リメイク第二章 目覚めるは優しき心と殺戮の心
この橋、何メートル崩落した?少なくとも数十メートル・・・グレイシアさんが氷で橋を作れるかもしれないけど、それなりに時間がかかるだろうな。
「おい三上、これ誰が直すんだ?」
「大丈夫だよ、この世界には魔法がある。この規模なら業者呼んで一週間くらいで元通りに出来るよ。グレイシアにも出来るだろうけど、十分くらいかな・・・その間に決着付けたいね」
それでも3対1だ・・・まだ俺たちに利がある。
「零羅、俺と麗沢で接近戦をする。零羅はタイミングを見て強烈なのをぶちかましてくれッス」
「分かりました!」
俺は剣を構えた、そして麗沢も構えたタイミングで動く。
「ヒョオオッッ!!?」
「うおりゃぁっ!!」
「ふふん、踏み込みがズレてるよ?だからこんな風に簡単に捌ける・・・」
三上の剣捌き、俺が力強く振ってるせいなのか?ちょんってやられただけなのに剣が吹っ飛ばされる・・・踏み込みだ?それでなんか変わるのか?
「僕の剣、これ以外と軽いんだ。けどね、踏み込みをしっかりすれば!!」
『ガギィンッッ!!!』
「どわっ!?」
俺の剣が、吹っ飛んだ・・・何だよあれ、軽く振ってたのに、めちゃくちゃ重たい・・・
『ガコーンッ!!』
「先輩ぃぃっ!!無事でござるか!?」
「麗沢君のは逆にずっしりと踏み込み過ぎだよ?と言うか何?そのカエルジャンプみたいな動き・・・」
カエル・・・確かに。麗沢はホイホイ言いながら飛び跳ねて攻撃?してる。
「はひゅ〜・・・つ、疲れた・・で、ござる」
そしてそんなことでしてたから、すぐにバテた。
駄目だ・・・遠距離は三上の俺の目にも見えないあの剣術でやられる。けど、近接戦闘はこの有様だ。零羅にタイミングを与えられない。
「うーん、確かにみんな強くなってるけど、僕相手だと話にならないね・・・ここスルーして次行く?あ、けどそれじゃもう間に合わないか」
そうだ、こいつはここで倒さなきゃダメなんだ。
「ふざけんじゃねーッスよ、誰が逃げるかってんだ。お前はここで必ず倒す!!」
「やれるならね・・・」
『ギュウィィィィィィィィッッッ!!!』
「そうですよ桜蘭さん!!」
『ドッゴォォォォォォンッッッ!!!!』
「うおぁっ!!」
零羅の攻撃が炸裂した。
「へぇ、今のは中々・・・やっぱり君が一番強くなれるポテンシャルを持ってたみたいだね。僕の忠告は役に立ったかな?」
三上の額から血・・・これは、わざと喰らったんじゃない、三上でも防ぎきれなかったんだ。
「そうなのかもしれませんね・・・わたくしが守りたい平和、常々考える事が多くありました」
「それで、答えは出た?」
「出ました、あなたのお陰で・・・わたくし、平和とは争いの無い事、戦いが無い事だと思ってました。けど、皆さんと一緒に旅をして、いろんな人と戦って分かった事があります。今まで出会った誰もが、敵と思えなかったのです。
全員がそれぞれに思いを秘めて戦ってました、それぞれ平和を願って戦っていました。一人一人がそれぞれの平和を願ってる、それを貫く為に戦いとなるのです」
零羅・・・あの目だ、最初に会った時に三上に向けてた悲しげな表情。零羅の奴、まだこの三上をその目で見れるのかよ。
「だから許せません・・・その一人一人の平和の願いを踏み躙るあなたの所業が。あなたの剣はとても重たいですが、その重みにあるのは激しい怒りしか感じませんでした。ただの八つ当たり。そのせいで大勢の平和への願いが死んでしまった・・・」
「凄い成長だよ・・・そこまで分かるなんてね。僕の剣には八つ当たりの感情しかない。それ、間違い無いかもね。僕はもうただ自分の娯楽の為の戦いしか出来ない。余計なのはもう要らない・・・」
三上の笑顔・・・なんだこの清々しい感じは・・・重さが消えた?
「なら、その八つ当たりの剣を止めなきゃね。けど、君に出来る?君の平和を願う拳は・・・果たして貫けるかな?自分を超えられる?」
「超えて見せますよ・・・あなたを踏み台にして・・・桜蘭さん、交代です。わたくしが近接戦闘で戦います。桜蘭さんは遠距離攻撃をお願いします」
それが良いかも・・・時間をかけて、マックスまでチャージしてやる、そして確実に次は仕留める。俺は剣を拾い上げた。
『ガガガギギギギギィィィンンッッ!!!』
けど・・・はい?
