リメイク第二章 目醒めし力は勝利へ繋がる絆
時は遡る。
ファーヘスト連峰貫通大橋での戦い、零羅は自らの命を犠牲に三上を道連れに奈落の底へと落ちていった。
「まさか、僕ごと落ちるなんてね!!」
「そうでもしなきゃ倒せませんから!!!」
零羅は三上をしっかりと掴み身動きを取れなくした。
「っ!!!凄いパワーだね!!」
「絶対に離しません!!!あなたはわたくしが!!!」
零羅は無我夢中で三上を掴み続けた、地面に到達するまで絶対に離さないと。
「君は、死ぬのが怖くないの?」
「怖くなんてありませんっ!!」
零羅は無理をしているのを三上は見抜いていた。本当は怖い、地面とぶつかりたくない。零羅の心の奥底にはそんな感情が渦巻いていた。
「僕は怖いな・・・けど、死の恐怖をそうやって乗り越えなきゃやってられないんだよね。その襲ってくる恐怖を楽しむんだ。けどいざとなるとやっぱり背筋がぞわぞわするし、喉が痛くなる。ふと楽しくないって思う事が出てくるんだ。やっぱり、死ぬか死なないかの瀬戸際が面白いな。確実に来る死は、やっぱりつまらないや・・・」
「っ!!!!!」
「激突まで後、二十秒くらいかな?どうする?このままだと本当に死んじゃうよ?」
「わたくしがここで手を離したら!!!何のために!!!!」
三上の煽りにも零羅は動じていない。いや、本当は恐怖のあまり手を離したいと思っていた。しかし、零羅は三上を倒すと言う覚悟を優先したのだ。
「確実な死が来る・・・今君は、覚醒直後の冷静さが来てるよね。けど、それは今のこの現実をより強く認識してしまってる。だから恐怖は僕よりも遥かに強く襲ってきてる筈だ・・・」
「もう!!何も言わないで!!!!わたくしはっ!!!!っ!!!!」
零羅は無理矢理自分の恐怖を抑え込んだ。意識を飛ばして、でも掴む力はより強く三上を締め付ける。
「・・・・・全く、なんだかんだ君はまだ子供だね。そんな風に命は粗末にするもんじゃないよ、命を懸ける意味を間違えてる。命は、こうやって懸けるのさ!!!」
三上は力を発動した。その瞬間三上と零羅の身体は地面に激突する数センチ手前で止まった。
「ふぅ・・・魔法は零羅さんのせいで使えないけど、この力は関係なく使えて良かったよ。ギリギリだったけどね・・・あはは!やっぱりこのギリギリの感覚は楽しいや」
三上は何とか零羅をゆっくり引き離し、横に寝かせた。そして自分の着ていたコートをかける。
「まぁまずはおめでとうだね、君が締め付けるから装置は壊れちゃったよ。君の勝ちだ、神和住 零羅さん。さてと・・・これからどうしよっかな」
三上は岩場に腰掛けた。
『コケー、コッコッコッ』
「ん?野生の鶏か・・・こんなとこに生息してるんだ。なんか少しお腹すいたなぁ・・・適当にフライパンでも作って目玉焼きでも作ろうかな」
三上は独り言を呟きながら焚き火の準備を始める。
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「んっ・・・香ばしい、匂い?」
「あ、おはよう零羅さん、よく眠れた?」
「・・・」
零羅は周りを見渡す。
「殺せなかった・・・って、事ですか?」
「そんなとこ、二人とも死に損なったね。けど、勝ったのは君だ。ほら、これが装置。プレス機に突っ込んだみたいにペシャンコさ」
三上は壊れた装置を零羅に見せる。
「・・・そう、ですか。それより、何をしてるのですか?」
「うん?目玉焼き作ってるんだ。ちょっとお腹空いたからね。良かったら食べる?一応食パンが一緒に落っこちてきた僕の荷物に入ってたからさ。はい、目玉焼きトースト」
零羅は渡されたパンと目玉焼きにキョトンとしていた。
「三上さん、そんなもの持って戦ってたのですか?」
「僕は常に念には念を入れる男だよ。この状況だって、想定外とまでは行かないからさ。ほら、早く食べないと冷めちゃうよ?」
三上は笑顔で自分の目玉焼きトーストを食べ始めた。
「なんで・・・あなたはわたくしを助けたのですか?」
「ん?助けたんじゃないよ、生きたいと願っていたのは君だっただけだ。だから君はこうして生きてる、それだけの話だよ」
パク・・・零羅は三上のトーストを一口食べた。
「あ、半熟・・・」
「あれ?嫌いだった?」
「いえ・・・とても美味しいです。だから分からないんです。どうして、どうしてこんなにも優しい味がするのですか?あなたの剣には怒りしか感じないのに、この目玉焼きからは、暖かさと優しさがある・・・三上さん!!あなた本当はっ!!」
「僕の言葉に偽りはないよ、零羅さん。それに、美味しく感じたのはただ単に僕がグレイシアの父親で家事をよくやってたせいだよ」
