リメイク第二章 総力戦は奴の思う壺
「ふふっ・・・」
ミカイルさんは・・・いや、この笑顔。間違いない、こいつの正体は三上そのものだ!!
「くっ・・・お前、わざとかよ・・・」
「ん?何の話?」
三上はキョトンとした顔で聞き返して来た。
「睡蓮に裏切られてからよ、やっとミカイルさんの事は信じられると思って来てたのに・・・」
「成る程・・・なら桜蘭君、僕から一つ言える事は君、周りを信じ過ぎだよ。確かに仲間を信じるのは良い事だけど、最後は自分で決めなきゃダメだよ」
ミカイルはバリッと変装のマスクを剥がす。印象付ける幼顔の少年が、体型に似合わないボロボロのロングコートを着て現れた。シャルロットの信じるなって・・・まさか、この事?
「っ・・・何だよそのマスク、イーサン・ハントかよ」
「ルパンの方が近いかな?このマスクはとある怪盗さんから借りたヤツだからね」
三上は剣を腰に携えて、俺の正面に立ち塞がった。
俺は銃を抜いた。剣は付けない、三上の武器は剣・・・そして剣術はとてもじゃないが俺たちでは及ばない程強い。だから遠距離戦だ・・・
「にしても、僕との決戦だってのに天気が良くないなぁ・・・昨日の戦いのせいかなぁ・・・」
三上は呑気に空を見上げてる。今ならやれるか?いや、やっぱり無理・・・
「昨日の戦い?青薔薇の事か?」
「そう、彼だよ。青薔薇は君にコテンパンにやられたけど、実力は天候すら変えてしまうからね。そして僕もまた天候を変えるくらい本気で彼とぶつかったから、それで今日は凄い霧になっちゃったのかもね」
「・・・何、言ってんだ?お前、何で青薔薇と?」
「桜蘭君、君は少し鈍い所があるよね。簡単な事だよ、僕のこのゲームに参加して、脱落した者は処刑されるんだから」
・・・・・・・
俺は思考が完全に停止した。三上の今の一言は俺のこれまでの旅の意味を悉く打ち砕いた。
「ミカミ・・・あんた、それって・・・嘘だ、殺したの?青薔薇を・・・」
エルメスが震えた声で聞いた。そしてその声に三上はあの爽やかな声で返した。
「殺したよ」
「・・・これは、聞くべきではないと存ずるが・・・聞かねばならぬな・・・三上殿、ゲームの脱落者は処刑とは・・・まさか、行方不明になったと言うシャルロット殿と、ランディ殿は・・・まさか、サム殿も?」
「流石は麗沢君、察しが良いね。君たちが攻略したリーダーのほとんどはもう、僕が殺しておいたよ。あ、エンリコ君はまだだったね」
三上の言葉に周囲は静まり返った。
「何で・・・どうしてよ!!シャルはあんたの事が好きだったのよ!?それにリーちゃんも!!あんたを愛してた!他にもみんな!!なのにお前は・・・なんで、殺したのよ・・・」
エルメスは途中から声が上擦って涙声になりながらも訴えかけた。
「僕は予言を完遂したいからさ、僕は終わりをもたらす・・・その為にならこれくらいは殺すさ。それに、僕の目的を忘れたの?僕はこの世界を核で・・・」
『ズガァァンッ!!!』
俺はもう引き金を引いていた。分かってたさ、三上はこの程度は防ぐって。でも、この口を閉じさせたかったんだ。もう、何も話すな・・・
「三上、俺ちょっと考えちまってたんだ。もしかしたらお前は、何か理由があってこんな事をしてるんじゃないか?ってな、じゃなきゃおかしい所がありまくるんだよ。
けど、お前がマジで狂ってなきゃおかしいとこもあったんだ。それが今のではっきりしたわ。お前、マジでイカれてんな」
「それは勘違いが解けて良かったよ。僕が実は理由があって殺してました〜なんて、つまらない話にも程があるじゃない。この戦いに理由なんて要らないよ。僕は強いし、そして僕は戦いが好きだから、だから僕はこのギリギリを楽しむんだよ」
「三上、お前はもう話すなよ・・・鬱陶しい、イライラするんだよその喋り方・・・お前の事で分かった事が一つだけ出来た。お前、ぶっ壊れたな・・・命の意味が分からなくなるくらい、壊れちまったんだ。
命の重さを忘れた奴が生きてちゃいけねーだろ、んでやたら力だけ持っちまってる。お前は生きてちゃいけないって事だけはとことん分かった!!」
