前に勝つ為だ」
「そう、そうだろうね。けど、君・・・一度でも僕を殺すって言った?勝つ、倒す、くたばれ。決して自らの手でこの命を奪いたいと聞いた記憶が無いよ?」
言われて俺は初めて気がついた。俺は三上に、殺すと言った覚えがない。
そうだ・・・今分かった。俺は怯えたんだ、人間の命を奪う事。それが怖くなったんだ。怒り任せで三上に挑んでも、それがチラつく、人を殺す。それの意味を・・・
「君は確かに腕を上げた・・・けど、成長はまるでしてない、弱いままだ。
僕のミスだ・・・僕が君を怒らせる為に君を焚き付けたばかりに、君は自分自身を見つめる機会を奪った。そして何がなんだか分からないうちに君の幸運は、僕の元まで来てしまった。だから後一歩が踏み出せない、殺す事を躊躇って逃げてしまう・・・ごめんね桜蘭君、どうやら僕が君の覚醒を妨げてたみたいだ」
は?
三上は何で俺を憐れんでる?何で謝る?俺が何のためにここまで来たと思って・・・俺は、何の為にここまで来た?
俺はふと考えた、三上への怒り・・・みんなそれを理由にここまで来てたけど、そうじゃない。それはみんなの建前だ。
グレイシアさんは三上を愛していたから、エルメスはもう誰も死なせたくないという願い、零羅は自身を変えたい、超えたいと願った。麗沢にも理由がある、美味しいものを美味しく食べたいと。それにサムさんたちも・・・みんな、それぞれ自分自身の理由があった、信念があったんだ。
けど、俺は何があった?三上の所業を見て、嫌な気持ちになって、それを何とかしなきゃと思った・・・けど、それしかない、俺が命を懸けて旅する理由なんて、何処にも無かったんだ。
俺自身への理由が何も無い、からっぽのゼロだ・・・だから一歩が踏み出せない、殺す覚悟が決められない。貫きたい信念が何も無いから・・・
「仕方ない、もうこれ以上やっても僕はつまらないし、君はやがてやってくるバケモノ化に怯える事になる。ならいっその事ここで終わらせるのが良いか。
世の中、そう上手くはいかないね・・・下のフォックスはヘマをしたとしてもギリギリまで粘るか・・・うん、詰み。これにてゲームオーバーだ」
三上は俺に剣を突きつけた。
あぁ・・・なんでこうなった?俺、ずっと何してたんだろ・・・何かの物語の主人公にでもなったつもりだったのかな。俺にそんな素質はない事くらい分かってただろ。むしろ素質があるのは零羅だ。いや、麗沢にでもこのゲームを通して主人公張れるくらい活躍してる。
なら俺は何だ?確かに俺が一番このゲームで止めの一撃を放った。けど、それだけだ、そこに物語は無かった。
そっか、俺、憧れてたんだなぁ。三上の強さ、零羅の覚悟、麗沢の信念。俺はそれに憧れるだけで俺自身を見つめなかった。何も努力出来なかったんだ・・・みんなが成長した。それを見て来た俺も成長したと勘違いしたんだ。俺はただ幸運でここまで来れただけなんだ。
そうだ、俺はこれまで運任せでここまで来てた。それがたまたまここまで来てしまったんだ。けど、そんなの三上相手に通用する訳なかったんだ。
俺は勝手に涙が出て来た、俺の馬鹿さに呆れと哀れみの感情が吹き出す。
「そう悲しまなくて良いよ、怯えなくてもいい。よく頑張ったよ・・・覚醒なしでよくここまで僕を追い込んだ。そこは素直に満点をあげるよ。だけど、もう頑張らなくて良い。君はこの世界で戦うにはあまりに普通過ぎたんだ、平和を愛し過ぎてた、それって本当は凄く良い事なんだよ。
けどごめんね。もし、君に来世があるのだとしたら、こんな世界の戦いに巻き込まれない、ごく普通の最後まで生き抜く人生になる事を祈るよ。じゃあおやすみ。坂上 桜蘭君・・・」
三上のこの顔・・・俺にはさっきまでとは全く違う存在に見えた、言うなれば女神、さっきまでのとち狂った幼顔の少年とはまるで違う。
この俺の間違いを全て包み込んでくれる、そんな感じがする、そしてそれを救ってくれる。俺の間違いを一手に背負ってくれた。
俺の人生、ここで終わらせても良いんだ・・・この世界に来てしまった、それこそ俺の運の尽きなんだ。俺には荷が重過ぎた・・・三上の目的は結局わからないけど、今なら少し分かった気がする。お前は、その重荷を何とかしようとしたんだろ・・・
三上は俺の心臓にゆっくりと剣を突き立てた。呼吸が薄くなっていく・・・眠くなって来たな・・・
・
・
・
・
・
『ダメだよ・・・』
誰だ?
