リメイク第二章 BUILDING BY GLACIAR
『十二階、レストランフロアです』
俺たちは飲食店が立ち並ぶ12階まで着いた。ここのエレベーターはここまでしか来ていない。更に上に行くには別のエレベーターに乗り換えなきゃ駄目らしい。
けど、ここより上の階はまた電気が通ってないみたいだ。つまり、また分電盤探しをしなきゃダメらしい。
「グレイシアさん、ここの上に繋がる分電盤ってどこかわかるッスか?」
「ここのはバックヤードにあるから、けどそこに敵はいる筈」
「でも、流石にあんなせんしゃ?なんてこんなとこには持って来れないわよ?」
あんなのがこの階にいたら穴開くわな。
「だね・・・エルメス、それよりもこのビルの構造は分かってる?」
「あ?何よ今更、ここ本来私の家よ?二年くらいしか生活してないあんたよりも理解してるわ」
「なら、先はエルメスに任せるから。ここの敵は誰がきても私が引き受ける」
グレイシアさんは突然そんな事を言い出した。
「なんか、この階にあるんスか?」
「この階の分電盤を通電させれば、十六階のホテルフロアから行ける王室直行のエレベーターが使えるようになるから。それを使わないと各省庁オフィスエレベーター、ホテル専用エレベーター、そして王室に続くエレベーターでしか四十九階に辿り着けない。それなら、王室関係者のみが使えるエレベーターを使った方が良い。
けど、それを使うには私の生態認証の許可がいる、もし私が乗ったらレイラが乗れなくなるから」
「あー、なるほど。そう言えばまだグレイシアの扱いはまだこの国の王女様だったわね、分かったわ。けどさっさと来なさいよ?」
こくり、
俺たちは分電盤の部屋に向かった、どうやらこの階には害獣はいないようだ、害獣は下の階の方をうろうろしてる。このレストラン付近にはいないみたいだ。
『ガコンッ・・・』
「これで、王室入り口までは行ける・・・後は多分、玉座に行く為のエレベーターを起動させれば・・・けど、来るから」
殺気だ・・・グレイシアさんの言う通り感じるが、何処から?前後左右にはいない、上下にも、天井にもいない・・・だとしたら、
「外っ!?」
『バリィィィンッ!!!』
突然頑丈そうな窓ガラスは破られた。ガラス片が俺たちに襲いかかる。けど、そのガラス片たちはグレイシアさんの冷気で一気に止めてしまった。
『シュルルルルルルルルッッ!ガチィンッ!!!』
そして今度は外から何かが壁に打ち込まれた。これは、ロープ?いや、アンカーみたいのが刺さった。そしてその次は・・・
「っ!!みんなっ!!避けろっ!!」
俺の掛け声で一斉に壁の間に俺たちは隠れた。その次の瞬間、大量の矢みたいのが一気にこの12階フロアに外から打ち込まれた。
「うん、噂通り中々やるな・・・」
そしてそいつは窓の外からこのフロアに入って来た。片手にはボウガンみたいな武器、そしてもう片手には肩にまで固定具のあるリールの付いた銃みたいなのを持ってる。
「俺の名はポップス ダヴェンポート。王の命令により君たちの足止めに馳せ参じた。以後お見知りおきを」
少し気怠けなおっさんだ・・・けどなんか、こう言うのって強者の風格あるよな。着てるロングコートの少しヨレヨレ具合も三上なんかより似合ってる。
「あれ?グレイシア、確かこいつってさ・・・さっきはよく分からなかったけど・・・」
「うん、エイド地方随一の建築家にしてダヴェン製作所の社長。エルメスも付き合いあったんだ」
この2人、この人とそれなりに付き合いあったんだ。
「当たり前よ、この人の三次元ジップラインはアダムス方面の建築物に凄い影響与えたんだから。まさかと思ってたらこんなとこで何やってんのよ?てか、グレイシアはなんで知ってるの?」
「二十年前のゼロ討伐、その際偶然出会ったんだ。その際命を救われてな。てな訳で、久しぶりグレイシアちゃん」
「うん、久しぶり。で、君が私の足止めをするの?」
「誰かを足止めしなきゃならないからな。誰でも良いが、君が俺の相手するのか?」
こくり・・・
「そっか、君相手ともなれば手加減は無理だ。殺す気で行くから、構わないね?」
「君の使命がそうだと言うのなら・・・サクラ、早く行って。十六階まで行けばそこのエレベーターで四十九階に行けるから・・・」
グレイシアさんは一歩前に出た。そして、俺たちは階段で上に向かい16階にあるエレベーターに向かった。到着した瞬間ドアが開く、俺たちはそこに乗り込んだ。
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12階 レストランフロア
グレイシアとポップスは対峙している。
「さて、さっきのガラスの割れる音で下の害獣が上がってくる。それを対処しながらの戦闘になるか、それともそれまでに終わらせるかだな」