2人の攻撃の応酬が凄すぎて追いつかない。
「せぃやぁぁぁっ!!!」
「はぁぁぁぁっっ!!!」
「あはははっ!!!凄い!!僕の動きにここまで対応出来るなんて!!その覚悟って感情だけで大したもんだよ!!」
「褒めてるんですか!?それ!!」
「勿論だよ。けど、忠告も兼ねてるよ?人間、そんな急に強くはなれないんだ。君のその覚悟も、ちょっとした事ですぐに崩れちゃうよ」
あれは!?またいつのまにか剣を納めてる!!
「零羅っ!!避け!!?」
な、何だこれ・・・引き金が、引けない?何かに無理矢理押さえつけられてる!!
「桜蘭君、今は少し黙っていようか。これからが正念場・・・果たして零羅さんは、自分を超えられるのか・・・」
三上は抜刀術の体勢に入る。
「零羅っ!!」
「分かってます!!必ず見切って見せます!!」
「行くよ・・・」
消えたっ!?
『ギィィィィンッッッ!!!!』
耳痛っ!!!激しい金属がぶつかり合った音が鳴り響いた。そして俺がその後見た景色は剣を納める三上だ。三上に傷は無い・・・
「零羅っ!!」
「まさか、覚醒無しでこの僕の動きについてくるなんて・・・けど、傷は入ったね」
零羅も無事だ。いや、これを無事と言って良いのか?ほんのわずかの頬に付いた傷・・・これを、無事と呼んでいいのか?
「そうですね・・・傷をいれられてしまいました・・・」
傷が治らない・・・やっぱり!!
「零羅さん、今の気分はきっと、僕を殺したくて仕方がない。じゃないですか?」
「そうですね、殺したくてしかたがない・・・死を、わたしにかんじさせてください」
ん?この感じ、また前の時と違う・・・むしろ、最初の時の感じに近い。けど、なんだ?何かまた違うぞ?
「・・・麗沢!!零羅の動きに合わせられるか?」
「お!?無理!!!」
「なら、俺がタイミングの指示出すから、お前はそれに合わせるッスよ」
「御意!!」
この状態の零羅との連携は睡蓮の時に感覚を掴んだ。今はさっきみたいに急に指が動かないなんて事はない。自由に動ける・・・
「三上、言っとくけどな。俺には正直信念なんて無いッスよ。零羅はすっげぇ優しい子だから思いを力に変えられる。けど、俺にあるのはあんたと同じだ。お前はムカつく!!だからぶっ飛ばす!!」
「ふふ、君らしい答えだね。けど君の場合はそれこそが君の信念だ。僕が許せない、周りに不快にさせる僕に腹が立って仕方がない。だから倒す・・・立派な信念だと思うけどね」
「今だ零羅っ!!」
俺の声と同時に零羅は三上へ攻撃を開始した。
「この動き、前と同じだよ・・・直線的だ。だから簡単に・・・ん?」
「そこに加わる攻撃はどうだ!?」
『ズガンッ!!』
俺は隙間に電撃を撃ち込んだ。
「麗沢っ!!」
「ふぉぉっ!!」
そして俺の指示で麗沢がフライパンを振る。
「おっと!!」
そして三上は避けた。
「今だ麗沢避けろっ!!」
麗沢は後ろに飛んだ。その直後に零羅の攻撃が飛んでくる。
「このコンビネーション・・・」
「関心してる場合かっ!?で?確か踏み込みだったよな!!なら、遠心力と重力をふんだんに使ったこの攻撃ならどうだっ!?」
エンリコの受け売りだが、正直この振り方は結構威力出る。銃口から風をぶっ放し、そして上空から真下にかけ回転切り。
「わっ!?」
これは受け流せなかったな。三上は捌き切れずにぶっ飛ばされた。
「行け麗沢っ!!」
「うおおおおうっっ!!!」
「くっ!!」
三上は見事に麗沢のフライパンを食らった。三上の表情が少し陰った・・・追い込まれて来たんだ。
「ふふ、ふふふ・・・あはは、あはははっっ!!!!」
何だ?急にバカ笑いし出した・・・
「何だよ、気色悪いな・・・何がそんなに笑えるんスか?」
「違うよ、嬉しいな・・・桜蘭君、君はやはり予測が出来ない子だ。友に裏切られ、僕に裏切られ・・・人間不信になってもおかしくないのに、ここまでみんなを信じて戦えるなんて、素晴らしいよ・・・ははは」
俺は決めたんだ、例え俺を裏切ったんだとしても、俺はみんなを信じて続けるって。みんなそれぞれ信念を持ってるんだろ?だったら俺はその信念を信じるだけだ。
それに、今なら分かるのはみんなも俺を信じてくれた事だ。零羅もただ暴走してはいない。俺の声は聞こえてる、そしてその声に合わさるようになって来てる。もう時間の問題だ、零羅がこれを乗り越えるのも。
「ふん。これが俺たちの力だ、誰かに支えられて、誰かを支えて、一緒になって成長する!!ひとりぼっちの化け物にはもう出来ない強さだ!!」
「確かに・・・1人では到達出来ないよね、こんな力は・・・けど」
は?
