リメイク第二章 TANK BY FIGHT
ビル内部、ここには電気が通ってないのか?真っ暗だ・・・
「お?この音は・・・動物の足音でござるか?」
麗沢がこの中にいる気配に気がついた、そして俺も通り過ぎる影を見る。これ、前に会った事があるな。
「グレイシアさん・・・これって」
「うん、この中・・・害獣がいっぱいいるから」
害獣、どう言う訳かそいつらがこのビルの中を占拠してるみたいだ。
「どうすんのよ、ビルに入ったからには後戻り出来ないわよ?」
「分かってるさ、とりあえずは上を目指すッス。で、敵は迎え撃つ。それで良いッスか?」
「しかしでござるが・・・これ、階段全て登るのでござるか?」
「あ、それならここの中庭を通った先に分電盤があるから。多分この停電はただ単純に分電盤のブレーカーを落としてるだけ。元に戻せば復旧出来るかも、そうすればエレベーターが使える・・・」
グレイシアさんの提案、まずはビルを真っ直ぐ突き抜け中庭に到達する。そしてそこにある分電盤って奴のブレーカーを元に戻す。そうすればエレベーターが復旧して上に行けるか・・・どっちが早いだろう、罠くさいな・・・
「考えてる余裕は無いッスよね・・・」
「私はグレイシアに賛成だ。何となく罠くさいけどさ、電気が通ってなきゃ上に行けない階もある・・・」
「なら、行くぞっ!!」
俺たちが動き出した瞬間、害獣たちは俺たちを襲い出した。俺は剣の峰を使って吹っ飛ばしていく、害獣は殺さない方が効率が良い、サムさんが言っていた事だ。
けど、この中じゃどれがなんの群れなのかわかんねーな。
「ほいっ!!!!拙者もただではくたばらぬでござるよっ!!」
麗沢はフライパンをぶん回して敵を寄せ付けない。
「お前はむしろ最後まで行かなきゃダメだろっ!!」
「拙者はやはりモブが好き。ほいっさ!!」
「えっと・・・はい、このタイミングでなら!!やぁぁっ!!」
零羅は一匹をストレートで、吹っ飛ばすと、まるでボウリングみたいに他の害獣が巻き込まれた。
「エルメス!!中庭はっ!?」
「もうすぐそこよっ!!そこの扉!!」
ドアを勢いよく開けると、綺麗な芝生のある中庭に出た。このビルのど真ん中に温室があるみたいだ。南側に超デカいガラス窓がある。そこから太陽光が入ってるのか・・・
「ここには害獣はいないんだな・・・」
「みたいね、そして・・・さっきのあいつらもここにはいなさそう。なら、分電盤のある部屋はすぐそこよ」
俺たちは関係者以外立ち入り禁止な雰囲気の部屋に入る。中はでっかい箱みたいなやつがズラリと並んでる。
「なんかこう言うのって、変にワクワクするッスよね」
「サクラ、変なとこ触らないでよ?触ったら感電死するか、死ななくても設備が完全にダウンして復旧不可能になるかもしれないからさ」
わ、分かってるよ・・・流石の俺もそこまでバカじゃない。
「分電盤はこれ」
ガコンッ・・・なんか、電気が流れる音がした気がする。
「グレイシア、二年前もこうやって電気落としてお父様脅しに来たのよね・・・待ってなよミカミ、今度は私たちが同じ手でお前を玉座から引きずり落としてやるからな?」
「さ、ならさっさと上に行くッスよ!」
外に戻ると電気が付いていた。中庭の噴水も動き出し、エスカレーターも稼働してる、これなら・・・
「っ!!桜蘭さんっ!!」
『ドゴォォンッ!!!!』
突然、この中庭に炸裂音が鳴り響く。
「ふう、危なかったです・・・」
零羅は零羅の腕よりも太い砲弾を素手で掴んでいた。砲弾からはまだ煙が出てる。
「もう!いきなりは酷いんじゃないですか!?それに!こんなとこで大砲なんて使わないで下さい!!」
零羅はある方向に向かって怒りの声を上げた。
「・・・あのさー、君の言うことは筋が通ってるし、良いと思うけどさ、大砲を素手で止めるってのってありなの?」
「出来るのですから、ありではないのですか?」
俺の目線の先には巨大な筒、そしてそれが乗ってるのは無限軌道であちこちを走破出来る迷彩柄の車。
そう、戦車だ。そしてその上に付いてるハッチの上からあの4人の一人、炭鉱夫みたいな奴が出てきた。迷彩服の男じゃないのかよ。
