リメイク第二章 AWAKE BY FOOD
俺が階段を登ってる頃、フォックスと他のみんなは相対していた。
「さーてとー、ほんじゃおいらから行くよー」
フォックスは大きく息を吸った。
「グレイシア、まずはどうする?」
「まずは避ける」
『ズゴゴォォォッ!!!』
その次の瞬間、フォックスは息を吐くと同時に巨大な炎の波が一気に押し寄せた。
「うあっつ!!?ちょっと!フォックスちゃんの魔法って!こんなにヤバかったのっ!?」
エルメスは柱の影に隠れながら叫んだ。
「フォックスは昔から炎の魔法が得意だったから、魔法の練度に関してはレイよりも圧倒的に上」
「へへーん!伊達に五百年、生きてないさね!」
フォックスの炎は中々収まらない。
「むぅ、ふぉっ!?あっつっ!!!この炎の温度!!何度でござるっ!?まるで溶鉱炉ではござらぬかっ!?」
「わたくしの見る限り、確かにこの炎は1000度は超えてそうですよね!!わたくしのこの炎神の最高出力でようやく引き出せるレベルです!!それをこんな一瞬で!!」
零羅はフォックスを確認しながら隙を伺うが、隠れている壁が少し溶け出したのを見た。
「グレイシア!!このままじゃ私たち丸焦げよっ!?」
エルメスがグレイシアに問いかける。
「大丈夫、もう終わるから・・・けど、ここからがフォックスの本気・・・」
「ふぁっくしゅんっ!!!んお、変なくしゃみ出た・・・」
フォックスがくしゃみした瞬間、炎は止まった。グレイシアはその瞬間を見計らって周囲の炎を一気に凍らせて鎮火し、フォックスの前に出た。
「ふぁ〜、やっぱ最近花粉酷いよねぇ。だとしたら炎の吐息はダメかぁ。んおっ!!そうだ!!ねー!ねー!グレイシア!!あれやっても良い!?」
フォックスは興奮しながらグレイシアに何か許可を求めた。
「レイが全力で良いって言ったなら、私が止める理由無いから。みんな、覚悟は良い?フォックスの本当の力は・・・レイですら解析出来なかったから。科学で証明出来ない力、フォックスの扱うのは、本当の意味での魔法になるから」
グレイシアの言葉に一同は身構えた。それと同時にフォックスは背筋をぐいーっと伸ばす。そして目を瞑って何か集中すると、
「ふんーっ!!」
あまり気合いの入ってない掛け声と共に、フォックスの周りに青い炎の玉がふわふわと浮かんだ。
「炎が青い?」
「ガスが何かでござるか?」
「いえ、あの炎・・・わたくしたちの魔法とは、何か違う気がします」
「ふっふーん、これがおいらの力さねっ!!威力の程は!!実際に食らえば分かるよあんちゃんたちっ!!」
炎の玉の一つが麗沢の方へと飛んでいった。
「むむっ!!お!この程度の速さならば!!拙者のこのフライパンで逆転満塁ホームランでござる!!」
麗沢はフライパンをバットのように構えた。そして麗沢もフライパンに炎を灯す。
「行くでござるよー!!」
「飛んでけーっ!!」
麗沢が炎の玉にフルスイングしようとした時だった。
ぐいっ!!!