俺たちは3人とも、一気に吹っ飛ばされた。
何だこれ・・・目に見えない何か。これはあの抜刀術じゃない。目に見え無い攻撃だ・・・
「覚醒の前には無力だよ・・・」
そして次こそあの抜刀術・・・
「まず1人目は君だ・・・」
「おふっ!!がっくし・・・」
くっ!!麗沢がダウンさせられた・・・
「くそっ!!なっ!!」
何でだ・・何で届かない!!この俺を阻んでるのは何なんだ!?
「これは・・・うごけませんね・・・つかまれている?」
零羅は空気を殴るだけだ。空気を殴ってる?ここに、誰かがいる?
「その顔は僕の力を少しだけ理解出来た顔だね・・・けど、覚醒しなきゃどうにもならないよ?さて、次は零羅さんか・・・」
パチン・・・
あの暴走した零羅が、なす術もなく倒された・・・
「そして、最後は君だ・・・桜蘭君?恨まないでよね、君たちは本当に強かったよ、それは賞賛出来る。けどね、覚醒出来ないような未熟な奴に、僕はこれ以上楽しみが見出せないんだ。
シャルに睡蓮君に青薔薇、それをぶつけても覚醒に至らない。そして僕を相手にしても尚この始末・・・もういいや、ここでゲームオーバーとしよう」
ブチッ!
「くそったれがぁぁぁぁっ!!!」
「ん?無理矢理僕のこれを振り解いた?」
『カギィィィィンッッッ!!!』
「っ!?」
俺は一心不乱に剣を振るった。
「もう少し・・・」
「だぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
何がゲームオーバーだ、何で勝手に呆れ顔になってんだよ。俺はまだやれるぞ、テメーに負ける程弱くねーよ。
すっ・・・あの抜刀術、やれるもんならやってみろ!!
反応は出来なかった。けど、
「掴んだぜ!」
「ん!?」
俺はわざと喰らってみせた。けど、気を失わずに済んだ。そして、刀身を掴んで三上の動きを止めた。
「粉骨砕身・・・ってやつ?」
「さぁな!!けど、さっきも言っただろ!!俺は!!みんなを信じるって!!」
「へぇ、なら・・・今度のこれはどうかな!?」
突きっ!?くっ!!腹に穴開けてでも受け止めろっ!!三上は一気に剣を引いてから、強烈な突きを放った。
ぽた・・・ぽたっ・・・
「桜蘭さん、信じてくれてありがとうございます・・・ようやく、出来ました」
零羅の声?
零羅は炎神を外し、素手のまま三上の突きを手に穴を開けて受け止めていた。
「乗り越えた?」
「さぁどうですかね・・・どちらにせよ、このゼロ距離ならあなたのもう一つの力は使えませんよ」
零羅は脇に剣を抱えた。
この感じ、これまでのどの零羅とも違う・・・落ち着き方がまるで別人だ。これまでは少しおどおどしていた。けど今のこの落ち着き具合はまるで・・・
三上?
「ふははっ!!覚醒だね!!やっと来た!!!」
覚醒・・・三上はそう言った。これが、零羅が覚醒した状態・・・あまりこれといった変化はない。けど、雰囲気がガラッと変わった。
「三上さん、一つ質問です・・・あなたを倒しても、このゲームは続くのですか?」
「続くよ、僕が死んでも命令は最後まで続行するように言ってある。中央の装置を破壊するまでがこのゲームだよ」
「そうですか・・・桜蘭さん、わたくし前に言いましたよね。殺さなければならないと思ったと・・・それは今も変わりません。わたくしはこの人を殺さなくてはならない。
しかし、三上さんはほぼ不死身です。この状況で殺す方法は一つ・・・」
零羅?何を考えてるんだ?
「桜蘭さん、わたくしを信じてくれて、ありがとうございました。そして、それをまた裏切る事を許してください!!」
俺の脳内が整理した瞬間にはもう遅かった。零羅の目的は三上を巻き添えにして殺す事。
零羅は三上を掴んだまま道路の壁を乗り越えた。
「あ・・・」
三上も呆然としたまま、零羅と共に落ちて行く・・・
「零羅ぁぁぁぁっっ!!!」
俺は走った・・・間に合えよ、これくらい間に合える筈だ!!手を掴め、こんなとこで・・・こんなとこで殺させるかっ!!
パシん・・・
「わたくしと落ちなきゃ、殺せませんよ」
間に合えたのに・・・取れた筈なのに、俺は掴めなかった。零羅の覚悟の目が、掴む事を躊躇ってしまった・・・