「はぁ、ありなのね・・・とりあえずあんたらに言っておく事がある。あの分電盤はここの十二階までの電気しか復旧していない。残りは上だ、察しがよけりゃもうわかるな?」
「切れてる分電盤の階に、お前たちがいるって事か・・・」
「正解だ、サクラ君よ。そして俺たちの役割はお前たちの足止めだ。で、ついでに言っておくと、他の奴に比べれば俺はそんなに強くは無い。そもそも直接戦えるようなやつじゃねーんだ。けど、この戦車の火力は半端ないぞ?」
「火力・・・ですか。なら桜蘭さん、この戦車さんはわたくしが引き受けましょう。生身と戦車は、本来勝ち目が無いと言われてますが、今のわたくしならどうなのでしょう。少し興味がありますので、ここはわたくしに任せて先に行けと言うやつです」
そもそも戦車がこのタイミングで出て来る事態が予想なんて出来ない。そして考えてる余裕がない、俺たちは一刻も早く上に行く事だ。だから・・・
「任せるッスよ!!」
「はい!!」
俺たちは零羅を置いて先に行く。そして・・・成る程、エレベーターが使えるのは12階までか・・・
アダムスビル 中庭
零羅は一人戦車と相対していた。
「まずは自己紹介でもしておくか、俺はジュネット。ジュネット ブレイズだ、普段は炭鉱で働いてる」
「わたくしは神和住 零羅、仕事は・・・あれ?わたくしって、学生でも無いのなら・・・無職ですか?」
零羅はどうでも良いことに疑問を持った。
「あ?社長令嬢とかって聞いたが?向こうの製薬会社の娘さんだって?」
「まあ、そんなとこですが・・・」
「それが戦車砲を片手で止めるねぇ、本当どうなってんだよ・・・よし、自己紹介も済んだし、そろそろやるか。前はミカミにぶっ壊されたが、今度は対ミカミ用に改造した戦車だ。そう簡単にやられねーぜ?」
ジュネットはハッチを閉じて戦車に乗り込んだ。
「くらいな!!!ファイアッ!!」
『ドムンッッ!!!!』
「よっ!!!」
零羅はそれを避けて一気に駆け抜ける。
「はっやっ!?人間の足の速さかよっ!?けど!!」
『ギャルルルルルッッ!!!!』
ジュネットの無限軌道は、零羅の速力に匹敵するほどのスピードで中庭を走った。
「あっ!!そんなので走ったら植物たちがぐちゃぐちゃになってしまいますよっ!?」
「仕方ないだろっ!!今現在で俺たちがお前らに真正面から挑んで戦える方法は!めっちゃ頑丈な鎧と!めっちゃ強い攻撃手段!そしてめっちゃ早い足だ!!それを実現させるにはこれが最強なんだよっ!!」
『ギャリギャリッッ!!!』
ジュネットは零羅との間合いを取り、遠距離から大砲を撃ち込む。
「このままではこのビルごと壊れてしまいますね・・・どうしましょう・・・」
零羅は少し考えた、そして閃く。
「そうです!!アレをやれば!!」
「よそ見は良く無いなっ!!」
「えいっ!!!」
零羅はジュネットが砲弾を撃つタイミングに合わせて、さっき撃たれた砲弾を拾い上げ、ジュネットの方へ投げ返した。
「ぁあ゛っ!?」
そしてその瞬間を見計らい、零羅はジュネットの戦車の下に入り込む。
「これなら、どうですかっ!!」
『ドゴォォォォォンッ!!!!』
「どわぁぁぁっ!?」
零羅の一撃で、戦車が宙に浮いた。その光景を見て零羅はキョトンとしてしまった。
「あれ?戦車を丸ごと壊すつもりで攻撃したのですが・・・」
「いててて・・・当たり前だ。これは、対ミカミを想定してるんだ。以前もお前みたいなとんでもパワーでやられたからな。
特に砲身には、例え何かが詰まっても撃てるようにした。そしてこの装甲には王国軍の鎧にも使われてる魔法を受け流す素材を使用、エンジンにも色々詰め込んでパワーはうん十万馬力の、最高速度は二百キロにも及ぶんだ。そう簡単にやられはしない!!」
零羅はジュネットの話を聞き、また少し考えた。そしてすぐに答えは出たようだ。
「ジュネットさん、あなたの目的はわたくしの足止め。と言うことでよろしいのですよね?」
「そうだな、いくら対ミカミを想定してるとは言え、このまま戦い続けて勝てるとは思えないからな。だが、時間稼ぎは出来るだろう?」
