リメイク第二章 LAST FLOOR BY LAST LEADER
「おるぁっ!!!この部屋にいんだろ!!出てこんかわれぇッス!!」
「御用改めである!!!キリッ!!」
59階の分電盤のある部屋・・・じゃなくて隣にあるセキュリティールーム。
「よよーっ!!よく分かったねー!!」
「麗沢の耳舐めんなよっ!!」
俺たちはモニターがいっぱい並ぶ前にふんぞりかえってたあいつに剣を突きつけた。
「うらっ!!覚悟しやがれ!!」
「ちょちょちょ!!タンマ!タンマ!!」
俺は一発殴ろうとしたが、一応何か言いたそうだったから止めた。
「辞世の句なら聞いてやるけど?」
「よよ、めっちゃおこだな〜。そんなに怒んないでよ、こっちは色々感謝してるんだよ?」
「感謝?」
「そそ、あのバケモノちゃん、一撃で殺してくれたでしょ?それに、害獣ちゃんたちは誰も殺さなかった。サクラ君よ、命ってのがよく分かってるねぇ〜」
「むっ!?命を粗末にした其方が何を言うでござるか!!」
珍しく麗沢が怒ってる。
「粗末!?ぼくちんそんなことしないよ!!あの子たちはみんなぼくの大切な家族だもの!!今日はミカミ君の許可貰ってここで遊んだだけだよっ!?」
そしてこいつはそこに反論してきた。
「家族だと?あのバケモノもお前の家族だって言うのか?」
「うーん、あの子はどうにも家族にはなれなかったよ。あの子はずっと死にたがってたからね。ミカミ君の実験に使われ、ミカミ君でも中々殺しきれなかった個体なんだ。だから、君のお陰でようやく死ぬ事が出来たみたい」
こいつ、最初に比べて印象が変わったな。なんと言うか、丸い奴が丸くなった感じだ。
「お前・・・何がしたかったんだ?」
「ぼくちんは確かめたかったのさ、君たちが上に行く覚悟のある勇者かをね。あわよくば君たちにはミカミ君の言う所の覚醒をやって欲しかったけど、そう上手くはいかないねぇ。けど、合格だよーん。その目は昔見たミカミ君の目と同じだ」
こいつ・・・中々の演技派だな。こいつはわざと俺たちを怒らせるような事を言ってたってのかよ。
「ほら、先行きなよ。残る時間は三時間程だよ?そろそろ空が白んでくる頃だねぇ」
窓の外を見てみると薄っすらと空が紺色になって来ている。
「やれやれ・・・お前よくわかんない奴ッスね」
「よよよ〜、他人をそんな簡単に理解出来たら人生苦労しないさ〜」
こいつ、人を小馬鹿にしてるようで自分の人生観は案外しっかり持ってるんだな。そう言えばあのおばさんが母親みたいな事を言ってたけど、まぁ、あの人しっかりしてそうだったからな。
「お前、名前は?」
「ハミル!!ハミル アグレッサー!!」
『ドドンッ』
ハミルは体型に似合わないポーズを取った。
「むっ!!そのポーズは!この世界の特撮番組!!仮面バイカー二号のものでござるなっ!?」
「よよっ!?分かる!?」
「無論っ!!拙者のオタク道は特撮より入門した身!!異世界だろうとなんだろうと、特撮は拙者の栄養でござる!!」
そう言えば旅の途中のテレビで食い入るように見てたな・・・
「よよよっ!!ならば!!仮面バイカーの中で推せるキャラはっ!?」
「それはもちろん!!」
「はいはい、その話はまた今度な。今は上に行くっ!!」
俺は麗沢を連れてこの部屋をでた。
「しゃっぁ!!早くサクラに追いつくわっ!!!ってぎゃぁぁっ!!!」
「なはーっ!!!」
勢いよく駆け上がってきたエルメスとまた正面衝突した。
「よよよ〜、二人とも仲良しだねー」
ハミルがひょこっと部屋から顔を出しておちょくって来た。
「うっさいわっ!!てかサクラっ!!こいつとの勝負どうなったのよっ!?」
「あ、あぁ。一応終わったッス・・・てかみんな、早くね?」
俺はそれよりもみんながもう来た事に驚いた。でもこれなら、みんなで上に行ける・・・みんなでなら、三上を今度こそ倒せる!!
俺は強く拳を握り締めた。
でも、これで良いのか?俺、本当はあいつに自分の力だけで勝ちたい・・・いや、世界の命運がかかってるのにそんな事言ってる場合じゃないな。
「無論よ!私たちだって強いんだから!ほら、早く立ちなさい。この上が最上階の玉座の間よ」
俺はエルメスに引っ張り上げられ、最後の階段を登った。
階段の先の玉座へ続く回廊、ここの階には窓が無いのか。灯は燭台形の・・・電球かね、俺たちは回廊を進む。
「二年前ね、ミカミがここで全ての警備を倒しながら玉座へ侵攻して来たの。私はそこの部屋でパーティーに参加してたのよね」
この王室、パーティールームどんだけあるんだ?