ポップスは右腕の銃を天井に向けて撃った。銃からはワイヤーが射出され、鉤縄状の金具が天井に刺さる。そして一気にそのワイヤーは巻かれ、ポップスは天井へと飛んだ。
そして左手のボウガンみたいな武器をグレイシアに向ける。
『ズガガガッ!!!!』
そしてボウガンから再び矢のような物がグレイシアに向かって射出された。グレイシアは軽くそれを避け、その一つを掴んだ。
「これ・・・釘?」
グレイシアは打ち込まれた釘を眺める。
「俺は軍人じゃない、一応建築家だから銃は使えない。それに、本物の銃の感覚なんて分からん。俺が戦闘で出来る事はこれくらいだ・・・釘打ち機を戦闘用に改造。
そしてあんたらと対決するなら機動力がいる、その為に三次元ジップラインの技術を応用した。右腕のこいつは鉤縄銃とでも言うのか。ワイヤーを射出して背中に背負ってるエアーとモーターの力で上下左右自由自在に飛び回れる。
さて、俺の戦い方は説明した、次はグレイシアちゃんだ。教えたくなければそれで構わないが、言わなければ俺は慎重に行動せざるを得なくなる。姿を隠して戦わなくてはならない。早く上に行きたいんだろ?」
ポップスはあまり喋りは得意ではない、なのにこんなにベラベラと喋ったのには理由があった。
「行きたいね。だからありがとう、ポップス・・・色々と話してくれたお陰で、かなりやりやすくなった。だから私の戦い方教えるから・・・多分、分かってると思うけど私の戦い方はとにかく馬鹿みたいに冷気をぶっ放すことしか出来ないから。特に、戦闘ともなると私・・・加減が無理だから!」
グレイシアは氷の剣を一気に上に振る、天井は一瞬で凍りついた。そのタイミングを見計らいポップスは外へと飛び出す。そしてすかさず壁にワイヤーを突き刺し、元のフロアへと戻った。
「そのワイヤー移動、早いね・・・」
「何年木の上で生活してきたと思ってる?何メートルある建物だろうが俺にとってはただ地面を走るのと同じ、君の攻撃は・・・俺を捉えられはしないさ」
「・・・接近戦は距離を取られる、魔法を使っても私の冷気より君の方が早い・・・君にとっては屋内も屋外も関係が無い・・・」
グレイシアはポップスを少し眺めた。そして再び冷気をポップスに放つ。
「いくら凍らせても無駄だ!無闇な攻撃は命取りになるよっ!!ほらっ!!こうして背後を取られる・・・」
ポップスはグレイシアの冷気をワイヤーを駆使し、この狭いフロアを駆け巡り一瞬のうちにグレイシアの背後に周り、釘打ち機を頭に突きつけた。
「そして私が下手に動けば君に負けるから・・・強いね、ポップス」
「さぁな、俺はいわゆる四天王の中じゃ最弱って言われるポジションだ。攻撃力なら下のジュネットの大砲が上だし、近接戦になればアシュリーになんて到底及ばない。そして頭はあのハミルは意外と良いんだ」
「もっと自分に自信持ったら?」
「そうしたいけど、どうにもね・・・戦いは苦手で」
「そっか、けど君は強いのは私は認めるから・・・そして、ここからは私も少し本気出すから。ポップス・・・私の魔法じゃ君の機動力には敵わない。なら、私も機動力で攻める・・・君と対等に戦える舞台は一つ・・・」
グレイシアは自分の周囲の地面を一気に凍らせた。そしてスケートのように地面を滑りグレイシアは外へと飛び出した。
「空中かっ!!」
グレイシアは外から屋内に向けて氷の槍を何発も撃ち込んだ、ポップスも再び外へ飛び出す。グレイシアは建物の壁から足元にかけて氷の橋を作り出しそれを足場に上に飛んだ。
『ズガガガッ!!ズガガガッ!!!』
ポップスはすかさず釘を打ち込むが、グレイシアは軽く手を振ると、氷の滑り台のようなものを作りだし、螺旋状に滑り落り、釘は全くグレイシアに当たらない。
そして氷の階段を一歩ごとに作り出し再び上へと駆け上がる。
「グレイシアちゃん、中々良い建築をするな・・・この外壁に自分の舞台を作るとは」
「それはちょっと違うから、私はただ動きやすいように階段とかを作ってるだけ。君と対等に戦える場所はこの空中戦にある」
次の瞬間、グレイシアの作り出した氷の建造物はガラガラと崩れた。
「なるほど、君の建造物を俺の足場には使えないと言う事か・・・」
「そう言う事、そして・・・足元に気を取られちゃダメだから」
ポップスの真上、そこには無数のグレイシアの氷の剣が作られていた。氷の剣はポップスめがけて雨のように落ちてくる。
「っ!!」
しかしポップスは少し顔を歪めながらもそれを掻い潜る。
「空中での戦闘でまさかここまで差が開くなんてね・・・みくびっていたよグレイシアちゃん、ならば!!」
「ん!」
ポップスはグレイシアの方に向けてワイヤーを放つ、そして一気にグレイシアの元へ近づいた。