「そんな事ないと思いますけど・・・」
零羅はむくれ顔でトーストを食べ続けた。
「ご馳走様・・・さてと、零羅さんは、これからどうする?」
三上は口元を拭くと立ち上がった。
「桜蘭さんたちを追いかけます!!三上さんは、どうされるのですか?また・・・粛清をするのですか?」
「いや、流石にそんな事をしてる時間が無いよ。だから少し良い事を思いついたんだ」
「良い事?」
「中央地区のリーダーは僕を遥かに上回る実力を持ってる子なのは確かだ。けど、それを倒してはい終わりは、少しつまらないよね。だから僕はこれから中央に向かって、ラスボス戦の準備をするよ。零羅さんはファーヘスト地区の方に向かえば良い。丁度ディエゴさんとぶつかってる頃だろうからね。
そしてディエゴさんを倒して、僕の所に来れば・・・うん、ディエゴさんが粘るだろうとは言え、計算上はギリギリのギリで僕に辿り着けるね」
「あなたは、本当にそれで良いのですか?」
「僕は良いんだよこれで・・・ファーヘスト地区へは僕が送るよ。さてと、目的も決まった事だけどその前に零羅さん。食後の運動に少しだけ手合わせしない?丁度ここなら暴れても問題はないからね」
三上はゆっくりと準備体操を始めた。
「戦闘は禁止では無かったのですか?」
「試合と戦闘は別物だよ」
「・・・なんか、屁理屈ですね」
「あはは!ごめんね、けど、この試合は君のこれからの為にもなると思うよ。少しだけだけど教えてあげるよ、覚醒した存在の戦い方を」
三上と零羅は再びまみえた。
そして、しばらくの試合の後、零羅は桜蘭たちの元にやってきた。
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そして今、俺の目の前には自信にに満ち溢れた零羅が立っている。
「王より手ほどきを受けたのか・・・覚醒者としての戦い方を」
「はい、まぁわたくしの場合あの溶岩とか、混ぜ合わせる魔法は苦手みたいです。やろうと思えば炎と風の竜巻も起こせるのですが、加減が難しいのですっ!!」
零羅は回し蹴りを放つと、足に纏った風は全てを巻き上げた。そしてその竜巻は一気に燃え盛る。
「くっ!!!これが魔法かっ!?まるで自然を相手にしてるかのようだなっ!!」
「三上さん曰くですけど、本来この世界における魔法と言うのは自然の力を己自身で操る技術の事らしいですよ。だから、自然を理解し、自然と一つになる事でわたくしたちの魔法は、天地をひっくり返す事すら出来るのです!!」
「ぐおあっ!!」
竜巻の暴風で身動きが取れなくなったディエゴに、零羅の更なる一撃が飛んでくる。ディエゴはなす術なく身体が宙を舞う。
「まだ、浅いですね・・・」
けど、ディエゴはダメージを最小限に抑え、何食わぬ顔で着地してみせた。掠っただけで即終了レベルの攻撃なのに・・・この男、どんだけタフなんだよ。
「ふぅ、掠った程度だが、肋骨にヒビが入ったようだ。やはり君の一撃は強烈だな、カミワズミ レイラ君」
けど、ディエゴの表情は変わってる、余裕はなさそうだ。ガチの真剣モードに入ったらしい。
「・・・・・行くぞ!!」
ディエゴの全速力の攻撃だ。横に振った剣はまた一気に周囲の物を吹っ飛ばす。
「この程度ですか?」
零羅は微動だにせず、地面に足をしっかり付けて片手の炎神で防いでいた。
「まだまださっ!!!」
最早俺の目では見切れない、激しくぶつかる金属音があちこちで聞こえるだけだ。三上の奴、まさかあの時手加減してたのか?でもそうか、手加減しちゃってたせいで零羅は隙を突いて奈落に落とせたんだもんな。
つまり、三上の本来の実力はこの戦いがベースだと考えても良いな。
「行きますよっ!!必殺の!!しょーりゅーけーんっ!!!ですっ!!」
零羅こんなキャラだったか?けど、ディエゴの懐から放たれたアッパー攻撃の威力は本物だ、むしろそれを防いでるディエゴが異常すぎる。あと、あの剣も・・・なんつー頑丈なんだよ。
「ふぅ・・・まさかここまでとは、仕方がないな。これは一か八かの賭けになるだろうが、やってやろう。君の弱点を突く」
ディエゴは肩に大きく剣を担いだ。アレだ、トイレをぶった斬ったあの技だ。
「弱点ですか?」
零羅も腰を落として構えた、迎え撃つ気だ。
「そうだ、君の弱点とは二重人格・・・君は自分の血を見ると見境がなくなると聞いた。それはつまり、君にかすり傷さえ与えれば勝ちを意味する・・・」
零羅の二重人格・・・そう言えばあれはどうなったんだ?三上の時は、たまたま元に戻れたのか?それとも、それはまた別なのか?
