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Re: 平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ! 第二章  作者: 冠 三湯切
第二章 第三幕 The Turning point (ゲーム後半戦)
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リメイク第二章 昨日の敵は今日の友

 「・・・グレイシア ダスト?  だと?いや、そんな奴は存在しない。ここにいるのは!!」


 「もう、喋るなよ・・・青薔薇」


 俺は腹を貫かれた状態だけど、その痛みよりもこの男に語りかける事を優先した。


 「俺の傷は致命傷にはなってないけど、お前のはかなり深いだろ・・・お前の負けだ。だから、お願いだからもうやめてくれ。お前はもう闘わなくて良いだろ、お前はグレイシアさんの父親、それなら父親がすべき事は手を血に染めるのはどう考えてもおかしいッスよね」


 「何を知ったような事を!!」


 「知るわけねーだろ馬鹿野郎、お前の事なんか俺には何にもわかんねーよ。けど、今この氷の剣越しに伝わってくるこのグレイシアさんの手の震え方。普段はクールで天然な人だけど、とても優しくて愛情深い。だからあんたに剣を向ける事はすごく辛かったんだって分かるんだ。青薔薇、今はどう考えてもお前がグレイシアさんを苦しめてるって事ぐらいは、俺にも分かるッスよ!!」


 俺は青薔薇を睨んだ、グレイシアさんにこんな覚悟を持たせた事。ただでさえ愛した人を殺す為に旅してるのに、お前は何なんだ?お前は、グレイシアさんの唯一の拠り所にならなきゃいけない存在だろ。


 「違う・・・違う違う違う!!全ての邪悪は貴様らだ!!貴様らが俺から全てを奪った!!だから俺は貴様らの全てを奪う!!異世界の存在、その歴史全てを俺は殺す!!んぐぅうぉぉおおおおっ!!」


 青薔薇は刺さった腹部の剣を無理やり引き抜いて距離を取った。けど、血がドバドバと溢れている。


 グレイシアさんもその直後ち俺から即座に剣を引き抜いた。そしてよろめいた俺を支えてくれた。


 「大丈夫?」


 「後10秒くらいで傷は塞げそうッス・・・それよりも、グレイシアさんこそ大丈夫ッスか?」


 「・・・うん」


 こんな時に無理に笑顔を見せなくて良いよ、ひっどい顔になってるからな。


 「何故だ・・・何故だレイチェル!!何故お前はそんな奴らと一緒に戦う!?」


 「理由は多分あなたと変わらないから。私は私の取り戻したい人の為に戦う。けど、あなたはそれを得る為に復讐に走った。けど私は平和を願って戦う。それがあなたと私の違いだから・・・」


 「全ては平和の為に・・・か?使う言葉も女王らしいな『氷の女王』だったか?気に入らないな・・・その名前は!!」


 「私もその名前は嫌いだから。けどレイチェルって名前もそんなに好きじゃない。その名前にはあなたの意志がない、そして母の意志もないから私は嫌い。だから私は誰が何と言おうとレイが私にくれた名前、グレイシア ダストに誇りを持つ。たとえこの名前の中にかつて私を蔑んだ、私が最も嫌いな『ダスト』の名があるのだとしても、この名前にレイから私への思いが宿ってるのなら、私はこの名を見せびらかして生きる。青薔薇、レイチェルなんて子はもういない。私の名はグレイシア ダストだから!」


 グレイシアさんは少し語気を強めて言い放った。


 「レイチェルはもういない・・・くくっ、つまらない。つまらないね!!俺の中にはお前しかいないんだ!!」


 青薔薇は立ち上がるが、力が入らずガードレールにもたれかかった。


 「っ・・・俺は、取り戻すんだ・・・全てを終わらせれば・・・俺は」


 「・・・ちっ」


 これは・・・


 「そこまでッスよ、グレイシアさん。これ以上やる必要なんてないッス・・・」


 グレイシアさんはよく怒ると舌打ちする。そして今、相当きつかったんだろうな。この青薔薇の醜さを観て、止めを刺そうとしてた。


 「なぁ、青薔薇・・・聞かせてくれ、ずっと気になってたんだ。お前はなんで実の娘に自分の名を名乗らないんだ?」


 「っ!?」


 こいつ、やっぱ気づいて無かった・・・こいつはグレイシアさんに肩書きを名乗っただけだ、一度も自分の名前を呼んでいない。


 「青薔薇、お前はグレイシアさんの父親なんかじゃないッス。お前は既に死んでるんだよ。お前は青薔薇に囚われた哀れな亡霊だ。だからグレイシアさん、そんなに気負わなくて良いんスよ。この男は、あなたの父でも何でもない。俺たちが相手したのはただの亡霊ッス」