「あははっ!!良い殺気!!さぁ、殺してみてよ!!良いんだよ!?僕なら殺しちゃっても!!僕が許すからさ!!」
三上はこれまでにない程の満面の笑みだ。
「サクラ!!私もう我慢の限界!!一緒にぶっ潰すわよ!!」
エルメスが薙刀を構えて俺の隣に立った。
「わたくしも、堪忍袋の緒が切れました!!」
零羅も炎神を付けて構える。
「やはり、お主を見ると食欲失せるでござるな!!美味しく食べられなかった恨み!!食べ物の恨みぃっ!!」
麗沢もフライパンを掲げた。
「私も戦うわ。ここで一気にかたをつけましょ?私は回復専門だけど鍛えてはいるのよ。私の魔法を戦闘に応用させるわ・・・そして全員で戦えば、いくら彼でも勝てないわ」
いつもは回復のシィズさんも今回ばかりは攻撃に移るらしい。シィズさんは普通に接近戦も得意だ。
「レイ、あなたにはもう誰も殺させない・・・ここで全部、終わらせるから」
そしてグレイシアは氷の剣を作り出し、三上へ向けた。
「良いね、良いね・・・その意気だよ。あの時と比べたら随分と良くなった・・・だから、行こう・・・」
ぞくっ・・・この殺気!!やっぱりヤバい・・・三上は剣を自身の眼前に持って来て刀身を額にくっつける。
「未覚醒の者たちよ・・・」
俺は銃を握り締めた。
「勇敢なる者たちよ・・・」
零羅は炎神にエネルギーを込める。
「平和を願いし者たちよ・・・」
麗沢はフライパンを燃やす。
「その力・・・」
そしてみんな一気に攻撃できる体勢へと移行した。
「確かめさせてもらおう・・・」
三上は剣を右脇に構えた。来るっ!!
「せぃやっ!!」
三上はその場で剣を振る、これは炎による斬撃飛ばしか?こいつ、いきなり遠距離攻撃かよ!!だったら!!
「逆に飛び込んでやる!!」
俺は体勢を立て直し、今度は剣を取り出して一気に三上の懐に入った。
「良い手だね・・・けど、本当に信じて良いの?」
「っ!!!」
「サクラッ!!!」
俺の攻撃は当たらなかった。逆に三上に少し切られた・・・真っ二つにされなかったのはエルメスが何とか俺を後ろに引っ張ったからだ。
「ごめんエルメス・・・」
「仕方ないわ、私も良い手だと思ったんだけどね・・・援護しようと思ったら急に動きが止まるもの。どうせミカミがなんか言ったんでしょ?」
よく分かってるなエルメスは・・・今、信じて良いのか?と聞かれた。そしてシャルロットの手紙をふと思い出したんだ。
『この世界では、誰も信用してはいけない』この言葉の意味をふと考えてしまったんだ。そしてそのまま突っ込んで良いのか?って考えたら、動きが止まった。
「話してる余裕があるなんて凄いね!!」
三上は剣に炎を纏いこっちに来る。
「ヒョオオッ!!」
「ん、次は君だね麗沢君」
麗沢が横から転がってくるように三上に突進してきた。けど、軽く三上はいなす。
「いや!!今度は私だ!!」
その隙を見つけてエルメスは薙刀を振るう。三上は見事に防いだ・・・
「っ!?」
「あら〜?何驚いてんの〜?私を誰だと思ってんだ!!このバカタレがっ!!」
エルメスは自分の魔法で身体能力をマックスに上げて超威力の攻撃になってる。しかも更に上乗せでシィズさんによる回復もやって、自分のダメージを顧みない威力で三上に放った。
三上はその威力のせいで受け流せずそのまま受け止めざるを得なくなった。
『バキッ!!』
地面にヒビが入った。
「くっ!!」
「っ!!両手!!今だ!!レイラ!!」
『ギャァィィィィィィィィッッ!!!!』
三上は両手で剣を握った。その瞬間を見計らい、零羅はその隙に攻撃を叩き込む。
「あなたの弱点は聞きました!!粉々なら一撃で終わりますっ!!」
「あはは!凄いね!!さぁ打って来てよ!」
『バギャャァァァンッッ!!!』
耳痛っ!!今、一瞬で三上の野郎エルメスを振り解いて零羅に剣を合わせやがった!!
「けど、危ない危ない。道路が壊れたら直すのが大変なんだ」
三上は零羅のあの攻撃も受け流していた。
「もう既に地面にヒビ入ってますよ?」
「これは後で直すよ」
零羅の一撃もダメなのか・・・って、あれ?エルメスどこ行った?
「ぃぃぃいやぁぁぁぁぁっ!!!!!」
叫び声!?どこからっ!? って!!