「そして、ここが玉座の間・・・」
目の前に現れたのはやたら荘厳な扉、俺はその扉を開けた。結構重たいな・・・そして扉が開くと燭台の灯りに照らし出されたのは一つの大きな椅子。あれが玉座か・・・でも、あれ?
「三上は?」
この部屋、誰もいない?見渡せど見渡せど、この玉座・・・誰も見当たらない。
「お、何処かに隠れて・・・は、無いでござるよな」
「物音で麗沢さん気が付きますものね。匂いを嗅いでみましたけど、特にこれといった三上さんの匂いはしないです。と言うか、ずっと三上さんの匂いがそこかしこでしてますね。桜蘭さんの目は何か見えます?」
俺は玉座まで歩いて周囲を見渡した。けど、何か動くものは見当たらないなぁ・・・あ、俺は玉座を見て少し思いついた事があった。
「先輩、今はこんな事をしてる場合ではござらん」
「いっぺんやってみたかったんスよ」
俺は玉座にどかんと座ってこれみよがしに足を組んでみた。玉座に座る機会なんて滅多に無いからな、少しだけだ。
「にしても、ここに座っても三上はどこにも・・・」
くんくん、
「ん?この匂いは・・・あ、桜蘭さん上!」
零羅が上を指さして、俺は上を見る。その瞬間俺の視界が何も見えなくなった。
「むがっ!!」
何かが上から降って来たんだ。これは、まさかエルメス・・・じゃないな。エルメスは基本石頭が飛んでくる。これは、なんかモフモフしたやつだ。
「くぁぁ〜・・・・グレイシアお帰り〜、旅行楽しかったぁ?」
すんごい呑気な声、そしてその声の主は俺の膝に乗った。
「え?へ?」
俺はこの膝の上の生き物に困惑した。そもそも今のって、本当にこの生き物が話したのか?
「ただいまフォックス、寝てたの?」
「むにゃむにゃ、そんなとこだねぇ。朝早いもん、あ、グレイシア帰って来たって事はそろそろおいらの出番って事かい?」
「そんなとこだから」
その生き物は膝の上で飛び跳ねる。
「あ、あのさグレイシアさん・・・フォックスって、まさか・・・そのまんまの意味って事?」
「ん?あぁ、確かフォックスにはキツネの意味があったね」
「んお?違うさあんちゃん!!おいらその名は本名の一部さね!!おいらの名は!マイケル!J!ふぉっ!ふんがっ!!」
グレイシアさんはその生き物の口を押さえてそれ以上喋らないようにさせた。
「何すんのさぁ!!」
「それ以上はダメな気がしたから・・・」
「ぷー。まぁいいさね、改めて、おいらが噂のフォックスだ。よろしくなあんちゃんたち」
その生き物・・・いや、茶色の毛並み、黒い足、長い尻尾。もうこれは完全にキツネだ。そのキツネは俺に肉球を見せてきた。
「・・・・・あ、うん、よろしく」
俺はそんな反応しか出来ない。これ、喋るキツネについてツッコミを入れるべきなんだろうか。俺の想像の斜め上過ぎて考えが及ばない。もういいや、ここは異世界だからって理由でなんとでもなれ。
「と、ところでフォックス・・・殿?三上殿はどちらに?」
麗沢はそろりそろりとフォックスに尋ねる。
「んお?礼兄ちゃんは屋上さね。あ!そうそう!みんな礼兄ちゃんと遊びに来たんでしょ?けどね、礼兄ちゃんは一人しか寄越しちゃダメなんだって。誰が言っていいかはこの・・・ほれ、このサイコロで決めて〜って言ってた」
フォックスは器用に背中から大きめのサイコロ見たいのを取りだした。面にはそれぞれ名前が彫られてる。俺、麗沢、零羅、エルメス、シィズさん、グレイシアさん。その6人だ。
「え、もしかしてこれ出た目の奴が三上と戦うって事ッスか?」
「そゆことらしいよー、礼兄ちゃんけっこー博打好きだもんねー、出た目以外の人がおいらとここで遊ぶんだってさ。あ!けどさ、そこのシィズの目のとこ!そこ出たら全員上に来てだって!もしくはおいらがぶっ倒れちゃったら上に来てもいいよだって!」
つまり、シィズさんの目が大当たりって事か。ったく、せっかくみんなで来れたのに・・・こんな時にあいつなんつー賭けをしやがるんだよ、戦いたくないの?