 「貴様っ!!ぐっ!・・・」


 「もうやめろって、それ以上動いたらマジで死ぬッスよ?」


 「ふん、亡霊なんだろ?亡霊が死ぬなどあり得るか?だが、今は見逃してやる・・・覚えておけ、俺は必ずお前たちを殺しに舞い戻る。次こそ、異世界の痕跡を全て消し去ってやる・・・」


 「ちょ!青薔薇っ!?」

 「んっ!!!!」


 青薔薇は俺の想像もしなかった行動に出た。このガードレールを乗り越え、崖の下へ落ちた。グレイシアさんは走ったけど青薔薇はその手を払いのけ遥か下へと落ちて行った。


 



 「取れなかった・・・」


 グレイシアさんは自分の手を見つめていた。


 「大丈夫ッスよ、次会ったら今度こそ懲らしめて頭冷やさせてやろうッスよ」


 「けど、落ちた・・・から」


 「グレイシア殿、心配ないでござるよ。転落と言うのは生存フラグそのものでござる。そして大概記憶喪失パターンが典型でござるかな?」


 「そう・・・ありがとうレイサワ」


 麗沢がこの場を和ませてくれた。けど、何だろ・・・あいつはもう現れる事はない。俺の中の何かがそう言ってる気がする。


 「もし来なかったら俺がぶっ飛ばすから!!」


 俺は空元気に言って見せたけど、グレイシアさんは優しく笑うだけだ。






 「ミカイルさーん、何とか終わったッスー!!」


 「ん?一、二、三・・・まさか、青薔薇相手に全員生き残ったの!?じ、じゃぁ青薔薇は!?」


 ミカイルさんは俺たちの数を数えてめっちゃ驚いていた。


 「ん〜・・・勝つには勝ったッスけど、逃げられたって感じッスかね。けど、しばらくは来る事ないと思うッスよ?大分大怪我してたッスから」


 「ほっ・・・って、青薔薇に大怪我負わせた!?ひえーっ!!凄いですね!」


 ミカイルさん、テンションおかしくなってるなぁ・・・


 「って、あ、そんな感想を言ってる余裕はあまり無さそうです。この間のパーキングエリアの件と今回でかなり時間がかかってますよね。ここは急ぎケンソウ岳に向かいましょう」


 「あ、そうッスね。結構時間かかっちゃったもんな。あれ、シィズさん?ゲーム終了の日って何日でしたっけ?」


 俺はシィズさんに聞いてみた。カレンダーを持ち歩いてるのはシィズさんだけだからな。


 「えっと、今日が二十二日の昼過ぎだから・・・後、五日ね・・・あ、五日?」


 「い、5日?ッスか?」

 「うん?五日?」

 「え、5日?ですか?」

 「お?5日?」


 後・・・ゲーム終了まで、五日・・・


 「シィズさん」


 「なぁに?」


 「間に合うッスか?」


 「うーん・・・間に合うっちゃぁ、間に合うわね。貫通大橋超えてその先のコールド地区方面の電車と、コールド地区から高速鉄道経由で中央ならね・・・けど」


 「それって俺たちがなんの障害も無くリーダーを倒してかつ、まだ分からないリーダーがルート上にいてくれたらの話ッスよね」


 「そう・・・ね」


 大丈夫だ、三上の奴の目的は俺たちの覚醒にあるっぽいし、それを踏まえてのリーダーの配置になってる筈。これはあえてギリギリを狙ってると思う事にする!