「そうですね・・・あなたの目的がそれなら、わたくしは・・・そこに抗わなくてはいけないですよね?」
零羅はトントンと軽くジャンプした。
「やれるんならな?けど、こいつの威力は分かっただろ?そう簡単にやられる程ヤワじゃ無いぞ?」
「それは・・・どうでしょうかっ!?」
『バグォォォォンッッッ!!!!』
「だっ!!わっ!?な、なんだ!?」
零羅は3階目のジャンプした瞬間に一気に踏み込んで戦車を蹴り上げた。零羅の炎の魔法を纏った蹴りは、戦車を今度は地面から浮かせた。
「ジュネットさんっ!!確かヘルメット被ってましたよねっ!!!いきますよっ!!やぁぁぁぁっ!!!」
零羅は落ちてくる戦車に更に追い撃ちをかける。連続で蹴りを放ち、蹴っては戦車は宙に浮き、落ちてきてはまた蹴り上げられる。
「だっ!!ぎゃっ!!!なっ!!!まっ!!うっ!!ごっ!!けっ!!んっ!!』
「ほぉあたたたたたっっ!!!!ほぉぉあったぁぁぁぁっ!!」
零羅の連続攻撃に次第に戦車は耐えられず、徐々に凹み始め、煙が上がり始めた。
「くっ!!!!」
「どどめっ!!!必殺の!!!ライジングドラゴンッッ!!」
「どわぁぁっ!!」
そして最後に渾身の一撃で、拳を突き上げると、ハッチを突き抜けジュネットが外に放り出された。それを零羅はお姫様抱っこでキャッチした。
その直後、戦車は爆発し、木っ端微塵になった。
「よっと・・・わたくしの勝ちですね、ジュネットさん」
零羅はゆっくりとジュネットを地面に下ろす。
「まさか、ここまでとは思わなかった・・・また改良がいるな」
「・・・出来る事なら、こんな戦車は見たくはないですね・・・わたくしは覚醒を経て戦いを楽しむ事を学びましたが、それでも醜い争い、殺戮、戦争には嫌悪感を覚えてしまうのです。戦車は、それの代表とも言えますから」
零羅はベコベコの戦車を見ながら呟いた。
「・・・どうだろうな、俺は戦車は好きだぞ?でも、戦争に嫌悪感を覚えるのは同感だ。昔、戦争のせいで俺たちは陽の光を浴びる事のない生活をしてた。僅かにしかない食料、食べられるのは岩場に生えるキノコだけ。毎日毎日人が餓死する、俺はそんな光景の中育った。
だから、戦車ってのは一つの希望だったんだ。例えそれが恐怖の対象なのだとしても、大きな力はやはり何か惹きつけるものを感じる。だから俺はこれからもこいつを作り続ける、今度はあんたにも負けないくらい頑丈な奴をな」
「・・・扱うのはその人次第・・・」
零羅がボソッと呟いた。
「ん?それは確か、チュニアの謳い文句だよな?」
「はい、戦車も同じなのかなと、ふと思ったので・・・使う人次第で、それは絶望にも希望にも変わる」
「なるほどな、それは確かに言えてる。鉄砲もそうだ、鉛の弾頭に火薬を詰めたあいつは、生き物を殺すためだけにしか無いようなもんだ。なのに、軍の祭典じゃ鉄砲は一つの芸術作品にまで昇華する。扱う人間の動き、そして鉄砲の造形、響き渡る音、まさに芸術品だ」
ジュネットは少し天井を眺めていたそして壊れた戦車を眺める。
「戦車も一つの芸術品・・・と言う事ですか」
「どうだろうな、俺はミカミを越えられるヤツを作りたかっただけだ。それを突き詰めただけの事、けど、そう言うのがいつの間にか芸術なんて呼ばれる事になるのかもな。ほら、ここはもう俺の負けだ。先に行け、お前たちのその強さだ。後の奴らがいるんだとしても、予想以上に早く進んでるかもな」
「はい、あ、ジュネットさんはこれからどうするのですか?」
「ここで成り行きを見守るだけだ、ほら、早く行け。間に合わなくても知らんぞ?」
零羅はそれ以上何も聞くことは無く上の階に向けて走り始めた。
「ふぅ、足止めもしんどいな・・・ミカミ、お前が俺の戦車技術を使って何をする気なのかは知らんが、全部が全部お前の思い通りにはならないぞ?むしろお前の予想以上になる・・・あいつらの力は、測るなんてのは無理だ。だから、お前も信じてやれよ。ミカミ・・・」
ジュネットはゆっくりと中庭に腰掛け、そして横になった。