「上かぁっ!!」
『ゴッチーーーンッッ!!!』
「んぎゃっ!!」
「わぎゃっ!!」
またか、こんな時にこれかよ・・・エルメスの頭が俺の頭にゴッチンとクリーンヒットした。
「おぉ!お見事!!」
三上の野郎、ずっとぼけた顔して拍手すんな。こんな時にギャグかましてどうすんだ。
『お前!!わざとだろ!!』
俺とエルメスはハモって三上に文句を言った。
「わざとじゃないよ。言うなら運命のイタズラだね。エルメスさんどう言う訳か、よく桜蘭君とぶつかるもんね。君たちはもしかしたらそう言う運命なのかもね」
「な、ななな何言ってんだ!!このっ!!!」
「あ!エルメス!!よせっ!!」
エルメスは一人三上に突撃してしまった。完全に乗せられてるな・・・あいつの口車。全く、いやらしいのを武器にしやがる。
「グレイシアさん!!援護!!」
「分かってるから!!」
三上に迫るエルメスの背後にグレイシアさんは回り込んだ。
「近接戦闘の二対一・・・そして魔法による遠距離か・・・」
「うおりゃぁっ!!」
エルメスの薙刀は振り下ろされた。後ろからはグレイシアさんが迫る。そしてその隙間に俺は電撃を撃ち込んだ。これなら流石に避けられんぞ?
「うーん、困ったなぁ・・・下手に反撃すると殺しちゃうな」
ぐしゃっ!!
「うそっ!?」
三上はエルメスの薙刀だけ手で掴んで受け止め、グレイシアをもう片方の剣の炎で攻撃を相殺し、俺の銃撃はコンクリートの壁を作り出して防いでいた。
「エルメスさん、僕を殺したいのならもう少し踏み込んで良いよ。まぁ、確実に殺す勢いだったのは認めるよ。だから君はまだ殺さないでおこうか」
「っ!!」
エルメスは三上から距離を取った。
「そしてグレイシア、君もその攻撃は良いよ。父親以上の精度だ。けど、周りを巻き込む事を心配し過ぎてる。魔法を纏った剣で攻撃するなら、攻撃は一閃に集中させる!!」
三上は炎の斬撃でグレイシアさんを押し出した。
「んっ!」
「細かく魔法コントロールすれば、僕の魔法でもグレイシアを上回れるんだよ」
『ズガガガガッ!!!』
俺はその隙に電撃を連射した。
「タイミングは凄い良いよ、けど、やはり君は力不足だね」
「だろうな!!だから今だ!!」
「さっきはアドバイスどーもな!!ミカミ!!なら!!この一撃ならどうだ!?」
エルメスはもう一度三上に切り掛かった。大丈夫だ、三上が何と言おうと俺はもうブレないぞ。俺はエルメスを、グレイシアさんを、みんなを信じる。
三上はこの間髪入れない攻撃に対象出来ていない。不動のままだ。いや、待て・・・あいつ、いつの間に納刀した?あれは・・・確かっ!!
「エルメス!!待てっ!!」
「えっ!?なにっ!?」
「どっちにしても、もう遅いよ」
パチン・・・
まただ、俺が目にしたのは剣を鞘に納める三上。そしてそのまま倒れるエルメス。俺は急いでエルメスを拾い上げた。
「大丈夫、殺してないよ。けど、しばらくは目を覚さないだろうね」
これ、脳震盪起こしてるのか?回復の魔法でも気を失ってるんじゃ良くなっても目は覚めないか。
「さて、まずは一人・・・結構疲れるね、いっぺんに相手するのって」
「お前はそれで良いつったんだろ?」
「うん、言ったよ。だから今はとても楽しいんだ。けど、このままじゃ君たち勇者の力を確かめる事が難しいね・・・どうしよっかなぁ」
三上は顎に手を置いて考えてる。
「どうしたもこうしたも、俺たちはみんなで戦ってる。お前の言いなりにはならないッスよ!」
エルメスが気絶してるとは言え、俺たちはまだ5人いる。このまま5対1で戦うさ。
「決めた・・・なら、こうしようか。グレイシア!!」
いつのまにかまた三上の背後に回り込んでいたグレイシアさんと三上がぶつかりあった。強烈な冷気と熱気が俺を襲ってくる。
「っっ!!!」
「あはは!!」
2人は斬り合い、そしてチャンスが生まれた。このタイミングだ。グレイシアさんはこれを狙ってた。俺たちが三上を囲めるこのタイミング。
「今だからっ!!」
俺たちは一斉に三上へ攻撃した。
「うん、このタイミングだね」
何だ?この感じ・・・またあいつの掌って感じがする。けど、これ以上何の手がある?よく見ろ・・・あいつの動きは・・・いや、既に完了しているのだとしたら?
あいつは何故動かない。あの場所に意味は・・・あそこは、ヒビ割れた地面?まさかっ!!
「ダメだっ!!これ罠だっ!!」
次の瞬間、三上は剣を地面に突き立てた。そして、橋が一気に崩落した。
俺たちは急いで回避したけどこれは・・・
「分断成功かな?」
俺と麗沢、零羅。そして三上、その4人と他のみんなが分断されてしまった。
「さて、ウォーミングアップは済んだかな?そろそろ本番と行こうか」