 そしてミカイルさんは頑張って運転してくれたおかげで日が暮れる前にリーダーのいる村へ辿り着いた。


 「そう言えば、リーダーは良いッスけど、結局エンリコってどんな奴なんスか?」


 「さぁ、私は知らないわよ?確かエンリコ アザミだったわよね。アザミの花を苗字にした奴なんていたかしら?」


 エルメスが顎に手を置いて考えてる。


 「・・・あのさ、前々から思ってたんスけど、ここの世界の魔法族以外の人ってやたら花の名前多くないッスか?なんで?」


 青薔薇も花だし、レッドローズは逆に赤い薔薇だよな?他にもブルーベルもいたし、クソ暑苦しいアンリエッタはヴェロニカ、ランディのブーゲンベリアって、ブーゲンビリアの花の事だろうし。


 「あれ、言ってなかった?昔ここで国民全員の苗字の制定をやる時に苗字登録第一号にスチュワートって人が、ヘリオトロープの花を苗字にするって言ったのよ。それでその影響からか第二号、第三号もみんな花の名前を苗字にしていったのよ」


 「へぇ〜・・・」


 俺たちは車から降りた。そう言えばランディは居るのかな・・・


 「それにしてものどかな村ね〜」


 「ッスね、それよりエンリコってのは何処に居るんだ?」


 周りを見渡しても見えてくる景色は羊、山羊、雪山。あとちょくちょく作業してる人と、ログハウスの明かり。


 「これこそマジでランディんとこ行って聞いた方が早いか?」


 俺がそんな事を言った直後だ。


 「おい、お前今・・・ランディつったか?」


 「はい?って、んあっ!?ぎゃぁぁぉっ!!!」


 急に目の前に巨大な何かが振り下ろされた。これ、鎌か?大鎌!?


 「教えろ・・・兄ぃ(あにぃ)を何処にやった?」


 「は、はい?兄?」


 「とぼけんな!!ランディ兄ぃを何処にやったかって聞いてんだよっ!!」


 すんごい剣幕で怒ってるこの子は12〜3歳くらいの少年だ。


 「ら、ランディがどうしたって!?あいつ確かこの間実家に帰るって!!てか、君だれッスか!?」


 「俺の名はエンリコ アザミ!!ランディ兄ぃ、第一の弟子だ!!ついでにここのリーダーやってる!!」


 ついでの方がメインじゃないの?


 「俺、坂上 桜蘭!!とりあえず落ち着いてくれッスよ!!」


 とりあえず何でこんなに怒ってるのか話を聞かないと分からない。

 

 「うっせー!!てめーが殺したんだろ!!絶対そうだ!!」


 殺した!?何でそんな事になってんの!?


 「敵討ちだ!!覚悟しやがれ!!」


 これ、埒が明かないな・・・やるしかない!!


 俺は剣を構えた、エンリコは自分の身長より大きな大鎌を軽々しく回す。


 「死に晒せぇぇぇっ!!」

 「おりゃぁぁっ!!」


 んっ!?こいつ!!青薔薇とか睡蓮と違ってただのヤケクソな感じで戦ってるのに!!何だよこの動き!?捉えられない!!


 エンリコは鎌を振る遠心力を利用して飛び跳ねながら、縦横無尽に鎌を振ってくる。


 「へんっ!!どんなもんだ!!俺の動きになんてついてこれねーだろ!!あっかんべー!!」


 「このっ!!」


 「ふんっ!お前の武器、重たいんだろー!?そんなヨレヨレな振り回し方しか出来ないテメーに!俺が捉えられるかよっ!!重たい武器を扱うってのはな!!振った時の遠心力、そしてこの大地の重力を味方にするんだよバーカっ!!」


 ムカつくけど、一理あるな!!遠心力と重力を味方に・・・やってみる価値はあるなっ!!


 「さっさとくたばれ!!このざーこっ!!」

 「やられるのは!!あんたのほう!!」


 『あれ?』


 俺とエンリコは同時に情けないずっとぼけた声が出た。俺の剣、何処行った?そしてランディの大鎌も・・・


 「やれやれ、いきなり鎌を持って家を飛び出したかと思えば・・・全く。エンリコ、まずは拳骨だ」


 「んげっ!!!!いったぁぁ・・・・」


 その人はエンリコに軽く拳骨を喰らわせた。けど、あの痛がりよう・・・ピンポイントでめちゃくちゃ痛いツボみたいなとこに入れたな。


 「すみませんね、勇者様方・・・私の孫が粗相を、どうぞ。こちらはお返し致します」


 「あ、ど、どうも・・・」


 俺は剣を返してもらった。この人だ、この人が俺とエンリコの間にいきなり入って武器を取り上げて攻撃をやめさせたんだ・・・


 見た目は杖をついた老人。そして物腰の柔らかそうな優しい顔、けど、その手にはさっきまでエンリコが持っていた大鎌をまるで体の一部のように回して、背中に背負った。


 「じ、じっちゃん!!だってさ!!こいつら兄ぃをさ!!それに!じっちゃんもこいつらに酷い目に遭ったんだろ!?じっちゃんは悪くないのにさっ!!」


 「そうだとしても、この者たちは敵ではないよエンリコよ。それに、私の事を思ってくれるのは嬉しいが、私はこれで良い。本来、刑務者に入っていなきゃいけないのは私の方だよ」