「・・・フォックス、そのサイコロ見せて」
グレイシアさんがフォックスにサイコロを見せるように言う、フォックスはひょいとグレイシアさんに渡した。
そしてグレイシアさんは指で弾いてみたり、振ってみたり、色々やってる。
「みんなも見てみて、レイの事だから何か仕掛けしてると思ったけど。そうでもないみたいだから」
そしてサイコロを俺たちに渡して来た。うん、よくわからんけど、なんの変哲のないただのサイコロだな。
「うん、問題ないわね」
「イカサマは特に見当たらぬでござる」
「これあれですよね?半か丁かってやる」
零羅に至ってはサイコロが見た事ないらしい。てかなんでそんな渋い賭け事知ってんだ?
俺はサイコロをもう一度グレイシアさんに戻した。
「なら、フォックスがこれ振って。私たちだと多分変に気が散って確率がズレるから。フォックスなら一番均等な確率で目が出る」
なーるほど、フォックスに振らせる為にグレイシアさんは細工が無いか確認してた訳だ。
「んお?おいらが振っていいの?なら遠慮なく行くよー、てーいっ!!」
フォックスは前足でサイコロを掴むと天井近くまで飛ばしてしまった。
サイコロが落ちてくるまでのこの間、俺は様々な思いが駆け巡った。フォックスさえ倒せば世界の危機は回避されると三上は言った。つまり、その時点で俺たちが戦う理由はもう無くなる。
けど、それは俺たちが旅をして来た意味を全て捨て去る感じがする。なら、どうする?上に行けるのは1人だけ、あたりが出れば全員で行ける・・・けど俺は、俺1人であいつを超えたいと感じてる。
これは、わがままなんだろうか、それとも俺も三上同様、戦いに何か快楽みたいなのを見出してしまったのか。分からない・・・俺は、何がしたいんだ?
サイコロはようやく落ちて来て玉座の前の段差を転がり落ちる。
「何が出るかな♪何が出るかな♪」
フォックスは呑気に歌ってる・・・下手だなぁ。
「んお!?これって!!まさか!!」
サイコロが段差の角で動きが止まろうとした、上に出てる面は、これは・・・シィズ?まさか、ここに来て運が味方した?
だが、その瞬間にフォックスはぴょんと飛び跳ねた。その衝撃でサイコロはもう一段下へと落ちる。そして面が出た・・・
「あ、これって・・・」
「んお〜、えっと・・・礼兄ちゃん、漢字で書かないでよぉ、さか・・・かみ?グレイシア、これなんて読むの〜?」
「サカガミ サクラ・・・君だから、礼と決着を付ける事が出来るのは」
グレイシアさんがじっと俺を見つめた。その目は全てを託した、そう言ってるように見えた。
「はへ〜、これでサクラって読むの。おしゃれな名前してるねぇ〜。ほんじゃ、桜蘭のあんちゃんは上に行ってね、礼兄ちゃんは屋上にいるよ、頑張ってねぇ〜。んで、後のみんなはこのおいらが相手するんだよね。えっと・・・お、このメモだ。んしょ、おいらは変なコレを背負って?これが壊れるまで全力で遊べ・・・」
フォックスは玉座の横にあった箱からリーダーの装置を取り出し、器用に背中に背負った。
「みんな、行ってくるッス」
「先輩、無茶は禁物でござるよ。なんせ相手は三上殿でござるからな。大丈夫でござる、必ず拙者駆けつけるで候、キリッ」
麗沢はサムズアップしてみせた。
「フォックスちゃんと戦う事なんて今まで無かったけど、この調子なら行けるわ・・・だからサクラ、絶対に無理はするなよ?」
エルメスは俺の肩を叩いた。
「出来る事ならすぐにでも駆けつけたいですが・・・フォックスさん、なんとも言えない風格を感じますね・・・桜蘭さん、三上さんと戦うのなら、アドバイスが一つあります。三上さんの目を見るのはかなり危険です。目を見ず、攻め続ける。これが三上さんが戦いにくい戦法となり得ます」
そして零羅からはアドバイスを貰った。けど、みんな俺では勝てないと言ってるように聞こえる・・・そりゃそうか、俺は弱い、三上は強い。これまで散々見せつけられたもんな。
独りよがりで抗っても、そもそもあいつと同じ土俵に立ってない俺じゃ時間稼ぎが出来れば良いところか。
「サクラ・・・」
その時、グレイシアさんが俺の耳元で囁いた。
「君がレイを殺さなきゃ駄目だから・・・だから、君はレイに勝たなきゃだめ。サクラ・・・必ず終わらせて」
グレイシアさんの言葉・・・なんか、これまでよりもっと重々しい・・・これまではなんだかんだ三上は死んでいないと感じてたみたいだ。でも、今日、この場所で三上は必ず死ぬ。
グレイシアさんは今、それを実感したと言ってるみたいだ。
「・・・分かった、約束する」
勝て・・・何が何でも勝て。俺は三上を超えたい、単純だけど純粋な願いだ。
「みんな!!行ってくるッス!!」
俺は1人、玉座の奥の扉から屋上へ続く階段を登る。