「の、NOOOOOっ!?」
突然グレイシアが麗沢を横に引っ張った。麗沢はその反動で横にコロコロと転がっていく。そして壁の近くで足を頭の上に持って来た状態で止まった。
「あはははっ!!!変なの〜!!面白いなあんちゃん!!」
フォックスは麗沢を指差して大笑いしてる。
「おーのー、何するでござるか・・・よ、ごろんと、どっこいしょういち」
麗沢はよっこらせと起き上がる。しかし、起き上がった瞬間、麗沢は肝を冷やした。
「と、溶けてる・・・」
そして肝を冷やしたのは麗沢だけじゃ無い。零羅もエルメスも、口を大きく開けて固まっていた。
フォックスの炎は、地面を完全に溶かしていた。あのまま麗沢がフライパンを振れば、腕ごとフライパンを溶かされてしまっていたのだ。
「レイサワ、フォックスのあの炎に無闇に手を出しちゃダメだから。あのフォックスの青い炎の温度は摂氏一万度、そのフライパンなら一瞬で溶けちゃうから」
「い、一万でござるっ!?ま、待たれよ!!そんな高温って、炎の形になるのでござるかっ!?」
「・・・それを実現するのがフォックスさんの魔法、と言う事なのでしょうか」
動揺する麗沢に零羅は冷静に考察した。
「そう、あの炎は一万度ある。けど、その炎の熱は炸裂しない限り熱はあの炎の中にだけ存在する。だから手を上にかざしてもあの炎は熱くないから」
「なるほどね、ならフォックスちゃんのあの炎を喰らわないようにするのなら先手必勝しか無いって事ね。あの炎をどう封じるか、それにこの戦いは掛かってる」
「はーっはっはー!!どんなもんだい!これでもまだおいらの全力パワーには程遠いんだよぉー!あ、けどさぁ、これやってお肉焼こうとしたら一瞬で炭になっちゃうんだよ、普段使うには要らないんだよねぇ」
フォックスの余裕っぷりにみんなは息を呑んだ。あの強烈な炎ですらまだ序の口、それは嘘では無い事はフォックスのテンションで容易に想像出来た。
「それにさぁ、これ使うとめっちゃ疲れるんだよぉ〜。くわぁ〜・・・今でも使ってみたらなんか眠くなって来ちゃって・・・」
フォックスは大きなあくびをした。
「む?フォックス殿のこれは、余裕というより・・・」
「疲れて眠たくなったと言う事ですか?」
麗沢と零羅が顔を見合わせた。そして、エルメスが視線を送った瞬間。
『とりゃーっ!!!』
一同一斉にフォックスに攻撃を仕掛けた。
「うひゃぁっ!!ちょっ!!!まっ!!それズルじゃないのっ!?」
「ずるくないから、使って疲れたのはフォックスのせい」
「ちょーっ!!まじかーっ!!」
フォックスはぴょんぴょん跳ねながら攻撃を避ける。
「守りに入ってるわね!!私も加勢するわっ!!」
そしてエルメスがさらに応援に入る。
「わーっ!!エルメスも早いって!!」
「私もいるから」
そしてグレイシアが氷の剣を飛ばして、フォックスを追い込んで行く。
「くーっ、こうなったら・・・ふぁ、ぶえっくしょい!!!」
「ぬおっ!?」
フォックスはくしゃみと同時に特大の炎が放たれた。それを避けようと一斉に後ろへ下がる。
「ずびっ、どんなもんだい!おいらのおはこ!くしゃみ爆弾さねっ!!」
「素晴らしい一撃ですね、しかし!!皆さんは押さえてもわたくしには通用しませんよっ!!」
「うひーっ!?」
そのフォックスの攻撃に反応し、同じ威力の炎をぶつけて相殺し、零羅は間髪入れずに特攻を仕掛けた。
「早い!早い!早いよぉ!!」
「早いのはあなたの方ですよフォックスさん。わたくしの攻撃を持ってしても、掠りもしないなんて」
しかし、零羅の攻撃は慌てながらもフォックスは全て見切り、かわして見せた。
「だって掠ったら危ないよーって、礼兄ちゃん言ってたもん。だからねぇちゃんの攻撃を頑張って避けてるんだよぉ。お陰で反撃出来ないし」
「速度はあなたの方が上と言う事ですか。どうやら、わたくしとは相性があまり良く無いのかもしれませんね」
「んお?おいらはねぇちゃんと仲良くしたいけどなぁ。おいらフォックス、仲良くしよーよ、えっと・・・」