 「ぷぅ・・・」


 エンリコは頬を膨らませながら不貞腐れてる。


 「改めて、この度は孫が粗相をして申し訳ない。そしてようこそここまでおいでくださいました。私は、このエンリコの祖父。アンドリューでございます。そしてお久しぶりですね、グレイシア様」


 「うん、久しぶり」


 「うん?グレイシアさん、知り合いなの?」


 エンリコとは特に何も無かったからリーダーの事に関して何もわからなかったけど、成る程。おじいちゃんがグレイシアさんと知り合いね。


 「そう、昔私を殺そうとした人だから」

 「ぶふぉっ!?」


 そんな風に思ってたらグレイシアさんがとんでもない事を言い出すからむせこんだ。


 「は、なにっ!?殺そうとした!?」


 「面目ない話ですが、事実でございます。私は二十年前、彼女を殺そうとしていた。グレイシア様、あの日の謝罪はまだ済んでいませんでしたね」


 「アンドリュー、別に謝らなくて良いから。レイがいなかったら私は、あなたの予想通りの結末を招いていたと思う、あの日、私を殺そうとした事は間違ってない。だから謝らなくて良い」


 昔なんかあったって言ってたけど、それの話かね・・・にしても、自分を殺そうとした奴を許すって、グレイシアさん懐広いなぁ。


 「それはまたなんとも・・・グレイシア様、本当に強くなられましたね。だからこそ形だけだとしても言わせて欲しい、済まなかった・・・」


 アンドリューさんは深々と頭を下げた。後ろでエンリコが頬を膨らませながら腕を組んで指をトントンしてる。


 「で、おめーら本当に兄ぃの居場所しらねーの?」


 そして痺れを切らしたのか俺たちに聞いてきた。


 「ここのくる前のノウバク市ってとこで会ったッスよ?で、ランディは電車乗って行くって言ってた。んで、俺たちは睡蓮やら青薔薇と戦う羽目になってたから流石に着いてると思うんスけどね」


 「ふーん・・・けど昨日のここに来る列車にはいなかったぞ?」


 「だから変なんだよなぁ・・・まぁ、元気そうだったから大丈夫ッスよ。それに、あいつめちゃくちゃ強かったし、何か事情があって来れなくなっちゃっただけッスよ。例えば三上に急に召集されたとかさ」


 「へ、へぇ。兄ぃの実力分かってんじゃん、そうだよ。兄ぃは強いんだぜ!!あのミカミが腕を見込んでるくらいなんだもんな!!」


 なんでこの子が得意げなんだろ。


 「だとしたらエンリコ、早く装置を破壊しなさい」


 「えー、こいつら俺より弱いのにー?」


 この・・・やるか?俺、子供って好きな方だけどこう言うのは苦手なんだよね・・・ガキ、じゃアレだから、おガキ様って呼ぼうか?


 「弱く見えるのは万全ではないからだよ。特にサクラさん。この数日でかなり消耗なされてますね、日にちももう少ないですが、ここは一度ゆっくりと休息を摂るのが懸命と存じます、そして翌朝出発なされるのが一番だと。だからエンリコ、装置は破壊しなさい」


 「ちぇ、ならサクラおめーよ。俺が装置ぶん投げるからその銃みてーなやつで撃ち抜いてみな。ほれ!」


 『ズガンッ!!』


 俺は投げられた装置に電撃を放った、この程度なら普通に見れる。


 「ありがとうエンリコ」


 「えへへー」


 エンリコはアンドリューさんに頭を撫でられて嬉しそうだ。


 「これで、後四カ所となりますね。ここまで来たあなた方なら大丈夫と思いますが、あの男は我々の予測を常に上回る。お気をつけてください。全ては平和の為に・・・」


 俺たちは村の宿で今日はぐっすり寝た。

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