「君の剣、一本だけ掴めた。接近戦の剣術ならばどうかな!?」
ポップスは釘打ち機を腰に下げて、代わりにグレイシアの氷の剣の一本を掴んでいた。
「んと・・・」
グレイシアは剣術が得意ではない。何度か切り結び、グレイシアは氷の滑り台で一気に12階に滑り戻り、距離と地の利を得る。
「無駄だよ、俺に距離を取るのは無意味だ」
「そう?なら、こっちに来て良いよ・・・もう私は勝ったから」
「ん?何を言って・・・っ!?これは、ワイヤーが出ない!?」
ポップスのワイヤーが突然出なくなった。その為、壁に鉤縄を刺す事が出来ない。ポップスはすぐに釘打ち機も取り出すが、これも全く出ない。
『パシ!!!』
なす術なく落ちていくポップスをグレイシアは掴んで、屋内に引き入れた。
「あぁ、すまないねグレイシアちゃん」
「こんな風に死ぬ事ないから」
「無論だ、この程度で死ぬつもりはない。けど、何故だ・・・全く動かない」
「君のそのワイヤーと釘打ち機はエアーとモーターって言ってたから、ここの外気温を一気に下げてモーターを凍らせてエアーも凍結した。だから使えなくなった」
ポップスは自身の背負っていたタンクを確認していた。
「一応寒冷地対応のを積んだんだけどな・・・下調べ不足か、まさかここまで低温になるとは・・・このままこれを背負ってたら爆発していたな・・・やっぱり強いな、グレイシアちゃんは・・・俺の負けだ。足をやられたんじゃ動けん」
ポップスはその場に座り込んだ。
「・・・ポップス、なんか今日元気ないね。どうした?」
「見抜いてた?」
「当たり前、君はそんな性格じゃないから」
「・・・ダヴェン隊長、一昨日亡くなったんだ。丁度その日にミカミが来てな。遺体に手を合わせたと思ったら、今日いきなりここに来てくれって言われてな。どーにも気持ちの整理が追いついてないんだよ」
「あー・・・それで元気ない」
「そんなとこかな・・・」
グレイシアはゆっくりと後ろからポップスにハグした。
「ん?何してんの?」
「悲しんでるのなら、こうしてあげた方が良いって昔レイが教えてくれたから・・・」
グレイシアはキョトンとした顔で答える。
「それは年下にしてあげなさい、俺と君じゃまるで不倫と思われる・・・ほら、ちょうど下からあの子が上がってきてるし」
ポップスがエレベーターを指差すと、1階から登ってくるエレベーターが一機いた。
「そっか、これは前にエルメスが言ってた勘違いを起こすって事だから?」
「そう言う事、あの子が上がってきたら早く追いかけろ。俺はここで下の階で様子見してる害獣をなんとかしておく。なに、こいつが使えなくてもバケモノを相手にする訳じゃないんだ。害獣程度ならなんとでもなる」
『キーン・・・十二階、レストランフロアです』
「ひえ〜っ!!なんですかこれっ!?ここ12階ですかっ!?寒いですぅ〜っ!!あ!グレイシアさーん!」
零羅が寒さでぴょこぴょこ走りながらグレイシアの元まで来た。
「早いね、レイラ」
「グレイシアさんこそ、この階の方と決着付け終わってるみたいで、それにしても寒いです・・・」
グレイシアは再び零羅に後ろからハグをした。
「あれ・・・グレイシアさんは、結構あったかいですね・・・」
「冷気は温度の魔法でもあるから、実はこの気温差を利用すれば暖かくすることも出来る・・・前にレイの研究で分かった事がある、魔法は元々を辿れば四つの火、水、土、風のみで残りの三つは覚醒の混ぜ合わせの魔法に近いんだって。だから理論上は冷気の魔法は水と風で使い分けられるらしいから。なんなら全ての魔法の基礎は炎、いや・・・熱の魔法かもって研究してたから」
「三上さんって、案外研究熱心な方なんですね・・・けど、この暖かさは研究でどうこう言える魔法じゃないと思いますよ。グレイシアさんの優しさのおかげだと思います」
零羅はニッコリと笑った。
「ん・・・」
そしてグレイシアは零羅の言葉に少し顔が赤くなった。
「あ、エレベーターが来ましたね。行きましょうグレイシアさん」
「う、うん」
2人は桜蘭たちの後を追う。
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「さてと・・・こんなに早く決着付けられるとは思わなかったな。けど、お陰でお前らが来る前に充分楽しめた。で、お前らには悪いが、そろそろ退場してもらうぞ?こっから先の舞台には多分不相応だ」
『ドゥルルルルルンッッ!!!』
ポップスはコートの中から回転する刃が付いたエンジン付きの機械を取り出す、いわゆるチェーンソーだ。ポップスはチェーンを回し、害獣へと向ける。
「工具ってのは扱い方一つ間違えりゃ簡単に人を殺せるんだ、てな訳で・・・行くか」
ポップスはチェーンソーを持ち、下から上がってくる害獣の後始末を始めた。