「もう一人のわたくしですか・・・どうなるんでしょう。わたくしも三上さんとの戦い以降怪我をした事がありませんから。もし、あの人格が出てしまえば、あの破壊衝動の化身は動きを読み取る事は簡単かもしれませんね。ですけど、わたくしは乗り越えたと思ってますよ」
「それで人が変われたら人生に苦労はないさ・・・」
「そうですね。でも、何か一つのきっかけで人は急に変われる事もありますよ」
「ならば、確かめてやろう!!はぁぁぁっ!!!」
俺はまた身をかがめた。けど・・・あの暴風が来ない。
「おいおい・・・・君はあの王か?まさか、自分の事を確認するためにわざわざ俺の攻撃を素手で受け止めたのか?」
零羅はなんと、ディエゴのあの攻撃を素手で、しかも片手で掴んで止めた。零羅の手からは血が滴り落ちる。
「そうですよ、三上さんのギリギリを楽しみたいってのは分からなくもありませんでしたから、上手く行ったら気持ちいいですもんね。そして、どうやらわたくしはわたくしでいられるらしいです。ですけれど・・・スゥ・・・」
零羅は少し呼吸を整えた。
『バギィンッ!!!!』
零羅はディエゴの剣をデコピン一つで砕いた。
「この技もより精度を磨けました。もう一人の自分がやっていたあの感覚です。つまり、もうわたくしはアレに陥る事はありません!!」
「まさか剣を破壊されるとは・・・中々の名刀だったんだがな。しかし、まだ敗北した訳ではない」
ディエゴは折れた剣を構える、まだ少し刀身が残ってるんだ。それで戦おうって言うつもりらしい。
「そうですね、まだあなたは敗北してません・・・ですけど、そろそろ終わらせますよっ!!」
・・・・・そうだな、終わらせよう。
「行くぞっ!!」
「行きますっ!!」
零羅とディエゴは互いにぶつかり合った。
「はぁぁぁっ!!!!」
「やぁぁぁっ!!!!」
「ふんっ!!!君の技の弱点を見つけたぞっ!!カミワズミ レイラ君!!俺の勝ちだ!!」
ディエゴは零羅の攻撃を捌いた。真っ直ぐ放たれたストレート。それを丁度いい角度から捌けば零羅のあの攻撃は多分、本来の威力から激減されるんだろう。
「多分、そうなんですよね。ですから、あなたの負けです」
「あぁ、勝利は俺たちッス」
「しまっ・・・」
『バガァンッ!!!』
あんな真正面からの攻撃なら、俺でも捉えられる。俺はディエゴの横に回り込んで、銃をぶっ放した。
ディエゴは宙を舞い、そして今度は地面に倒れた。
「・・・俺が、負けた・・・ふっ、なるほど。最初に一対一では無いと言ったのはこのタイミングを探す為だったのか」
「はい、わたくしたちはみんなでずっと戦ってきましたから。三上さん一人なら、あなたの力は上なんでしょうけど、あなたが相手にしたのはわたくしたちですから」
「流石だ。そして君もだ、サカガミ サクラ君。カミワズミ レイラ君との連携、見事だった」
「零羅がアイコンタクトしてくれたッスからね。俺、目だけはめちゃくちゃいいんスよ」
「はっはっは!!いい目をしている・・・さぁ、勝者は君たちだ。残るは中央地区のみ、行くがいいさ・・・って、ん?」
ディエゴは少し眉をひそめた。
「どうしたんスか?」
「今・・・何時だ?」
俺は周囲を見渡した。あれ?一応遠くから見てる野次馬はいた筈なのに、いない・・・?そして、いつのまにか日が暮れたんだ?真っ暗になってた・・・何時間戦って・・・
俺は駅前広場の時計を見つけた。
・・・・・見間違いじゃないよな?あれ、時針も分針も一、って書いたとこにある。
「1時・・・5分?あ、あのさ・・・あの時計って」
「狂ってはいないな。そして、止まってもいない。今、6分となったな」
「シィズさん・・・こっから車でかっ飛ばしたら何分で行けます?」
「どう頑張っても七時間はかかるわね・・・そして、ここの始発は明日の朝六時、到着は九時周るわ・・・」
それってつまり・・・俺たちはここで時間切れ?