「神和住 零羅です、よろしくお願いしますねフォックスさん」
「そうそう!零羅ねぇちゃんね!よろしくぅ!!」
零羅とフォックスは再び炎をぶつけ合った。
「てりゃーっ!!」
「・・・フォックスさん、一つ聞いてもよろしいですか?」
「んお?なんだい?」
「あなたは何故、ここで戦うのですか?」
「んー?そりゃ礼兄ちゃんが遊んで良いよって言ったからさね、昔からたまに礼兄ちゃんとこうして遊んだんだぁ。どっちかが気を失うまで全力でケンカするのさ、これがたまにやると楽しいんだよね〜。んでさ、こうやってたくさん動いた後に食べる焼肉はもう最高なのさね!!」
「つまり、わたくしたちはフォックスさんの遊び相手と言う事で良いのですね。なら、全力で遊びましょうか!!わたくしも!ただ全力を尽くす事は嫌いではありませんからっ!!」
「んおっ!!零羅ねぇちゃんすごいやる気!!おいらワクワクして来たよっ!!」
「しかしっ!!遊ぶのはわたくし1人ではありませんよっ!!」
「拙者も!」
「私もよっ!!」
フォックスの後ろに麗沢とエルメスがまわり込んだ。
「うりゃーっ!!」
しかし、それを見透かされていたかのようにフォックスは身体を自在にくねらせて全ての攻撃を軽やかに避ける。
「くそー、同じ丸い体型なのにレイサワとは大違いねっ!!」
「むっ!!エルメス殿!拙者短距離なら無敵でござるがっ!?」
「ならフォックスに追いつきなさいよっ!!」
「あうち」
エルメスが麗沢にツッコミを入れる。
「おらー!隙ありだぞーっ!!」
その瞬間をフォックスは見逃さなかった。強烈な炎が2人を襲う。
「ん、」
だが、その炎は2人の目の前でかき消された。グレイシアの氷の壁がそれを一気に防いだのだ。
「おっと、すまぬでござるグレイシア殿」
「それは別に良いから、けど、多分次は防ぎきれないかもしれないから」
「・・・っ!?グレイシアまさか、その氷が薄っぺらいのって・・・」
グレイシアが手をかざしている目の前の氷は、薄い氷の板だった。
「そう、私は氷を厚さ一メートルくらいは作ったつもり。けど、フォックスの炎は私の氷を紙くらいにまで削ったから」
「んお?やりすぎちゃった?ごめんよー、今まで礼兄ちゃんが相手だったせいかね、加減が分からなかったんだよぉ」
フォックスは前足を合わせてぺこぺこと謝る。
「フォックス、謝らなくて良いから。次もこれか、これ以上で来て、私たちを即死させるくらいの勢いで良いから。レイサワ、エルメス。そう言う事だから、もっと集中して」
「は、はい」
「肝に銘ずるでござる」
麗沢とエルメスはグレイシアに説教されて少ししゅんとしたが、すぐに切り替えた。
次はもう命は無い、2人は気持ちを切り替えて構え直した。
「ほんなら、もっと本気で行くよーっ!!」
そしてフォックスの炎は更に勢いを増していく。
「拙者も炎が得意でござるが、お主のは別格でこざるなっ!!」
「へっへーん!おいら結構やるでしょ!?」
「結構なんてレベルじゃないでござるよ!今までの誰よりも強いではござらぬか!」
麗沢はフォックスの攻撃をフライパンで防ぎながら防戦を強いられる。
「へへっ!負けないよーっ!!」
しかし、そのフォックスの猛攻の中、零羅はある違和感を感じていた。
「グレイシアさん、フォックスさんっていつもああ言う感じなのですか?何か、元気なんですけど少し違和感を感じるのは、わたくしの気のせいでしょうか?」
「・・・私も感じてる。いつものフォックスじゃ無い、無理して自分を演じてる・・・」
「あ、それは私も思った。いつもは疲れたらぐでーってなるのに、今日はやたらと全力出したがるよね」
エルメスもフォックスに違和感を覚えていた。
「ふぅ〜、疲れた〜・・・けど、まだまだおいらやれるよ〜っ!!」
フォックスはぐい〜っと身体を伸ばすと、呼吸を整えた。
「なんのこれしき!!」
麗沢もフライパンを構え直す。
「わたくしたちも!!まだまだです!!」
そして零羅たちも武器を構えた。
「おりゃーっ!!」