『立って・・・』
無理だ・・・俺はもう死ぬんだから。
「・・・おい!俺はこんな腰抜けを背中に乗せた覚えはねぇぞ?」
っ!?今のって・・・
「ランサー?」
俺の目の前には前に見た、一頭の馬がいた。ランサー デッドホーク、何故ここに?てか、ここは何なんだ?
「よぉ、お前の情けない声が聞こえたから来てやったぜ?」
「何でここに・・・てか、普通に喋ってる?」
「当たり前だろ、これは意識の中の会話だぜ?」
意識の中?
「お前が三上って奴と戦ってるのはお前の意識を通じてずっと感じてた。そして、そいつ相手にボコボコにされた挙句負けようとしてた事もな・・・お前に主人公の素質がないだって?アホか、てめーの人生って物語の主人公がてめーじゃなけりゃ誰がやるってんだよ」
「けど、俺じゃ三上の相手には・・・」
『バコンッ!!』
俺はランサーの前足で蹴飛ばされた。
「痛っ!?」
意識の中なのに普通に痛い・・・
「あのなぁ、あいつがめちゃくちゃ強い事くらい俺にでも分かるわボケ。で、それがどうした?俺たちはその程度で根を上げる奴に未来を託したってのか?ぁあ?」
「・・・ごめんなさいッス」
「あー、ダメだこりゃ、とんだクズを背中に乗せちまった訳か。おい桜蘭、お前あちこちで約束してたよな。必ずあいつを倒すってよ、その約束はどうすんだ?」
「・・・」
「そうだよ!俺たちは君に託したんだから!!」
はっ?え、誰?カラス?カラスが話してる。
「俺たちはずっと見てたんだ、お前の力を通してな・・・そして信じたんだ。お前が人間にそうさせたように、俺たちもお前を信じた」
これは・・・あの時見たユニコーン?それだけじゃない、ここにいるのは動物たちだ・・・犬や猫もいればユニコーンにドラゴン、ペガサスまで・・・けど、みんな当たり前のように普通に話してる。
「俺の・・・力?」
「そうだよ、君の力・・・それを理解するのは後一歩踏み出す勇気があるか無いか。君は、どうしたいの?」
後ろから囁かれる。
「桜蘭、お前はもう逃げて良い立場にはいねーんだよ。お前の言葉はこの世界の人間の意志を変えた。お前にはそれを見届ける義務があるだろ、この人たらしがよ・・・力を使え、それで三上を倒せ。最後まで貫き通せ、お前の意志を。
覚醒出来ない理由は素質が無いからじゃない、お前にだって自分の物語を持ってるだろ、素質は誰にでも、どの物語にでもある。後は、お前がその物語を認めるかどうかだ・・・お前は物語の主人公になる覚悟はあるか?」
ランサーは額を俺の頭にくっつける。その瞬間俺には全てが見えた。みんなの戦う姿が・・・期待を胸に俺に祈るこの世界の人たちが。みんな・・・俺を信じてるのか?
「君の旅に意味はあったよ・・・でなきゃ、君はここまで来れなかった。けどあの日、君が旅を始めた日、君はその全てに責任を負った。君は、君の物語を完結させる義務がある・・・見えるでしょ?君を信じてる人たちがさ・・・この物語は、君が支配者を倒す物語、そして、この支配を知る物語さ。その物語を、こんな所で終わらせるの?」
後ろの声は俺に問いかける。
「終わらせたくない・・・俺は、やっぱりあいつに勝ちたい・・・勝って、ハッピーエンドを、みんなに!!!」
「なら、覚悟を決めな・・・舐め腐った自分と決別しろ。そして、自分の殻をぶち壊せ!!」
「さぁ、目を開いて・・・自分に勝って、そして彼に勝って!」
「っっっ!!!!ぅぅぅぉぉぉおおおおおおおおおおっっっ!!!」
力よ湧き起これ・・・俺を超えろ、俺を許すな。今、ようやく見えた。俺の、本当の意志がっ!!
気がつけば俺は俺に突き刺さってる三上の剣の握り、力任せにそれを引っこ抜こうとしていた。
「うん、これで終わり・・・っ!?なにっ!?」
力を振り絞れ!!俺よ立ち上がれ!!この剣を抜け!!!
「・・・いや、ごめん。どうやらそうも行かないみたいだ・・・電話切るよ?ようやく本気になって戦えそうだ」
「だぁぁぁぁあああああああっっっ!!!!!!」
そして剣を勢いよく引き抜いた、胸から血が噴水のように飛び出す。
「・・・ようやくこれで君の覚醒が見られるね、さぁ・・・来っ」
俺は剣を三上に投げつけていた、三上はそれを防ぎ切れなかった。防いだ左手を貫通し、剣は三上の胸に刺さる。それでも勢いは衰えず三上は壁にまで吹き飛んだ。
ようやく掴んだ・・・そしてようやく決められた、あいつを殺す事への覚悟が。
夜が明け、太陽が俺たちを照らす時、俺は遂に覚醒した。