「え、どうすんの?マジでどうすんのこれ」
「桜蘭さん、落ち着いて下さい。まだのぞみはありますから」
零羅は何故か余裕な表情だ。三上と言い、この状況でよく冷静だなおい。なんかそう思ったらすんごい焦ってきた。
「いやいや、だってもう終電出てるスよっ!?」
「はい、だからまだのぞみはあると・・・」
「のぞみは新幹線じゃないッスかっ!!」
『ポコンッ!!』
「もぅっ!!人の話聞いて下さいよぅっ!!」
零羅に頭を叩かれた。痛い、たんこぶ出来た・・・
「三上さんからディエゴさんとの戦闘は日付跨ぐと言われてたので、その場合の対処法を聞いてきました。なんでも今日は高速試験車両が走るらしいのです。それに乗り込めば明日の夜明け前に辿り着けるとの事です」
な、なるほど・・・夜明け前、ってなると、どちらにしても後数時間しかないのか、ディエゴで何時間戦ってんだ?
けど、やるしかないよな。
「ところでレイラ、その試験車両、何時に出る?」
「はい、1時15分なので・・・あ、」
「後、五分だね」
「で、ですから・・・い、急ぎますよっ!!」
トテテテテテテッッ!!!!
零羅はなんか可愛らしい走り方してるのに、めちゃくちゃ早い。
「五分ならお弁当買えるのに・・・」
「グレイシアさん、もう店全部閉まってるッスよ?」
俺たちも零羅を追いかけた。てかグレイシアさん、あんたも結構ギリギリ攻めるな。駆け込み乗車はおやめください?
「すみませーーーーんっ!!!」
零羅は停車していた試験車両のヘルメット被った作業員さんを呼び止めていた。
「あぁっ!!あの勇者のっ!!了解だっ!!もう期日は今日だもんな!!ほら!!早く乗りなっ!!」
「みなさーんっ!はやくー!!」
零羅がぴょんぴょん飛び跳ねながら俺たちを待ってる。
残すは中央のみ、時間はギリギリ・・・全くあの野郎、どこまで計算してやがったんだろ。もう無理だと思う事が何度もあったのに、なんだかんだここまで来れてる。そして、ギリギリなんとかなりそうな時間なんだ。
希望はほんのわずか、零羅が戻って来てくれたにせよあいつはめちゃくちゃ強い。けど、俺はあいつに勝ちたい。絶対に勝ちたいんだ。この手で直接勝利を掴みたい・・・
泣いても笑っても、今日で決着は着く。いいか俺、覚悟を決めろ・・・勝って終わらせるんだ!!
俺は拳を握って最終決戦への扉をくぐった。
The turning point 完
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新ハシダナ駅 駅前広場。
「あぁ、これで覚醒者は一人だ・・・ああ。坂上 桜蘭君の覚醒はまだだ、そして、麗沢 弾君も。しかし、坂上 桜蘭君は、時折覚醒の片鱗は見せていたよ。そのせいかな?天神 睡蓮君のように意識の喪失が現れない・・・ん?麗沢 弾君?あぁ、彼はおそらく力の影響だ。それにより意識の喪失が起こらないと俺は踏んだ。
あぁ、問題は三上 礼君だ、彼は本気で核攻撃を行う気のようだ。その理由がここまできても分からない。だが、彼は覚醒には興味があるのは確かだ。あぁ、そして彼は坂上 桜蘭君に負けるつもりなのも本当だ。理由はやはり、このゲームが終わらなければ分からないだろう。
ゲーム終了直後が勝負時だ、それと同時に我々は動く。君もその為に準備しておいてくれ・・・ジョシュ カンナ君」
ディエゴ アンダーソンは一人、誰もいない駅前広場で電話をかけていた。そして、その電話は終わり、ディエゴは一人歩み始めた。
「さぁ、見せてもらおう、三上 礼君・・・君の本当の狙いはなんなのかを!!」