「ひょぉっ!!」
フォックスとの戦いは更に激しさを増した。フォックスは通常の炎と、時折青い炎を使い分け、零羅の攻撃も、グレイシアの冷気すら封じ込めた。全てはフォックスの優勢で戦いは進む。
「はひー、流石に四対一は疲れるよぉ〜」
「なら降参する?」
グレイシアがフォックスに聞いてみる。
「えー、それはやだ〜」
けどフォックスはゴロゴロと転がって嫌がった。
「フォックスさぁ、なんか今日やたらやる気じゃない?どうしたのよ急に」
そしてエルメスがフォックスの違和感について聞いてみる事にした。
「んお?そりゃやる気にもなりますよっ!何故なら!おいらがここであんちゃんたちを食い止めた暁には!最高ランク高級ステーキ食べ放題なのさね!!夜は焼肉っしょー!!こんがりウェルダンステーキさっ!!」
「はぁ〜っ!?ステーキぃぃ!?」
エルメスはフォックスがやたらとしぶとい理由を聞き、ため息混じりの声がでた。
「そうさねっ!!その為ならおいらはっ!!」
「ちょっと待たれいっ!!フォックス殿っ!!」
フォックスが話を続けようとした時、麗沢が話を止めた。
「今、なんと言ったでござる?ステーキの焼き加減についてもう一度、リピートアフターミーでござる」
「んお?え、こんがりウェルダン?」
『ズゴゴォォォンッッ!!』
「な、ななななんだぁっ!?」
麗沢は一旦頭を抱えて思い切りフライパンを振り下ろした。
「それは、本気でござるか?」
「な、何がさ・・・」
「フォックス殿は!!最高ランク肉のステーキを!!ウェルダンで食すのかと聞いているっ!!」
麗沢はくわっ!!と表情を険しくする。
「えっ!?ダメぇ!?」
「ダメっ!!最高ランクのステーキでござるよっ!?火の扱いは最重要項目!!最高ランクを食すならば!!ミディアムでござる!!ほんのりピンク色!!それ以上だと肉が固くなり!脂の甘みが失われてしまうのでござるっ!!」
「ふぁ〜っ!?」
フォックスは完全に麗沢の勢いに驚いて固まってしまっている。
「ちょちょ!!レイサワ!ストーップ!ストーップ!今そんな事語ってる場合じゃ無いで、ぎゃっ!!」
エルメスが麗沢を止めようとしたが、グレイシアがそれを止めた。
「何すんのよっ!!」
「このままにしてみた方が良いかも・・・」
「あん?」
麗沢の勢いの語りはよりヒートアップして来た。
「確かに!!肉は部位によってはウェルダンが最も美味しくなる部分もある!!そうっ!世の中には様々な食材がありっ!そこにはそこから生まれた様々なレシピが存在するのである!!そして!それらを作る人々によっても味は変わるっ!!人それぞれに個性が出るっ!!つまり!料理とは芸術であるっ!!その中で拙者が見出した一つの光明!それはっ!!高級ステーキにはミディアムで!でござるっ!!」
麗沢の話はかなり逸れ、料理と芸術に関する講義に変わった。
「お、お、お?」
あまりの勢いにフォックスは困惑し、何もできない。
「我々は一体なんの為に食事をするのかっ!!生きる為!?否っ!!では何かっ!!それは愉しむ為でござるっ!!我々は食事を愉しむ事の出来る生物なのだっ!!ただ生きる為に食事を摂るのではないっ!!そうっ!!食事とは正に!世界を平和へと導く手段なのでござるっ!!お腹がいっぱい!心も満腹!!そしてっ!食事を最大限に愉しむ要素は誰と共に食事をするのかであるっ!!故に拙者はっ!!!拙者は・・・お?」
麗沢は突然演説をやめてしまった。そしてそーんとした顔で正面を見つめている。
「あ、あんちゃ〜ん?どないしたん?」
フォックスは麗沢に恐る恐る近づいてみた。
「・・・・・」
「おーいレイサワー?ねぇグレイシア、こいつ何なのよ・・・前から思ってたけど、変わってるなんてレベルじゃ無いわよ?」
「うーん・・・」
流石のグレイシアも首を傾げてる。
「まさか・・・あの極度の興奮から一転してこの落ち着きある感覚は・・・」
その中、零羅だけが現実に起きた事を推測した。
「お、覚醒ktkr」
麗沢は覚醒してしまった。




